レシピ付き!洋食の老舗レストラン大宮「鶏の蒸し焼き粒マスタード」


東京駅と直結する新丸の内ビルディングが竣工したのは2007年4月でした。当初から出店のお誘いを受けていたこともあり、このビルの5階に、2店舗目となる「レストラン大宮」をオープンしました。

 現在、32歳で地元の浅草にオープンした「レストラン大宮」は、愛弟子の延藤(光昭シェフ)と私の次女・奈津美が仕切っています。延藤は、次女の夫です。今や浅草の「レストラン大宮」のお客様は、私より2人を贔屓にしてくださるようになりました。65歳になった私はここ、丸の内の「レストラン大宮」の厨房に立っています。
 フロアは長女の由季世と、長女の夫でフランス人のジャンクリストフ・リュクスが担当しています。2つの「レストラン大宮」を2人の娘が支えてくれる。照れ臭くて娘たちには言いませんが、幸せなことと思っています。

 明治、大正期から旨い洋食屋が評判を呼んでいた浅草で、自分の店を出したい。この想いを抱いて歳の私は料理の道に入り、ヨーロッパでの修業を終えて東京へ戻った時は、30歳近くなっていました。当時、出会った南フランスの三ツ星シェフ直伝の料理が「鶏の蒸し焼きマスタードソース」なんです。そのシェフとは、麻布台のフランス料理店「ラ・テール」の料理長を務めていたジェラール・ジョルダン氏。南フランス「ロアジス」の三ツ星シェフです。

白いご飯に合う大宮のフランス料理を追求して

 ジェラールさんは日本の白いご飯が大好物で、フランス料理で使うソースをかけて食べる。その彼が得意とした逸品が「シュプレームドゥヴォライユオソースムータルド」。チキンのムネ肉を焼いて、ソース・ムータルド(マスタード・ソース)でいただくんですが、この料理がじつに旨い。白いご飯にもピッタリ合うんです。

 初めて食べたその日から、私は彼の元に通い、教えを乞いました。
 自分の店は洋食屋ではなく、本格的なフランス料理のレストランにしたい、という想いもあったのですが、白いご飯に合う「シュプレームドゥヴォライユオソースムータルド」が、私のその想いを払ってくれました。「レストラン大宮」をオープンするに当たり、お客様が分かりやすいように、「鶏の蒸し焼き粒マスタードソース」と名付けました。

 ところが、ハンバーク・ステーキやビーフシチューなどは評判になりましたが、「鶏の蒸し焼き粒マスタードソース」にはなかなか注文が入らない。このおいしさを分かっていただきたい、と悶々としていた頃、料理評論家の山本益博さんが店にいらして、「これは旨い。あの『ラ・テール』の味だ」とおっしゃった。これが契機となって、このスペシャリテは、広く愛されるようになりました。

「蒸し焼き」と表現していますが、鶏肉は蒸してはいません。蒸し鶏のようにやわらかく焼いているのです。そう、火の入れ方がポイントです。70〜80度の低温でゆっくりと焼き上げます。

 ソースには大宮自慢のデミグラスと赤ワインを使っています。

 これからも「大宮の味」で、お客様に喜んでいただけたら、料理人冥利に尽きますね。

大宮勝雄 Katsuo Omiya
1950年東京浅草生まれ。18歳で料理人をめざし、フランス料理店で修業を始める。 26歳でニュージーランドへ。ホテル内のレストランでスーシェフを務める。28歳の時にヨーロッパを車で周遊。イギリス、フランス、ギリシャ、モロッコで地方料理を学ぶ。帰国後、フランス料理店「ラ・テール」の料理長で三ツ星シェフのジェラール・ジョルダン氏に師事。1982年32歳で浅草に「レストラン大宮」をオープン。2007年、東京・丸の内の新丸の内ビルディングに2店舗目を出店する。

【レシピ】鶏の蒸し焼き 粒マスタードソース

鶏の蒸し焼き 粒マスタードソース
ピンク色にしっとりとローストしたチキンの何と瑞々しいことか。特別な鶏肉を使っているわけではない。プロの火入れの技がこの旨さを生むのだ。マスタードソースが味のハーモニーを奏で、フレンチのオーソドックスな逸品がご飯と合う絶品の洋食へと変身している。

材料(2~3人分)

鶏ムネ肉、塩、コショウ、バター…適量

● ソース
エシャロット(みじん切り)…小さじ1/赤ワイン…100㏄/デミグラスソース…大さじ1/粒マスタード…大さじ1/生クリーム…200㏄/バター…50ℊ

● その他・つけ合せ
粗挽きコショウ…少量/リヨネーズポテト、クレソン…適量

作り方

  1. ソースを作る。鍋にバターを少々入れ、エシャロットのみじん切りを炒める。赤ワインを入れ、1/4に煮詰める。デミグラスソース、粒マスタード、生クリームを入れてとろみがつくまで煮詰め、仕上げに残りのバターを加える。
  2. 鶏ムネ肉は塩、コショウし、軽く薄力粉をつけ、バターを溶かした鍋に入れ、焦げ色がつかないようにじっくり焼く。
  3. 2の肉を薄切りにして器に盛り、粗挽きコショウをふり、1のソースを流す。つけ合わせのリヨネーズポテト(ニンニクをオイルでソテーし、タマネギのスライスとベーコンの短冊切りを炒める。ゆでてスライスしたジャガイモを加えて炒め、グリュイエルチーズをふって表面に焼き色をつける)とクレソンを添える。
150gほどの鶏肉は、塩、コショウで下味をつけてから小麦粉をまぶして、低温で焦げ色をつけないようにじっくりと焼く。

レストラン大宮 新丸ビル店
東京都千代田区丸の内1-5-1新丸の内ビルディング5F
03-5222-0038
● 11:00~14:30LO 17:00~21:30LO、 日・祝 ~21:00LO
● 無休
● 35席
http://0038.info/shinmar


長瀬広子=取材、文 富貴塚悠太=撮影

本記事は雑誌料理王国第228号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第228号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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