ホンダN-BOXのドリンクホルダーは11個、謎の4つの■は?全スイッチと細かな装備をチェック【新車リアル試乗3-5 ホンダN-BOX ユーティリティ編】

■使う人の身になった工夫がそこかしこ…

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ユキさんと見ていきましょう

N-BOX試乗の第5回目は、車両室内外の詳細を見ていきます。これまでに紹介した項目を再び載せているものもありますが、まあ、よろしくお付き合いのほどを。

またまた海野ユキさんにご登場いただきます。

●運転席から

・インストルメントパネル

instrument panel
写真ではメーターが高い位置にあるので圧迫感があるように見えるが、運転姿勢ではまったくそのようなことはない

全体の造形よりはまずシフトレバー位置を最優先に決めてから次に空調、ナビ、ハザードなど、走行中に操作するものひとつひとつを左腕のリーチ内にピンポイントで定め、肉付けしていったといった造形です。ために空調やナビ画面が左にオフセット。左腕の軌跡上にあるとはいえ、これら操作時にシートバックから背中がやや離れ気味になるのは仕方ないでしょう。とはいえ、これも身長176cmの筆者がシートスライドを最後端位置に使っていたためで、一般的な体型なら問題はないと思われます。

・メーター

meter 1
横長で見やすいメーター。これで水温をランプではなく、水温計でみせてくれれば完璧だったのに!

メーターは「アウトホイールメーター」と呼ばれる、ハンドル上向こうにレイアウトしたもの。どうせ触れるものじゃなし、見るだけなら向こうに追いやってもいいじゃないかという考え方なのと、ハンドル前にあるメーターと比較して、フロント視界からメーターを見たときの焦点の合う時間を短くするというねらいがあります。

meter 2
エンジンOFF時の静かな雰囲気もなかなかだ。このメーター、気に入ったぞ!

そして何よりも、メーターを横長にしても、ハンドル前にある場合と違ってハンドル輪っかに遮られることがない点でこそアウトホイールレイアウトが活きるというものです。

・マルチインフォメーションディスプレイ

左端のマルチインフォメーションディスプレイは、Honda SENSINGの状況や各種報知を示しますが、ほかにもたくさんの表示項目があります。

標準で表示されるのは「航続可能距離/平均燃費/瞬間燃費」「平均車速/経過時間」「標識」「次回のオイルメンテナンス交換までの距離」「時計/日付」などですが、ホンダ純正「ギャザズナビ」を接続していれば、ルート案内中に進むべき方向を表す「交差点案内」、ナビが取得したお天気情報を表示する「ウェザーインフォメーション」があります。

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メーター左で最新お天気情報を知らせるようすは、見ていて実に楽しいものだった。これも気に入ったぞ!
meter 3 weather information 1
お天気情報

筆者がいちばん気に入ったのはこの「ウェザーインフォメーション表示」。今日と明日の天気と最高・最低気温、降水確率などが表示されます。太陽や雲、雨のマークがカラーで表示され、空港や駅、電車の乗降口上にある情報掲示板を見ているようで実に楽しいものでした。

その下で、外気温とともに区間距離計と積算距離計が同時に常時表示されているのもよし! 現行フィットは切り替えが必要でした。このふたつ、左右逆だったらもっとよかった。

・ステアリングホイール

steering wheel 1
3本スポークのステアリング。左右スポークには各種スイッチが備わるため、ホーンスイッチは中央だけになるので、ホーンを鳴らすのにグリップから手を離さなければならないのが最近の傾向

シリーズのターボ車すべてと、N-BOXカスタムの特別仕様車「L STYLE+BLACK」に本革巻きがつきます。

steering wheel 2-2 jimny 2
グリップを握ったままちょい手をずらすだけでホーンを鳴らすことができる。この違いは存外に大きいのだ
steering wheel 2 jimny 1 wp
筆者のジムニーの場合、パッド全体がスイッチになっている(赤色着色部)ので…

そろそろ再考の必要があると思うのは、ホーンボタンの押しにくさ。先進安全デバイスの標準化が進んでスポークにアダプティブクルーズコントロールなど、かなりの数のスイッチがつくハンドルが増えました。となると、ホーンボタンは中央付近にとどまらざるを得ません。本当はホーンスイッチとなるパッドがスポーク上にまでおよんでいるハンドルのほうが、グリップから手を離さずホーンボタンを押すことができるのです(フルフローティングタイプという)。スポークにスイッチがあろうとなかろうとホーンボタンが中央にとどまるハンドルはありましたが、むやみに鳴らしてはいけないものの、いざというとき、素早く鳴らすことで大事が避けられることがあるのも事実です。何とか両立できないものか…

・ワイパー/ウォッシャースイッチレバー

wiper switch lever
ワイパー/ウォッシャースイッチレバー

OFFから上に保持している間は高速作動。OFFから下に向かうにおよび、間欠、低速LO、高速HI。安いGとGスロープは固定間欠、他は間欠時間調整付きで、指輪みたいなリングの上下まわしで間欠時間を調整できます。時間調整付車の間欠作動は車速にも連動しており、車速が上がると停止時の場合よりも間隔が数秒短くなり、リングを最短にして車速が上昇すると間欠ではなくLO作動に。レバー手前引きでワイパー連動のウォッシャー液噴射。

先端の回転スイッチはリヤワイパースイッチで、向こうまわし1段で間欠、2段で連続作動します。両端はウォッシャー液噴射で、OFFから直接ウォッシャー作動させるとこれまたワイパーが連動。リバース連動も内蔵しており、フロントが間欠のときにシフトをRにするとリヤも間欠作動、フロントLO、HI時は連続作動するロジックが入っています。

washer tank
中身が目視できるウォッシャータンク。いいねえ

ウォッシャータンクは、タンク本体が見えるのがいい。いまのクルマはエンジンルームがつまっているせいかバンパー裏に隠しているのが普通で、液量が見るだけでわかるというあたり前のことができなくなっています。キャビン拡大に責められたN-BOXにこそよくぞタンクをルーム内に置いたと思うのですが、そのタンク容量は1.5Lと少なめ。筆者のように頻繁に使うひとは、補充も頻繁に行うことになります。

・方向指示レバー/ライトスイッチレバー

turn signal and light switch lever
方向指示レバー/ライトスイッチレバー

レバー上下でターンシグナル、その途中の上下ワンタッチで3回点滅のレーンチェンジャー。このワンタッチ点滅は、ヨーロッパ車では前々から用いられていましたが、ある時期から国産車にも広まりました。まちがってタッチしてしまうと勝手に点滅して他車に誤解を招いてしまうので(N-BOXは反対に操作すると停止するものの)筆者は嫌いなのですが、否定派はカスタマイズ機能で機能OFFも可能です。

レバー中立位置でロービーム、レバー向こう押しでハイビーム、手前引きでパッシング。

新オートライト規制対応版のライトスイッチは、定位置AUTOでエンジンをかけたとき、周囲の明暗によって点消灯決定、AUTO点消灯時の手前1段で車幅灯となり、手前2段で消灯しますが、自動でAUTOに戻るため、夜間であれば走り出すと自動でライトが点灯します。向こうまわしは固定でライト強制点灯…新オートライト義務化で使いにくくなりました。

・エンジンスタート/ストップスイッチ

engine start and stop switch
エンジンスタート/ストップスイッチ

乗っている間じゅう、設置位置が低いのが気にかかりましたが、それはともかく、ブレーキペダルを踏まずに押すたびにOFF→ACC(アクセサリー)→エンジン始動なしのON→またOFF…を繰り返します。

シフトPまたはNでのブレーキ踏みのひと押しでエンジン始動、始動中のシフトPのひと押しでエンジン停止のOFF。P以外で押すとエンジン停止と同時にACC(アクセサリー)に切り替わります。ほんとうは分割式にするか、いっそ小さめの「ACC」を横に別建てして、シフト位置にかかわらずOFFかACCかを選べるといいのですが。

万一のときの操作法についても述べておきましょう。走行中に緊急事態が起き、エンジンを停止したい場合は、このボタンを約2秒以上押すか連続3回押しでACCに落ちます。完全OFFにするには、シフトをPに入れ、ブレーキを踏まずにボタンを2回連続押しします。

・シフトレバー

shift lever
PRNDSの5ポジション式のCVTシフトレバー

全機種、PRNDSの5ポジション無段変速CVTで、ターボ車はハンドル左右スポーク向こうのパドルスイッチによる7速マニュアルモード付き。

shift switch right
プラス(+)のシフトスイッチ
shift switch left
マイナス(-)のシフトスイッチ(ボケててごめん)

左のマイナス(-)スイッチでシフトダウン、右のプラス(+)スイッチでシフトアップ。シフトDのときの操作で一時的にマニュアルモードに移行し、定速走行や加速状態になると解除、シフトSで完全なマニュアルモードとなり、スイッチ操作で任意の変速操作ができます。日常ではクルマ任せのDのままのほうがスムースに走らせることができ、威力を発揮するのは山間道下りでエンジンブレーキを効かせたいときくらいでしょう。

・シフトレバー右側のスイッチ群

switch group 1-2 shift lever side 1
電動パーキングブレーキスイッチをはじめ、これらスイッチはハンドルに隠れ、運転姿勢ではまったく見えない。
switch group 1 shift lever side 2
引いて制動、押して解除。

昨年2021年12月に電子制御化されたパーキングブレーキ、付随して機能追加されたオートマチックブレーキホールドのスイッチを、既存のECONスイッチ/イルミネーションコントロールスイッチとひとくくり。電動パーキングスイッチにも緊急ロジックが入っており、走行中にスイッチを引き続けるとその間はパーキングブレーキがかかるようになっています。くれぐれも試したりしないように。

それにしても、ハンドルに隠れてまったく見えないスイッチの集合体でもあります。レイアウト上致し方ないか…

・運転席左のスイッチ群

switch group 2 left side
運転席左のスイッチ群

左上には、バック時に障害物の存在を検知するパーキングセンサーシステムのスイッチと、その右にはVSA(ヴィークルスタビリティコントロール)のOFFスイッチを併設。他はダミースペース。何かのオプションのスイッチがつくのでしょう。下の方の奥にあり、操作しづらいように思いますが、ONにしっぱなしにしたほうがいいもの揃いなので、これでいいと思います。

・運転席右のスイッチ群

switch group 3 right side
運転席右のスイッチ群

上から順に、パワースライドドアのメーンと開閉のスイッチ、前述パワースイッチをはさんで路外逸脱抑制スイッチと衝突軽減ブレーキ(CMBS)のOFFスイッチを上下に、その右にヘッドライトのレベライザースイッチが並びます。特に路外逸脱とCMBSも触れないほうがいいので、押しにくい場所にあるのは正解だと思います。

・サンバイザー

屋根が高く、フロントガラスも上下に大きいだけに、上下寸がかなり大きいサンバイザーです。下げた裏には化粧ミラーが備わっています。

背の高いクルマだからこそ、収容時の見える面に全長・全幅・左右ドアミラー間距離・全高・ホイールベース・前後トレッド幅を記してくれるとありがたい。軽自動車なので全長・全幅で制約のある駐車場はないでしょうが、全高があるがために断られる可能性も。自車のサイズをふだんから把握できるよう、車両寸法が入れてあると便利だと思います。面積があるんだからなお印刷しやすいでしょ? 使えるものは使わなきゃあ。

・ルームミラー/後席シートベルト締め忘れ警告灯(リマインダー付)

room mirror 1
防眩機能のないルームミラー
room mirror 2 fasten rear belt warning
ルームミラー上部には、後席のシートベルト未装着を知らせるランプがある

軽自動車の過半数がそうなのですが、軽自動車にさえ普通車並みの電子安全デバイスが増えたというのに、後続車からのライト光の幻惑を抑える防眩機能はありません。

この試乗車のミラー上部には、一部機種を除いて設けられる、後席乗員のベルト未装着を知らせる警告灯がついていました。未装着時ばかりではなく、パワースイッチをONにしたときや、ON時のリヤスライドドア開閉時にも点灯します。

・ルームランプ兼マップランプ

room and map lamp 2
ルームランプとマップランプは兼用
room and map lamp 1
消灯時

ホンダはいつも、取扱説明書上では「室内灯」としぶい表現をするルームランプはマップランプと兼用。なんてことはない、左右個別に点くマップランプを同時点灯させてルームランプとするだけのものです。

スイッチポジションは、バックドアを含むどれかのドアの開閉に応じて点くDOORと、消灯のOFFのみ。マップランプとして使う場合はレンズそのものを押し込んでON/OFFに。DOORでは、運転席ドアの解錠時と、パワーモードをOFFにしたときも点灯し、このときドアを開けなければ約30秒後に減光~消灯します。いまのどのクルマにもあたりまえに内蔵されるタイマーロジックですな。

●ドア内張り

door trim 1 driver side
ドア内張り

N-BOXの室内の造りに軽自動車くさい安っぽさはないと書きましたが、唯一造りの安っぽさが認められたのはドアの内張り。シート着座時、右ひざが内張りに当たると簡単に歪みます。プラスチックが薄く、かつ裏側のリブが不足しているのではないかと推測していますが、ここだけが難点でした。惜しい!

ただし、ドア内張りに与えられたもの入れの工夫は他社には見られないものでした。その点はのちほど…

・ドアハンドル&ドアロックノブ

door trim 3 door handle and door lock
ドアハンドル&ドアロックノブ

内側からドアを開けるドアハンドルにロックノブを併設しています。うれしかったのは、いつも筆者が望んでいる、走り出すとバックドアを含む全ドアが施錠される自動ロックがついていたことでした。カタログでは「車速連動オートドアロック」とあり、約15km/h以上になるとロックされます。それでいて正面やサイドから、エアバッグないしサイドエアバッグが展開するほどの衝撃を受けたとき、あるいは後部に大きな衝撃を受けたとき、その瞬間…ではなく、安全のため、いくらか落ち着いた後の約10秒後にロック解除します。自動ロックについては次回第6回で詳しく述べていきます。

・パワーウインドウスイッチと電動ミラー調整スイッチ

door trim 4 power window switch
パワーウインドウスイッチと電動ミラー調整スイッチ

パワーウインドウスイッチの操作はごく平凡で、運転席のみワンタッチ機構&挟み込み防止機能付き。ワンタッチは全席にあると便利だし、挟み込み防止も運転者よりも子供の乗る助手席or後席にこそあるべきなのに、何で運転席だけなんだろう?

ちょっといいのは、運転席用ウインドウのエンジンOFF後の開閉可能タイマーが10分と長めなことで、これがなかなか便利でした。他メーカー車には45秒というけちな時間しか待ってくれないものが多く、かつて15分を誇っていた日産車もいまはなぜか45秒に…こういった小さな違いが乗り換えたユーザーにとって大きな違いになることをメーカーには認識してほしい点です。

電動ミラーはパワーモードがONのときのみ作動し、上級寄り機種は、キーリモコンやスマートキーの施錠/解錠操作でミラー格納や復帰するオートリトラミラー機能付きです。

●室内空間

・前席居住性

seat 1 with yuki
運転席着座時のようす

軽自動車であるぶん、普通車に比べて幅はほどほどですが、上下方向の余裕がそれを感じさせない空間を持っています。前後の空間もよく確保されており、よほどの大柄でもなければ不足を感じるひとはいないでしょう。

・後席居住性

seat 2 with yuki
後席着座時のようす

このボディ形状となるとどれもこれも居住感は似たりよったりで、N-BOXならではの特筆すべき点はありません。屋根が荷室上まで覆われていれば日光が後頭部を直撃することはなく、ボディサイドも立ち気味なので身体横の空間にも余裕があります。前後席ともサイドガラス下端が着座位置=顔の位置に対して低いので閉塞感も皆無です。

・ロールサンシェード

seat 2-2 sun shade 1
引き上げて使うが、ほんとうは上から下がる方式が望ましいと思う
seat 2-3 sun shade 2
ロールサンシェード

スライドドアの内張り上端内部には日よけが。つまみを引き上げてドア枠上辺ふたつのフックに引っ掛けると日差しをカットしてくれます。ただし途中位置での固定はできません。

太陽光は上から差すのだから、ほんとうはシェード本体をルーフサイドに内蔵、フックはセンターやサードピラー部に設置し、新幹線や旅客機と同様、上から下に下がり、途中で止まるようにもしてくれるといいのですが、アッパ側スライドレールやサイドエアバッグとの兼ね合いで難しいか?

ところでこのシェード、カタログでは「ロールサンシェード」、取扱説明書上では「スライドドアウィンドウサンシェード」と記載されています。両者内で名称を統一していないのは困った点です。

・前席シート

seat 3
前席シート
seat 3-2
前席シートアームレスト使用時

N-BOXで軽自動車らしくないと思ったひとつに、シートの立派さがあります。クッションの寸法や厚みはかつての軽自動車とは比べものにならない出来。かけ心地は上々で、硬くもやわらかくもないのですが、しっかり感は確保されています。

ベンチシートといっても昔のクラウンやセドリックのタクシーみたいな3人がけではなく、2人がけで、左右間がつながっているだけ。クッションの着座部分の形は左右それぞれの乗員が収まるよう成型されているし、背もたれの形状はセパレートシートの場合と同じ形をしています。

GとGスロープを除き、運転席シートに上下アジャストが、この2機種とEX、EXターボを除くクルマには立派なアームレストがついています。

・後席シート

seat 4
後席シート
seat 4-2
後席シートアームレスト使用時

立派な仕上がりなのは前席と同じ。スロープ仕様を除く全機種とも、5:5分割、リクライニング、スライド機構が備わります。

seat 5
別アングルより

Gとスロープ仕様を除き、細いながらも左右独立のアームレストまで…もう軽自動車の域を超えています。スライド量は190mm。

フル乗車の機会よりは後席に荷物を置くチャンスのほうが多いはずで、ならば前席から上半身をひねって後ろの荷をつかめるよう、スライドは190mmといわず、前席シートバックスレスレまで前進してほしいところです。つまり、後席乗員のためではなく、前席乗員のためのリヤシートスライド量増加をぜひ!

・チップアップ&ダイブダウン機構

リヤシートの荷室拡大機構で、この機構はセンタータンクレイアウトを起用するホンダ車にしかできないものです。

まずチップアップから。座面を引き上げ、足をたたんでおしまい。たったこれだけでなぜガッチリ固定できるのか、毎度見るたびに内部設計を見てみたいと思うほどの造りになっています。それでいて前後にスライドするということは、このガッチリ機構がシート内だけで完結しているわけで、これらを両立させた点は称えてしかるべきでしょう。いまのフィットにだってないぞ。

加えてダイブダウンさせるなら、背もたれを倒す。燃料タンクが前席下に移動し、リヤはがらんどうになるため、倒したリヤシートは通常のクルマより一層沈みます。これがダイブダウンたるゆえん。

上の写真はチップアップの続きになっていますが、直接背もたれを倒すことで一気に沈めることができます。これをバックドア側から行うとこのようになります。

・リアシートリマインダー

seat 20 rear seat reminder
リアシートリマインダー表示。最近増えてきている報知機能だ

後席の荷物の置き忘れ、もしくは後席乗員の乗車をドライバーに知らせるもの。

・後席ドアを開閉してからパワーモードをONにした。
・パワーモードONのときに後席ドアを開閉した。

このふたつのいずれかが行われた後にパワーモードをOFFにするとブザー吹鳴、マルチインフォメーションディスプレイに写真のような注意書きが表示されます。

何回か試してみましたが、後席の荷物や乗員の存在を何かしらのセンサーで捉えるのではなく、正確には、スライドドアの開閉履歴に対するパワーモードOFFのタイミングから「後ろに荷物や乗員を乗せっぱなし…かもよ?」ということを運転者に知らせるものでした。

くだらないことを思いつき、1回リヤドアを開閉した後、荷を取り出すことを想定してもう1回開閉してみましたが、やはりリマインド表示されました。開閉回数が奇数回か偶数回かによるのかという筆者の推理は見事に大ハズレ! 考えてみたら、荷物を載せた後にドアを閉め、その5分後に別の誰かが乗る、または荷物を載せ加えるということもあるわけで…

・前席乗降性

何だか開口部がタテに長いので細長く、狭く見えますが目の錯覚。背が高い=開口寸が高い、着座位置が高い、フロアサイドが掃き出し構造(サイドシルがなく、開口部底辺とフロアが地続きになっている構造のこと)であることから、どこにもひっかけることなく地面に足をつけることができます。

・後席乗降性

筆者実測では、フロア高さは前席に対して約15mmほど高いのですが、乗降性に影響はありません。ドアがスライドして後ろに向かうので、ヒンジドアの場合と違って開いたドアが足の動きを規制しません。ただ、大柄なひとには開口幅(車両前後方向寸)がもうちょい大きいほうがいいかもしれないのですが、これ以上広げるのは無理な相談。スライドドアを開けたときのドア後端部は、車両後端部より後ろにはみ出てはいけないという規則があるためです(見た目にはとてもそうは見えないのですが)。

・Hondaスマートキー

honda smart key wm
Hondaスマートキー。実に小さくてかわいい姿なのが気に入った。ポケットに入れてもかさばらないのだ。その代わり家に忘れても気づかない可能性が…気をつけよう

そのスライドドアは、Hondaスマートキーのリモコンで開けることもできます。リモコンのスイッチの構成は写真のとおり。本体が細長く、ポケットに入れても入れているのがわからないほど小さいのが気に入りました。みんなこうすればいいのに。

●空調/オーディオ

・フルオート・エアコンディショナー

full auto air conditioner control panel
フルオートエアコンの操作パネル
full auto air conditioner 2 rear heater duct
リヤヒーターダクト

第4回と思いっきり重複しますが、ここでもあらためて。

フルオート式のエアコンが全機種標準装備で、EX、EXターボ、そしてN-BOXカスタム全車にはプラズマクラスターが内蔵されます。乗っている期間は夏の炎天下の日もありましたが、にもかかわらずクーラーの効きは早く、筆者のような暑がりのひとも不満を抱くことはないと思います。

後席用の暖房吹出口(リヤヒーターダクト)も全機種標準ですが、これは運転席下のみ。助手席下にはありません。GとGスロープのFF以外の全機種標準となる、運転席・助手席用シートヒーターのスイッチもこのパネルに併設されています。

・オーディオ

navigation system
ナビゲーションシステム。写真はAMラジオ画面

…といっても、N-BOXはシリーズ全機種とも、オーディオもナビもディーラーオプション。オーディオ関係でつくものといえば、全機種標準でナビ装着用スペシャルパッケージがあるくらいのものです。その内容は、リヤカメラ、ハンドル左スポークのオーディオ/ハンズフリー電話/音声認識のスイッチ、デジタルテレビアンテナなど。スピーカーも含まれ、N-BOXは4スピーカー、N-BOXカスタムはその倍の8スピーカーとなります。試乗車についていたのは、ギャザズ8インチプレミアムインターナビ・VXU-227NBiという三菱電機製のものでした。

ナビも何度か使いましたが、目的地が車両左側に来る案内ロジックにしてほしいのが唯一の希望。今回の使用ケースではたまたまありませんでしたが、目的地の駐車場入口が対向車線側、中央分離帯が遮っている、右折進入禁止という地点に案内するナビが少なくありません。目的地をいったん過ぎた先でUターンを強いるナビもあります…。ホンダはナビを実用化した最初のメーカー。バックドア開閉限界線も入れてくれていることだし、車両左側到着ロジックをぜひとも採り入れてほしいものです。

●室内の収容スペース

・インパネトレイ

storage 1 instrument panel tray
インパネトレイ

助手席幅いっぱいのトレイ。内側で区分けされているのと、えぐりが深いので使いやすそうです。トレイにものを置いて走るのは危険だからやめるべきという評論家がいますが、大きなお世話で、万一のときはものが飛んでしまう危険性を認識した上で、使う・使わないをユーザー自身が個々に決めればいいことです。それに停止時に限って使うひとのことを思うと廃止は乱暴でしょう。筆者は使いません。安全のためではなく、右左折のたびに置いたものが右に左に音を立てて動くのがどうにも落ち着かないからです。

・グローブボックス

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グローブボックス。ごらんのとおり、容量はほどほど
storage 2-2 glove box 2
グローブボックス閉時

ふたがそのままボックスになっているのではなく、昔のクルマと同じく、ふたを開けた向こうに収容部があるタイプ。上下寸が小さく、車検証を入れたらもう受付終了というていどのサイズですが、逆にゴチャゴチャものを入れてしまうことがないという利点もあるかもしれません、筆者のように。

・センターロアボックス

storage 3 center lower box 1
センターロアボックス
storage 3-2 center lower box 2
センターロアボックス閉時

ベンチシート車に備わるもの入れ。スーパースライドシート車にもつけられると思うのですが、ベンチシート車に限られるのはなぜだろう? ちょいとしたものを入れておくもよし、ビニール袋をかぶせてごみ入れとして使うもよし。思いついたものを適当に入れて使いましょう。

・コンビニフック

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コンビニフック
storage 4-2 convenience hook 2
コンビニフック収容時

前項センターロアボックス左上にあります。未使用時には隠せる回転収容式です。コンビニエンスの袋や軽めのバッグを引っ掛けて使いますが、耐荷重は約3kgまで。重いものをかけると壊れるので要注意!

・運転席アッパーボックス

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運転席アッパーボックス閉時
storage 5 drivers seat upper box 1
運転席アッパーボックス。左壁に見えるのはドライブレコーダーのユニット

メーターの上方移動で空いたスペースは、ふた付きのもの入れとして有効活用。なかなか立派な容量を有していて、使い出がありそうです。計器盤の裏がわはエアコンユニットやら送風パイプやら配線やらでごちゃつくのが普通なのですが、よくスペースを稼ぎ出したなと感心したもの入れでした。

・ドライバーズロアーポケット

storage 6 drivers lower pocket
ドライバーズロアポケット

ハンドル下に隠れトレイが。ネズミの寝床ぐらいの面積しかないので、何を置けばいいのかわかりませんが、それこそPCを使うときのマウスか、四角形に折りたたんだハンカチを置くのにちょうどいいでしょう。ないよりはずっと便利だと思います。

・ドア内張り上のアッパーポケット/ミドルポケット/ドアポケット

storage 7-2 door trim passanger side
助手席ドアの内張り
storage 7 door trim driver side
右側はふたたび。左右を非対称にしている

さきほどドア内張り上にもの入れの工夫があると書きましたが、その詳細をここでお見せしましょう。

まずはドアハンドル上のアッパーポケット。細長なのでペンなどを入れておくのにいいでしょう。次にパワーウインドウ下のミドルポケットで、これも何を置くのにいいのかわかりませんでしたが、何かの一時置き場として使うのに便利です。このふたつ、ご丁寧に助手席側にもあり、パワーウインドウ下部分を左右非対称にしてまでも同じ機能を持たせてありました。その下のドアポケットは、普通車も舌を巻くくらいの容量があり、バインダーどころか薄めのバッグならいとも簡単に入りそうです。

・シートバックポケット/シートバックアッパーポケット

このふたつ、Gは助手席側のみ、他は全機種両席に標準と、ずいぶん贅沢なことになっています。アッパーポケットは大小の2つに区分けされており、片や携帯電話、他方スマートホンなど、使い分けができます。

・シートバックテーブル

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シートバックテーブル使用中のユキさん
storage 10-2 seat back table 2
シートバックテーブル

旅客機にあるようなテーブルが後席に。運転席側はGとスロープ仕様以外に標準、助手席用はGとスロープ仕様とスーパースライド仕様以外に標準でつきます。テーブル両脇にはドリンクホルダーがあり、両席にテーブルがあるクルマはこれだけで4つあることになるのですが…(次につづく)

・ドリンクホルダー

シート配列によって多少個数が異なりますが、試乗車にはこれだけのドリンク置き場が用意されています。

気に入ったのは収納式ドリンクホルダー(助手席側)で、「助手席側」とあっても運転席からも手が届き、使いやすいものでした。操作感がプラスチッキーで安っぽいのが難点ですが、それに反して「独自の耐荷重構造で500ml以上の紙パック飲料にも対応(特許出願中:2017年7月時点)」(資料より)というのが意外。というわけで、インパネ右端と助手席ドアミドル部、左右ドアポケット部、収納式ホルダー、後席左右に加えてさきのテーブル、2+2+1+2+4の合計11点となり、乗車定員の3倍近い…飲みすぎ注意!(数えまちがいしていないよなあ?)

●電源各種

・アクセサリーソケット/USB端子

DC12Vのアクセサリーソケットを全機種に(スロープ仕様全機種は荷室にも)、2.5Aの充電用USB(急速充電対応型)を2個、インパネトレイ部にGとGスロープを除く全機種に装備。左端のUSB端子は、iPodやiPhone、または他のUSB接続用で、ナビのない標準状態ではただのふたがはめ込まれます。

●その他

・サイドアンダーミラー

side under mirror 1
車両サイドにしゃがむユキさんは、サイドアンダーミラー(下)にはこのように映る。上が前回解説したサイドビューサポートミラー、通称ピタ駐ミラー
side under mirror 2
外から見たときのユキさん

SUV型やミニバン型でおなじみアンダーミラーを、第4回で述べたピタ駐ミラーと一体化。フェンダー上に生えている育ちすぎたしいたけ型や、左ドアミラー下のぶら下がり型のように、外観を変えることなくアンダーミラー機能を果たしています。ミラー自体が小さいゆえに何がどう映っているのか把握しにくいのはピタ駐ミラーと同じですが、車外にヘンなはみ出し物があるのを嫌うひとにはいいと思います。

助手席ドア外にしゃがんでいるユキさんは、車内のミラーでは写真のように映ります。

・後方視覚支援ミラー

rear view assist mirror 2
後ろを振り返って見たときの後方視界支援ミラー。

バックドア室内側上部にミラーが。曲率の高いミラーで車両後方の様子を写すものです。

rear view assist mirror 3 wm
つまりこういうこと
rear view assist mirror 2 wt
リヤワイパーと重なる地面部分が、車両後方約30cmの位置となる

ただついているだけかと思ったのですが工夫があり、ミラー内のリヤワイパーと障害物が重なれば、それは車両後端から30cmの位置にあることを示しています。みんながみんな、ナビやリヤカメラを備えるわけじゃなし、お金をかけずに車両後ろ30cmの様子を見せてやろうとするホンダの優しさがここにもありました。

・洗車のしやすさ

car washing
洗車のしやすいサイズ、デザインだ

第1回で述べた、車体前面にびっしり付着した虫を落とすべく、今回は洗車をしました。洗車が楽かそうでないかの違いはクルマによって結構あるもので、こと軽自動車なら、普通車との、洗車に費やす労力の違いは想像以上。N-BOXは軽自動車でサイズが小さいため、普通車に比べて割と早くボディ全体を撫で終わりました。ただし全高があるため、ルーフだけはちょいと手間。身長176cmの筆者でもスポンジを滑らせるには脚立が必須でした。

もうひとつ、洗車のしやすさを左右する要素に車両全体のデザインがあります。N-BOXは、ボディサイドにキャラクターラインはあってもただの段差にとどまっており、バンパーには装飾のためのよけいな溝もないので、全体をひと撫でするだけでおおかたきれいになりました(クルマが新しいこともありますが)。細かい溝部分の汚れは落としたつもりでも落ちていないもので、いつぞや流行った「マツイ棒」のようなものが要ることもありますが、N-BOXは全体がシンプルな面で構成されているため、デザイン面からも洗車は楽といえるものでした。

・バックドアガーニッシュ、謎の4つの四角

marking
この刻印の向こう側がバックドアのオープンスイッチとなる。2代目トゥデイで始まったホンダの親切だ

先回、先々回、カローラクロスやヴォクシー試乗の中で、車体下に足をかざして開く、ハンズフリーのバックドアやスライドドアを採り上げましたが、このとき足をかざす場所を教えてくれるマーキングがあるといいと書きました。

で、N-BOX。この4つの四角、なーんだ? これはバックドアガーニッシュに刻まれた、バックドアの電動ロック解除スイッチの位置を示すマーキングです。パッと見たときにどこに手をやるべきかがわかるようになっており、たったこれだけのことではありますが、このマークがあるのとないのとでは、使う側には大違いなのです。

・タイヤ角度モニター

ハンドルをまわしたときのタイヤの向きを、直進状態を含めた7段階で示します。車速が15km/h以下、ハンドル回転角が90度以上、シフトがDまたはS、あるいは1秒以上Rにしたときに表示されます。わかりやすい、そのまんまの名称が気に入りました。

というわけで、今回はここまで。

次回は、筆者の予想に反して閲覧数がなぜかいつも多い、車両カスタマイズ機能を中心にお伝えします。

ではまた。

(文・写真:山口尚志(身長176cm) モデル:海野ユキ(156cm))

【試乗車主要諸元】

■ホンダN-BOX L ターボ コーディネートスタイル 6BA-JF3型・2022(令和4)年型・2WD・CVT・プレミアムアイボリー・パールⅡ&ブラウン

●全長×全幅×全高:3395×1475×1790mm ●ホイールベース:2520mm ●トレッド 前/後:1305/1305mm ●最低地上高:145mm ●車両重量:920kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:4.5m ●タイヤサイズ:155/65R14 ●エンジン:S07B(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:658cc ●圧縮比:9.8 ●最高出力:64ps/6000rpm ●最大トルク:10.6kgm/2600rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射(ホンダPGM-FI) ●燃料タンク容量:27L(無鉛レギュラー) ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):20.2/17.4/21.7/20.7km/L ●JC08燃料消費率:25.6km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/車軸式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格190万9600円(消費税込み・除くディーラーオプション)