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「長袖パジャマ」「アイマスク」は必須品? 睡眠専門医が語る「熱帯夜の攻略法」

御茶ノ水呼吸ケアクリニック院長・村田朗先生インタビュー

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 なにかと寝苦しい熱帯夜。眠りは浅いし、疲れは取れないし、はてはお年寄りの「夜間熱中症」も増えているらしい。どうすればより充実した睡眠を手に入れることができるのか、「熱帯夜の攻略法」を御茶ノ水呼吸ケアクリニック院長の村田朗先生に伺ってきました。

 

質の良い眠りのキーワードは「避暑地」

―― 熱帯夜に質の良い睡眠をとる「コツ」を教えてください。

村田 「熱帯夜の睡眠」について考えるときは、避暑地に遊びにいくときのことを想像してみてください。避暑地に行くと、「ああ、来てよかったな。ぐっすり寝れた」 と思うでしょう。避暑地って、夜は少し肌寒い。それに、大体山の奥にあるから、日の出が遅いでしょう。そういった環境を整えればいいんです。

 人間は、寝るときに「深部体温」という身体の内部の体温を下げて臓器を休めます。ところが、熱帯夜になにも対策をせず寝てしまうと、身体が温められてしまって深部体温が下がりません。内臓も休まらない上、暑さに睡眠を妨げられて眠りが浅くなってしまいます。

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 重要なのは、やはりエアコンをタイマーで切るのではなく、かけっぱなしにして室温を下げて寝ること。「エアコンは身体が冷える」と苦手意識を持っている方も多いですが、そういった方はよくよくお話を聞いてみると、薄着で寝ていることが多い。寝る際に皮膚を露出することは、皮膚の表面温度ばかりが下がるのでおすすめしません。

 生地は薄手でもいいので、肌を露出しないものが理想的です。避暑地のホテルに用意されているパジャマだって長袖・長ズボンでしょう?

エアコンの設定温度は「熟睡感」で決める

―― 理想的なエアコンの設定温度はあるのでしょうか?

村田 28度がちょうどいい、なんて言われていた時期もありましたが、「ちょうどいい」と感じる温度には個人差があります。設定温度は「熟睡感があるかどうか」で決めてみてください。起きたときに「汗をかいているな」「疲れが取れないな」という場合は、1度ずつ設定温度を下げてみるとよいでしょう。

睡眠を妨げる意外な要因は「明るさ」

―― 温度の他に、意識すべきことはありますか?

村田 部屋の「明るさ」です。

 人間の身体は、朝、目から光が入ることで覚醒し、体内時計もリセットされます。だから、寝ている間に瞼を通して目に光が入ってしまうと、脳が徐々に覚醒してしまうのです。

 夏は日の出が早いので、特に東向きや南向きに窓がある部屋は早朝から光が入りますよね。そうすると、たとえば朝の7時に起きたつもりでも、3時過ぎくらいから瞼を通して光が入ってきて、だんだん脳が起きてきてしまう。その結果、睡眠が浅くなってしまうのです。

 夏の間は、そうやって知らないうちに実質的な睡眠時間が短くなりがちです。朝から光が入る部屋は、夏の間は遮光カーテンなどを取り付け、起きてから陽の光を浴びるようにするのがちょうどいいでしょう。カーテンが難しい場合は、アイマスクでも良いです。