日本共産党が「天皇陛下在位30年記念式典」を欠席する本当の理由

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陛下を政治利用した?

 日本共産党の穀田恵二国対委員長は、24日に予定されている政府主催の天皇陛下在位30年記念式典に党として出席しないことを記者会見の場で明らかにした。現政権が天皇陛下を政治利用している点を問題視してのことだという。
 しかし、もともと共産党は皇室に対して独自の立場を取り続けていたのだから、今回の欠席は“彼ら”としては通常運転。現政権うんぬんというのは、別の意味での政治利用に見えなくもない。
 実際のところ、共産党は皇室をどう位置付けてきたのか。同党の綱領を丁寧に読み解いた『日本共産党の正体』(福冨健一・著)をもとに見てみよう(以下、特に出典を記していない引用は同書より)。

 現在の日本共産党の基本方針を定めたものは「2004年綱領」である。
 この綱領では、戦前の日本について、こう書いてある。

「当時の日本は、世界の主要な独占資本主義国の一つになってはいたが、国を統治する全権限を天皇が握る専制政治(絶対主義的天皇制)がしかれ、国民から権利と自由を奪うとともに、農村では重い小作料で耕作農民をしめつける半封建的な地主制度が支配し、独占資本主義も労働者の無権利と過酷な搾取を特徴としていた(略)
 日本帝国主義は、1931年、中国の東北部への侵略戦争を、1937年には中国への全面侵略戦争を開始して、第2次世界大戦に道を開く最初の侵略国家となった」

この歴史観を福冨氏はこう解説する。

「戦前の日本を天皇の専制政治で国民の権利や自由はなく、農村は半封建社会、労働者は無権利で過酷な搾取を受けていた時代と見ます。司馬遼太郎の『坂の上の雲』が描いた日本、議会制民主主義や政党政治を打ち立て、若者が欧米列強に追い付こうと目を輝かせている国と全く違います」

 ともあれ、戦前、そうした暗黒の大日本帝国から、人民を解放するために闘ったのが我々だ、というのが日本共産党の歴史観である。

「このことを04年綱領の大会報告ではこうも表現しています。
『世界の資本主義諸国のなかでも、もっとも野蛮な抑圧のもとにあった戦前の日本社会で、いかなる搾取も抑圧もない未来社会の建設をめざし、天皇制国家の専制支配と侵略戦争に反対して、平和と民主主義のために勇敢にたたかいぬいた不屈の記録であります』
 つまり、戦前、日本共産党が闘ったことについて、共産党は『平和と民主主義のためのたたかい』だと捉えているわけです。ただし、第三者の目は異なります。立花隆は『この時代の共産党は“武装共産党”と呼ばれるようになった』(『日本共産党の研究』)と記しています」

 歴史をどう捉えるかは、政党でも学者でも個人でも差があるところだろう。別に共産党員ではなくても、戦前を暗黒の時代として、皇室にも責任があると考える人はいるだろう。
 それでは、戦後、現在の天皇制についてはどうか。

「天皇の制度のない……」

 2004年綱領を定めたのは当時の委員長、不破哲三だ。不破の著書『時代の証言』によれば、苦労した点の一つは、天皇制の問題であったといい、「『天皇』という制度の是非は、将来の国民の選択に委ねることにしました」と述べている。
 ちょっと分かりづらいので、天皇制について不破自身の『新・日本共産党綱領を読む』から解説にあたるところを紹介しよう。

「綱領でも述べているように、私たちは、日本の将来の発展の方向としては、天皇の制度のない、民主共和制を目標とする立場に立っています」
「私たちも、当然、天皇の制度と共存してゆくことになります。その共存の基準は、憲法の条項であって、なかでも『国政に関する権能を有しない』という条項を厳格に守ることが、とくに重要な意味をもっています」

 要するに、即時撤廃までは求めないが、最終的には天皇制のない国を目ざしているわけだ。この立場からすれば、在位30年を素直に祝えるはずもない。福冨氏は、次のように警鐘を鳴らす。
「共産党綱領の掲げる天皇制の廃止、自衛隊の解消、資本主義の否定などは、日本の歴史や文化、価値観などと断絶しています。アメリカのトランプ大統領はよく『国家を分断しようとしている』と批判されますが、仮に共産主義を容認する民主連合政府が誕生すれば、アメリカよりはるかに酷い『国家の分断』を招き、多くの国民が戸惑うことになるのではないでしょうか」

 ともあれ無理に、お祝いの席に出てもらわないほうがよいのは間違いなさそうだ。

デイリー新潮編集部

2019年2月23日掲載

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