落合博満・元監督「あれが本物のエース」打たれても抑えても感情制御…すこしも表情ゆがめない『鉄仮面』涌井の原点
2023年6月1日 10時37分
◇渋谷真コラム・龍の背に乗って ◇31日 ソフトバンク1―7中日(ペイペイ)
ブライトの打球がフェンスを直撃した時でさえ、彼は笑ってはいなかった。痛打を浴びようとも、激辛の判定があろうとも、大ピンチを脱しようとも、少しも表情をゆがめない。それが涌井。その鉄仮面には歴史がある。きっかけは横浜高2年秋だったと聞いた。
「前も宏斗に『何であんなに淡々と投げられるんですか?』って聞かれましたが、点が入ると思うから疲れる。それこそ僕の若いときはダルビッシュや杉内さんと投げ合っていたんです。1点取られたら負けだった。だから入らなくても何とも思わない」
鉄仮面を認めていた人がいる。
「あれが本物のエースなんじゃないか」
落合元監督の言葉だ。打者として、監督として、相手投手の表情から情報を得ようとした。心が揺れていないか。苦しそうにしてはいないか。投げる球も一流だが、一切の情報を引き出せないのが涌井だった。鉄仮面こそが、エースの資質だと評価したのだ。
「そう言っていただいているのを人づてに聞いて、交流戦の時にごあいさつしたことがあるんです。悪く言えば冷めているように見えますが、良く言えば客観的に自分を見られているんだと思います」
「そう言っていただいているのを人づてに聞いて、交流戦の時にごあいさつしたことがあるんです。悪く言えば冷めているように見えますが、良く言えば客観的に自分を見られているんだと思います」
熱を前面に出すスタイルもあるだろうが、敵はその息遣いの乱れを知ろうとしているのだ。怒りや落胆が漏れている投手の攻略は難しくない。打たれても抑えても感情の波を制御する。それは投手として間違いなく強みである。自身は6敗、チームは30敗。それでも彼は表情を読み取らせることなく、淡々と投げた。通算156勝。ほんの一瞬だけ、鉄仮面を外していた。
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