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東京下町・酎ハイ街道のれんめぐり
〈愛知屋〉常連さんのひと声で始まった
シャリシャリ酎ハイ

宝酒造 × colocal
和酒を楽しもうプロジェクト
vol.003(Season4)

posted:2020.12.25   from:東京都墨田区  genre:食・グルメ

sponsored by 宝酒造

〈 この連載・企画は… 〉  「和酒を楽しもうプロジェクト」シーズン4。舞台は東京都墨田区の「酎ハイ街道」へ。実はここは、知る人ぞ知る酎ハイの名店が揃う地域なのです。今宵も酎ハイを愛する人々が集う酒場を訪ねます。

和酒を楽しもうプロジェクトとは?

宝酒造とcolocalが取り組んでいる、新提案です。和酒とは、日本の文化に根づいた、人と人をつなげるお酒。日本酒、焼酎だけではなく、大衆文化とつながりのある焼酎ハイボールや、調味料としての本みりんも含まれます。そんな、生活に根づいた和酒をもっと気軽に楽しもうというプロジェクトなのです。

タカラ「焼酎ハイボール」〈ドライ〉350ml

きょうの和酒

タカラ「焼酎ハイボール」
〈ドライ〉350ml

writer profile

Daiji Iwase

岩瀬大二

いわせ・だいじ●国内外1,000人以上のインタビューを通して行きついたのは、「すべての人生がロードムーヴィーでロックアルバム」。現在、「お酒の向こう側の物語」「酒のある場での心地よいドラマ作り」「世の中をプロレス視点でおもしろくすること」にさらに深く傾倒中。シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエ。「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本ワイン専門WEBマガジン『vinetree MAGAZINE』企画・執筆

credit

撮影:黒川ひろみ

酎ハイ街道。
その名がつけられているのは、
東武伊勢崎線鐘ヶ淵駅と京成線八広駅を結ぶ、鐘ヶ淵通りを中心に広がる一帯。
そこにはなぜか酎ハイの名店が揃い、酎ハイを愛する人々が集まってきます。
さあ、酎ハイの聖地へ、いざ。

●東京下町でいただく今宵の酎ハイは……
シャリシャリ感がうれしたのし。アツアツ小鍋との温度差も下町のんべえの心を掴む

今回紹介するのは〈愛知屋〉。
まさに鐘ヶ淵駅と八広の間、酎ハイ街道の中心あたり。
8年前の平成24年に新築・移転と建物は新しくとも、
一歩中に入ればやはり45年重ねてきた歴史が、
自然と店の風格、空気に表れてくるようです。

鐘ヶ淵通りから少し住宅街に入ったところ。落ち着いた佇まいですが、不思議にすぐにここだとわかる存在感。

鐘ヶ淵通りから少し住宅街に入ったところ。落ち着いた佇まいですが、不思議にすぐにここだとわかる存在感。

そして大将の石川鉄之さんと、先代女将の幸子さんの元気な「いらっしゃい」の声、
カウンターを埋める常連さんのわきまえた活気で、
下町酒場の居心地の良さの中に入りこめます。

大衆酒場というイメージから連想する雰囲気ではなくきれいに磨かれ整頓されたカウンター。常連さんの過ごし方も想像できます。

大衆酒場というイメージから連想する雰囲気ではなくきれいに磨かれ整頓されたカウンター。常連さんの過ごし方も想像できます。

それでは最初の一杯といきましょう。
名物は“シャリシャリ”の〈下町の酎ハイ〉。
氷を砕いたものを入れるのではなく、
焼酎とエキスをシャーベット状にしておいたものと
炭酸をブレンド。すると表面は冷えたシャリシャリに。

下町の酎ハイ

口に触れた瞬間のひんやり感がありながらも、
氷ではないから中身は薄まらない。
シャリシャリもあって軽やかだけれど、
芯の部分はストンからドシンに変わるような、
しっかりヘビーな飲みごたえあり。
だんだん強さが上がってくるような感覚があります。

名物 “シャリシャリ”の〈下町の酎ハイ〉(300円)。レシピこそ創業から変わらないものの、シャリシャリのアイデアは実は常連客の思いつきから。愛知屋あっての常連、常連あっての愛知屋らしい逸話。

名物 “シャリシャリ”の〈下町の酎ハイ〉(300円)。レシピこそ創業から変わらないものの、シャリシャリのアイデアは実は常連客の思いつきから。愛知屋あっての常連、常連あっての愛知屋らしい逸話。

レシピはと言えば甲類焼酎に、
近隣台東区の〈天羽飲料〉製造、「天羽の梅」ラベルで知られる
ハイボールの液〈マルA〉をブレンドした、下町ハイボール。
炭酸は地元墨田区で製造される強炭酸。

ここまではオープン……というより、
「秘密にしてたんだけど、どこかで俺がしゃべっちゃったのかなあ。
いつのまにか知られちゃった」
と大将はあっけらかん。

でも、それがどのようにしてこの風味になるのか?
その秘密を握り続けているのは幸子さん。
45年前に開店し、14年目の平成2年に、息子の鉄之さんが修業から戻るまで、
ひとりで切り盛りしてきました。

豪快な笑い声とは一転。料理の間は寡黙で繊細な大将のもうひとつの顔。

豪快な笑い声とは一転。料理の間は寡黙で繊細な大将のもうひとつの顔。

当然この店の命である酎ハイも幸子さんの作品。
つくり方のコツや配合は大将にも明かされていません。
目の前でつくられていくところを見ていると、
お酒の強さだけではないなにかが、胸にこみあげてくるような気持ちにも。

肴に目を移していきましょう。
と、お品書きを開き、おススメのボードに目をやると
驚かされるのはその品数と多彩さ。
「100以上はあるのかなあ」と大将。
千住の魚河岸(中央卸市場足立市場)から仕入れる、
新鮮な魚から定番酒場メニューに、
チキンカツ定食をはじめとするボリューム飯まで、豊富すぎるバリエーション。
なぜこんなに? と聞けば
「いやあ、こういうのつくれないの? やれないの?
て聞かれて、できねえってのは言いたくないんですよ」
とカラッと笑う大将。

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冬の名物料理は〈本日の小鍋仕立て〉。今日は〈豚柳川鍋〉(750円)。あつあつをシャリシャリの酎ハイとともに。

冬の名物料理は〈本日の小鍋仕立て〉。今日は〈豚柳川鍋〉(750円)。あつあつをシャリシャリの酎ハイとともに。

冬ならではの味覚。あつあつの料理からきりっとしまった冷製の一品まで、幅広く。〈かき酢〉(650円)

冬ならではの味覚。あつあつの料理からきりっとしまった冷製の一品まで、幅広く。〈かき酢〉(650円)

鶏料理屋での修業にうなぎを焼いてきた経験も生きる焼鳥。山梨のブランド〈紅ふじ鶏〉を使用。タレはしっかり感とやさしくしつこくない、あきさせないテイスト。

鶏料理屋での修業にうなぎを焼いてきた経験も生きる焼鳥。山梨のブランド〈紅ふじ鶏〉を使用。タレはしっかり感とやさしくしつこくない、あきさせないテイスト。

「まあ、どじょうやうなぎに川魚、それから鶏料理、
いろんな修業を長くしてきたんで、引き出しはたくさんあるんですよ」
と自信のひと言に、幸子さんが歯切れよくかぶせます。
「もうね、負けず嫌いなんですよ」
大将も笑って応戦。
「でも前よりはずいぶん減ったんですよ。
お母さんひとりでやってた時はもっとあったんだから」
負けず嫌いは、もしかしたら幸子さん譲りなのかも。

本場三河の〈うなぎの白焼き〉は3500円。ふつうはこの値段ではいただけない名産品もさらりとオンリスト。

本場三河の〈うなぎの白焼き〉は3500円。ふつうはこの値段ではいただけない名産品もさらりとオンリスト。

アイデアメニュー満載の愛知屋ですが王道の〈刺盛り〉(12種・3500円~)も人気。ボリュームもすごい。これも大将の心意気……というよりも負けず嫌いの産物でしょうか。

アイデアメニュー満載の愛知屋ですが王道の〈刺盛り〉(12種・3500円~)も人気。ボリュームもすごい。これも大将の心意気……というよりも負けず嫌いの産物でしょうか。

親子二人三脚で約30年。お店の歴史は45年目。
でも店の歴史以上におふたりがこのまちで重ねた歴史がある。
「お母さんは猫の通り道だって全部知ってるよ」と大将。
通った小学校も、もう4世代目。
「創立から100年は経っている小学校。
今はほかの小学校と統合されたんだけど、そこにばあちゃん、お母さん、俺、
それから俺の子どもも通ってるからね」

地元を愛すると言えば地元のお祭り。隅田稲荷神社の例大祭。
2020年は飲食業にとって厳しい年でしたが、大将は、
「祭りが中止になったのは寂しかったね」と腕を組んで目を伏せます。

幸子さんによれば、
「お祭りがなくなったのは昭和天皇の崩御の時以来だから……」
平成の30年から令和へと変わり、
それ以来の中止は、地元と共に生きる石川家にとっては辛いもの。
でもお店の奥に掲げられた地域の絆を表す
お祭りに関わる大看板や、
過去の笑顔溢れる写真を見ながら酎ハイを味わえば、
きっと2021年には明るい笑い声、お祭りの掛け声が戻ってくる、
そんな気持ちになります。

下町の絆と情熱は祭りと共に。地元で一緒に歩んできたからこそここにあるべき、お祭り仲間からの立派な寄贈品。

下町の絆と情熱は祭りと共に。地元で一緒に歩んできたからこそここにあるべき、お祭り仲間からの立派な寄贈品。

お客さんの「こんなのできないだろ」で
火がついて生まれたサバづくしコースも、
週替わりでちゃんぽんや1年寝かせた味噌を使う味噌ラーメンといった、
こだわりまくりの火曜日限定ラーメンも、
そして、これでもかという分厚いチキンカツも。
広がっていくメニューは下町の心意気と自信の表れ。

カラッと明るい負けず嫌い。
その裏側にある技術で、お客さんを楽しませる。
それが愛知屋の流儀なのでしょう。ここで酎ハイをもう1杯。
3、4杯と重ねて間違いなくほろ酔いなのだけれど、
強くスッキリした味わいの中に、
ほんの少しだけほろりと香る梅系の酸味が心地いい。

材料はあけっぴろげでもその裏にある秘密のエッセンス。
豪快な大将の笑い声とお母さんの小気味いい合いの手、
しかしその裏にも楽しさばかりではない苦労や努力があったのかな、
なんて勝手な想像をしながら、うなぎの白焼きに箸を入れれば、
ほどけるように、これも身がほろりと。
にぎやかな笑い声の夜。でも心の中は少ししみじみ。
愛知屋には下町の魅力の両面があるようでした。

「このつまみできないか」と言われたら「できるって言うでしょう!」そう豪語する大将がぽろっと照れ笑いしながら言った言葉が印象的。「そうは言っても……なんでやっちゃうんだろうね(苦笑)」

「このつまみできないか」と言われたら「できるって言うでしょう!」そう豪語する大将がぽろっと照れ笑いしながら言った言葉が印象的。「そうは言っても……なんでやっちゃうんだろうね(苦笑)」

では、次の物語を求めて
酎ハイ街道へと、また迷い込みましょう。

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●酎ハイ街道の味と灯りと人情を、家で味わう幸せ
タカラ「焼酎ハイボール」〈ドライ〉

ガツンときて、ウマい! も実感。飲み応えも存分。それが下町スタイル。
東京・下町生まれの元祖チューハイ(焼酎ハイボール)の味わいを追求。
キレ味と爽快感、ガツンとくる喜びを強炭酸、甘味料ゼロのテイストで、
うまみと飲みごたえは、宝ならではの焼酎と、7%という絶妙なアルコール度数で。
下町の大衆酒場で愛されるスタイルだからいろいろな肴にぴったり。
糖質ゼロ、プリン体ゼロもうれしい一缶です。

information

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愛知屋

住所:東京都墨田区墨田3-41-17

TEL:03-3610-2445

営業時間:月〜土17:00〜23:30(L.O. 23:00)

日・祝 16:00〜22:30(L.O. 22:00)

定休日:水曜

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