小室圭さん「説明文書」に欠けている人間心理への洞察 危機管理のプロが指摘

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 眞子さまの婚約者、小室圭さんの経緯説明文書公開と、その後の唐突な「解決金を支払う」という意向の表明、いずれも当人の意向とは裏腹に理解者を増やすのには貢献していないようだ。

 案の定というべきか、文書で主に金銭トラブルの相手として扱われた、母親の元婚約者は週刊現代に登場。取材に答えて、文書の中の事実誤認を指摘したうえで「私を悪者にしたり、利用するのはやめてほしい」とコメントしている(4月24日号)。

 元婚約者氏も傷ついたようだが、一連の騒動でとばっちりを受けたのは、日本の弁護士たちも同様だろう。

 長すぎる説明文書や、杓子定規な権利の主張、一方的な論理の展開等々について「弁護士とはそういうもの」といった解説をする人が、メディアやSNS上で数多く見られた。

 これは裏を返せば、「弁護士頼みではトラブル解決にならないこともある」と広く周知したも同然で、その意味では営業妨害に等しい。

 前回の記事で、長い説明文書をコンパクトにまとめたサンプル文を作成してくれた危機管理コンサルタントの田中優介氏(株式会社リスク・ヘッジ代表取締役社長)の著書『地雷を踏むな』には、今回の件を予見したような一節がある。

 2019年12月刊行の同書第4章「警察と弁護士は使いよう」の中にはこうある。

「最近の例でいえば、秋篠宮家の眞子さまの結婚相手とされる小室圭さんの弁護士の対応は、法律論を振りかざして世論を敵に回したのではないかと思われます。小室さんについては、母親の金銭トラブルが伝えられており、その行く末が注目されていました。これについては秋篠宮さまもご心配をなさっていたものの、小室さんサイドは会見やコメント発表といった対応をしていませんでした。ところが、ある時、突然、小室さんの代理人弁護士がコメントを発表します。それは簡単に言えば『金銭トラブルは解決済み』といった主張でした。

 法的にはそうした主張にも合理性があるのかもしれません。しかし、結果としてこのコメントは事態を好転させる方向には働きませんでした。お金を貸したと主張している男性側が『解決なんかしていない』という立場を維持している以上、世間の多くの人は納得しないからです。(略)

 依頼した弁護士が、勤務先や学校に対して、攻撃的な言動をすることは起こり得ます。その結果、退職や退学を余儀なくされることだって、無いとは言い切れません。

 法的な立場のみを重視すると、それ以外の要素を見逃してしまい、結果として損をすることがあるのです」

 同書が刊行されたのは2年前だが、今回の騒動にもぴったりとあてはまるようだ。

毒にも薬にもなる“弁護士”

 2年を経て新しく判明したのは、弁護士のみならず、小室さん自身が弁護士的思考を身につけてしまっている可能性が高いということだろうか。

 失敗続きに見える小室さん側の言動だが、危機管理のプロから見た場合、弁護士は頼りにならないものなのか。田中氏に改めて聞いてみた。

「いえ、もちろん危機管理のうえで弁護士は不可欠な存在だと思います。個人はともかく企業などでは弁護士抜きで危機管理を考えるべきではないでしょう。

 ただし、毒にも薬にもなる場合があることを肝に銘じたほうがいいのです。

 弁護士は、基本的に『法廷で闘う人』です。この闘う姿勢が心強いこともありますが、一方で世論を敵に回してしまって、依頼人を不利な状態に陥らせてしまうことがあります。

 危機に陥った人は、しばしば二つのトウソウ本能に支配されます。闘うほうの闘争と、逃げるほうの逃走です。

 逆切れしてマスコミに反論するのは『闘争本能』の表れ、逃げ回るのは『逃走本能』の表れですね。

 文書を読む限り、小室さん自身は『闘争本能』に支配されていて、それに闘う職業の弁護士が組み合わさったことによって、世論を敵に回すような戦略を取ってしまったと感じます」

人と対立してしまった時に必要な“4つのステップ”

 ここからの局面打開はあり得るのだろうか。田中氏はこう語る。

「人と深刻に対立してしまった時には、4つのステップを丁寧に踏んでいかないと解決が遠のいてしまいます。

 (1)反省、(2)後悔、(3)懺悔、(4)贖罪です。

 まず自身の過去を否定的に振り返り、相手がどう考えているかを洞察する(反省)。

 次に己の言動を分析して、自分自身の心理を洞察する(後悔)。

 そのうえで、たとえ自分に多少の理があると思っていても、それを主張するのを抑えて、詫びるべき点を詫びて原因を告白する(懺悔)。

 最後に相手の損害や犠牲に対して代償を捧げる(贖罪)。

 一連の経緯や文書には(1)と(2)の要素がほとんど見られません。不十分な懺悔ののち、唐突に解決金という贖罪を宣言しました。これでは前に進めません。

 このようにこじれたケースでは、相手の側も落ち着くには、次の4つのステップが必要です。いきなり『そうか、わかった!』などとなる程度の話ならばこじれません。

 (1)癒やされる……自分の痛みを相手(今回でいえば小室さん側)が理解していると感じる。

 (2)腑に落ちる……対立を生んだ理由を納得する。

 (3)受け入れる……現状を受け入れて、相手(小室さん側)のお詫びを受け入れる。

 (4)忘れようとする……相手を許して怒りを忘れ、先に進もうとする。

 人間は、こうしたステップを経てようやくトラブルの相手を許す気持ちになれるのです。

 今回の小室さんの文書には、そうした人間の心理を考慮した形跡が見られません」

小室さん側が見誤っている“危機の本質”

 それでは、これから先、どうすれば元婚約者の理解を得られるのだろうか。

「まずは元婚約者の方に、心をこめたお手紙を書くことをお勧めします。(1)癒やす、のステップからやり直すしかありません。そして、『援助して頂いたお礼として、今度は私が援助をさせていただく番です』と伝える。ここまでは、自分でやらないといけないと思います。

 闘う職業の弁護士に任せてはいけません。第三者ではわからない微妙なニュアンスが、人間同士の間にはありますので。

 その後に、受け入れて頂くことになったら、そこでようやく弁護士さんの出番になるのです。法的な和解の手続きなども必要になるでしょうから。

 実際には、2年前の時点で、そうしたステップを丁寧に踏んでおけば、今回のような事態は防げたはずです。

 現実問題としては、それを怠ったうえに性急かつ攻撃的なアプローチに出てしまった今、修復は難しいかもしれません。

 それでも、元婚約者の方は、お金は要らない、小室さんと眞子さまの幸せを思っているといった旨を語っていらっしゃいます。その善意にすがれば、元婚約者の方との関係はある程度修復できる可能性も無いわけではないでしょう。

 ただ、たとえ両者が和解したとしても、すでに国民的関心事となっているため、どこまで国民の理解が得られるかは疑問ですが……」

 田中氏は、小室さん側が今回の「危機」の本質を見誤っている、とも指摘する。

「そもそも文書や弁護士のコメントを見ると、危機を『金銭の貸し借りの有無』だと捉えているフシがあります。

 しかしこれが大きな間違いなのです。

 今回の危機は『恩』に関わること、すなわち問われているのは『報恩の有無』なのです。贈与であろうが、貸与であろうが、お金に困っている時に手を差し伸べてくれた人には恩義があります。日本人の国民感情として『恩知らず』は嫌われます。

 返すべきはお金ではなくて、恩なのです。45万円ほどの入学祝いをもらったとすれば、贈与であっても恩義は感じるべきでしょう。ところが、あの文書には報恩の気持ちが十分に書かれているとは言えません。

 元婚約者の方にいただいたのは、お金だけではなくて大きな恩である。その気持ちを持つことから始めてみるしかないのではないでしょうか」

デイリー新潮編集部

2021年4月23日掲載

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