ヤマハ新型スポーツツアラー「トレーサー9 GT+」日本上陸。世界初のレーダー連携ブレーキや前車追従型ACCなど先進装備が満載

■価格は182万6000円、2023年10月6日(金)発売

ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)は、888cc・直列3気筒エンジンを搭載するスポーツツアラー「トレーサー9GT」をベースにした上級バージョン、「トレーサー9 GT+(TRACER9 GT+)」を国内販売することを発表しました。

ヤマハ・トレーサー9GT+(車体色はグレー)
ヤマハ・トレーサー9 GT+(車体色はグレー)

欧州などでは、2022年11月に発表されたのが新型トレーサー9 GT+。主な特徴は、ヤマハ車で初のミリ波レーダーを活用した前車追従型ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)や、「レーダー連携UBS(ユニファイドブレーキシステム)」など、先進の装備が満載なこと。

特に、バイクへの搭載は世界初というレーダー連携UBSは、前方の車などと衝突する危険がある場合にブレーキ力をアシストするという、かなり優れた先進システムで、従来にはない高い安全性を実現します。

ほかにも、レーダー連携UBSにも対応する電子制御サスペンション、スマホと繋ぐことでアプリを画面に表示できる新型7インチ高輝度TFTメーターなど、数々の高機能な装備を搭載する注目モデルです。

●ベースとなったトレーサー9 GTとは?

ヤマハのトレーサー9シリーズは、ネイキッドモデル「MT-09」をベースに開発された、2015年発売の「MT-09トレーサー」を元祖に持つ、ヤマハの大型スポーツツアラーです。

トレーサー9GT+のエンジン(写真は欧州仕様車)
トレーサー9 GT+のエンジン(写真は欧州仕様車)

2018年に、モデル名を「トレーサー9」と変更した際、その上級モデルとしてトレーサー9 GTを追加。2021年のモデルチェンジで現行モデルが登場しますが、その際、日本市場ではトレーサー9 GTのみを設定となっています。

ベースとなった現行モデルのトレーサー9GT
ベースとなった現行モデルのトレーサー9 GT

そんなトレーサー9 GTの主な特徴は、まず、最高出力88kW(120PS)/最大トルク93N・m(9.5kgf・m)を発揮するトルクフルな888cc・直列3気筒エンジンを、CFアルミダイキャスト製の軽量フレームに搭載すること。

また、軽量・高剛性のスピンフォージド・ホイール、電子制御サスペンションなど、数々の新技術を投入することで、高いスポーツ性能と実用機能を両立しています。

●ミリ波レーダーを活用した多機能ACC

先進装備については、従来のトレーサー9 GTも高い評価を受けていますが、それをベースに、さらにアップデートさせたのが新型のトレーサー9 GT+です。

フロントカウルにミリ波レーダーを装備(写真は欧州仕様車)
フロントカウルにミリ波レーダーを装備(写真は欧州仕様車)

注目は、まず、前車追従型ACCを採用していること。車ではおなじみのACCは、高速道路などで、アクセル操作なしに、設定速度での巡航ができ、先行車両に追いつくと一定の車間を保って追従走行を可能とする機構です。

新型のトレーサー9 GT+でも、フロントカウルに新しくミリ波レーダーを搭載することで、同様の機能を実現しています。

長距離ツーリングでの快適性や安全性を向上したトレーサー9GT+(写真は欧州仕様車)
長距離ツーリングでの快適性や安全性を向上したトレーサー9 GT+(写真は欧州仕様車)

主な機能は、まず、ミリ波レーダーにより、前車の有無や車間を検知。その情報を元に、状況に応じて、定速巡航はもちろん、前車との車間が近い場合は減速、離れた場合は設定速度まで加速するといった制御を自動的に実施します。

なお、ACCは約30km/h以上(使用するギアによって異なる)で走行中に作動。追従走行時の車間設定は4段階から選択が可能です。

また、コーナーなどで車体の旋回を検知すると、車速の上昇を抑えたり、先行車がいる場合は追従加速度も制限する「旋回アシスト機能」も採用。コーナリング時の安全性にも貢献します。

さらに、ライダーが追い越し車線側へウインカーを出し車両が追い越し状態にあると判断すると、通常の車速回復時よりもスムーズに加速する「追い越しアシスト機能」も装備。これらさまざまなACCの機能により、ツーリング時などでライダーの疲労軽減に貢献してくれます。

●ブレーキ力の自動アシストで衝突回避を手助け

そして、レーダー連携UBS。UBSとは、ヤマハ独自の前後連動ブレーキ機構で、後輪ブレーキを操作すると、前輪にもほどよく制動力を配分して、良好なブレーキフィーリングをもたらすことが特徴のシステムです。

ヤマハ・トレーサー9GT+(車体色はシルバー)
ヤマハ・トレーサー9 GT+(車体色はシルバー)

新型では、このUBSと前述のミリ波レーダーをマッチング。従来から搭載している高機能6軸「IMU」とミリ波レーダーが感知した情報をもとに、前走車との車間が近く衝突の恐れがあるにも関わらず、ライダーのブレーキ入力が不足している場合に、システムが作動します。

前後配分を調整しながら自動でブレーキ力をアシストすることで、衝突回避のための操作を手助けしてくれるといった効果を発揮します。

加えて、このシステムでは、電子制御サスペンションとも連動し、ブレーキング時に過度なピッチングを抑制するような制御も行います。

電子制御サスペンションもアップデート(写真は欧州仕様車)
電子制御サスペンションもアップデート(写真は欧州仕様車)

これは、たとえば、前ブレーキを強くかけるなどで、フロントフォークが沈みすぎて後輪が浮いてしまうなど、制動時におけるバイクの前後動を電子制御サスペンションが極力抑えてくれるというもの。この機能により、ブレーキング時の車体安定性を高め、ライダーに負担の少ないフィーリングを実現してくれるのです。

●ACCとも連動する新型クイックシフター

ヤマハが第3世代と呼ぶ新型のクイックシフターにも注目です。クラッチなどを操作しなくても、ペダル操作のみでシフトチェンジを可能とするのがクイックシフター。従来モデルでも、加速時のシフトアップと減速時のシフトダウン両方の操作をサポートしていました。

ヤマハ・トレーサー9GT+(車体色はグレー)
ヤマハ・トレーサー9 GT+(車体色はグレー)

一方、今回の新型では、加・減速時などの状況を問わず、シフトアップとダウンの両方ともサポート。追い越し時などシフトダウンにより加速力を強めたい時や、制動時などにエンブレ効果を弱めたい時などに効果を発揮します。

さらに、ACCとも連動しており、ACC作動中の車両の加減速(エンジン回転数変化)に即したシフト操作も可能です。加速中のシフトダウンや減速中のシフトアップもできるようになったことで、ライダーはACCを中断することなく、より快適な走行を体感することができます。

●スマホと連動できる新型メーター

ほかにも、直感的な操作や夜間での視認性に優れる、イルミネーションライト装備の新ハンドルスイッチも採用。また、トラクションコントロール・スライドコントロール・リフトコントロールの介入度、電子制御サスペンションの減衰力といった、各種制御の介入度や減衰力を、一括で設定できる統合モードも新装備しています。

トレーサー9GT+のメーター(写真は欧州仕様車)
トレーサー9 GT+のメーター(写真は欧州仕様車)

加えて、新型の大型7インチ高輝度TFTメーターは、スマホと連動できることもポイント。専用アプリ「MyRide-Link」をインストールし、Bluetoothで車両と接続すれば、着信やメール受信、現在地周辺の天気、音楽再生など、スマホの情報を車両のメーターに表示することができます。

なお、ヤマハとGARMIN社が共同開発した有料の2輪ナビアプリ「Garmin Motorize」をインストールすれば、メーター画面でナビ機能を使用することも可能。

ヤマハ・トレーサー9GT+(車体色はシルバー)
ヤマハ・トレーサー9 GT+(車体色はシルバー)

スマホを社外のホルダーなどにセットしてナビアプリを使う場合、車体へのセットに手間がかかりますし、雨天時にスマホが濡れるなどの危険性もあります。一方、この機能があれば、スマホはバッグやウェア内に入れておけますから、かなり便利で安心。ツーリング派にはとてもあり難い機能だといえますね。

このように、数々の先進機能を搭載することで、かなり賢い電脳バイクとなったのが、新型のトレーサー9 GT+。

カラーはシルバーとグレーの2タイプ。価格(税込)は、スタンダードのトレーサー9 GTの33万円アップとなる182万6000円で、2023年10月6日(金)の発売予定です。

(文:平塚 直樹

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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