コンテンツにスキップする
Subscriber Only

KDDI、大規模通信障害で高橋社長減俸-お詫び返金1人200円

更新日時
  • 業績影響額は75億円に-約款返金対象271万人、お詫び返金3589万人
  • 高橋社長「顧客の信頼失った」、報酬2割を3カ月間返上へ

国内通信大手のKDDIは29日、2日に発生した携帯電話サービスの大規模通信障害による今期(2023年3月期)業績への影響額は約75億円を見込むと発表した。顧客への返金を予定している。高橋誠社長ら役員は報酬を自主返上する。

  発表資料によると、今回の通信障害で影響を受けた顧客数は音声で約2278万人、データで765万人以上。通信障害期間中に24時間以上連続して全ての通信サービスを利用できなかった約款に基づく返金対象者は271万人で、契約料金プランの基本使用料から2日分相当額を減額する。

  また、スマートフォンや携帯電話、ホームプラス電話を契約する3589万人の全ての顧客を対象にお詫び返金を実施するとし、請求額から200円(税抜き)を減額するという。

KDDI Corp. New President Makoto Takahashi News Conference and Interview
KDDIの高橋社長
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  29日午後に会見した高橋社長は今回の通信障害事故の責任を取り、役員が報酬を自主返上することを明らかにした。同社長は報酬の2割を3カ月間、他の役員は1割を最大で3カ月間返上する。

  高橋社長は「顧客の信頼は失ったと思っている」と述べ、新規ユーザーの獲得面で「影響が出ている」ことを明らかにした。また、顧客への返金額に関しては「経営努力でカバーしていくことで拠出したい」との考えを示した。

  KDDIの通信障害は2日未明に発生し、音声通話やデータ通信が利用しづらくなる状態が4日午後まで約61時間続き、正常化の最終確認までには丸3日半かかった。携帯電話サービスの不具合では2018年にソフトバンク、21年にNTTドコモで発生したが、影響を受けた利用者数と時間で今回のKDDIの事例はより深刻だ。

  資料によると、同社では今回発生した障害事故はメンテナンス作業時のルーターの経路誤設定、過剰な信号が流れ込む輻輳制御の考慮不足や復旧作業手順の未確立が大規模化、長期化につながったと総括。再発防止策は既に一部を実施し、顧客への情報提供手法の拡充など最終的な内容を9月末までに実施予定としている。

  KDDIは28日、総務省に発生状況や原因、再発防止策等を記載した報告書を提出した。今回の通信障害は警察などへの緊急通報ができなくなるなど、電気通信事業法上の「重大な事故」に当たり、詳細な報告を求められていた。同省は報告書の内容を精査し、必要な対応を検討する。

  個人だけでなく法人にも影響が及んだ。KDDIと提携関係にあるトヨタ自動車では、提供するコネクテッドカー(インターネットでつながる車)のサービスが一部利用できない状況が続いていた。スズキも緊急時にオペレーターにつながる電話サービスが使えない状況が継続した。

  KDDIが29日に公表した4ー6月期(第1四半期)決算は前年同期比4%増収、純利益は1%増益となった。高橋社長は、競合の楽天グループが月間1ギガバイトまで無料だったデータ使用料金を廃止したことで、「非常に多くの顧客に来ていただいたのは事実」と発言。通信障害後に勢いは落ちたが、「出ていくより入ってくる方がまだ多い」と述べた。

(最終段落に楽天モバイルからの移行に関する社長発言を追記します)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE