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新興国資産、来年は値上がりか-下期の好転が市場のコンセンサス

  • インフレ鈍化や成長加速、サプライチェーンの問題改善が追い風に
  • ゴールドマンなど、中国株高や東欧の現地通貨建て債券上昇見込む

新興国市場の資産は2022年に値上がりしそうだ。インフレ鈍化と成長加速が追い風になるとみられるが、そうなるには年後半まで待つ必要がある。

  来年の新興国市場の株式、債券、通貨の見通しについてブルームバーグに話したゴールドマン・サックス・グループ、モルガン・スタンレー、JPモルガン・チェースといった投資家の間では、そうした見方がコンセンサスだ。具体的には中国株のほか、ポーランド、チェコ、ハンガリーなどの現地通貨建て債券の上昇が見込まれている。

  このままいけば新興国資産の21年のパフォーマンスは年間ベースで、18年以来の低水準となる。消費者物価上昇と新型コロナウイルスワクチン接種の広がり、米金融引き締め観測を背景とするドル高が今年の話題の中心だったが、来年後半にはもっと良い材料が浮上するかもしれない。各国の政策担当者が利上げでインフレに断固として立ち向かう一方、米国の経済成長がピークに達すれば新興国経済が再び優位に立つ可能性がある。

  JPモルガン・アセット・マネジメントのアジア担当チーフ市場ストラテジスト、タイ・フイ氏(香港在勤)は「21年は先進国市場が経済成長で新興国市場をアウトパフォームしたが、そうした状況は逆転する必要がある」と指摘した。

EM stocks are cheapest in 15 years versus U.S. peers
 
 

  サプライチェーンの問題が落ち着きつつある兆しに加え、一部地域でのワクチン接種率上昇がより好ましい状況をもたらすとフイ氏は予想。さらに、米国の政策金利は総合インフレ率を下回る水準にとどまる可能性があり、利回り追求の動きが強まりそうだとの見方を示した。

  新興国株の指標、MSCI新興市場指数は今年に入り5%余り下落し、米国株との比較で01年以来の低水準近辺となっている。現地通貨建て債券はこのままいけば15年以来最悪のパフォーマンスとなる。

  新型コロナのパンデミック(世界的大流行)前、新興国の成長率は平均して先進国を2.5ポイント上回っていたが、この格差は今年1.3ポイントに縮小した。ただ、タカ派姿勢に転じた米連邦準備制度は22年に3回の利上げを示唆しており、米経済成長はピークに達する可能性がある。そうなれば、新興国の経済活動回復と相まって、先進国との成長格差が再び広がることもあり得る。

  少なくとも23の新興国・フロンティア諸国が今年、利上げを実施。これによりインフレが和らぎ、特に株式や現地通貨建て債券といった新興国資産の実質リターンが押し上げられる可能性がある。同時に、アジアからの輸出増加はサプライチェーンのボトルネック改善を示唆し、物価圧力の緩和にもつながり得る。さらに、中国の政策緩和スタンスも新興国市場に有利に働く公算が大きい。

  ピクテ・アセット・マネジメントのシニアマルチアセットストラテジスト、アルン・サイ氏は「新興国と先進国の成長格差は22年4-6月(第2四半期)に底を打ち、下期(7-12月)に再び拡大し始めると当社のエコノミストは予想している。新興国資産は相対的な成長モメンタムが加速するにつれてアウトパフォームすることが多く、米成長ペースの潜在成長率に沿った落ち着きも新興国にとってプラスとなる」と分析している。

原題:Traders See Emerging Markets Rising in 2022, But Not Until July(抜粋)

 

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