そもそも「左手グローブ」ってマストなの? なぜみんな着けてるの? なぜ左手だけなの?

たいていの人が右手は素手なのに左手だけグローブをするゴルフ。レフティーであれば逆。つまり、利き手にはグローブをしないのがゴルフでは当たり前になっています。専門家に話を聞くと、そこには正しいスイングをするための深い理由がありました。

左手グローブが定着したのは1940年代以降から

 ゴルフを始めるときに、まず最初に買いなさいと言われるのがゴルフグローブ。クラブはもちろん、ゴルフシューズだって最初は練習場通いであることを考えれば、すぐに用意する必要はありません。でも、「別に素手でもクラブは握れるし、そもそもそれってマストなの?」とか「野球選手とかは両手グローブなのに、なんで左手だけ?」と疑問に感じたことはないでしょうか。

初心者のうちは、あまり深く考えず「マメの予防」くらいに考えている人がほとんどでしょう

 左手にグローブをすることが一般的になったのは、1940年代から60年代にかけて。それ以前はスコットランドやヨーロッパを中心に、寒さ対策として両手にグローブをすることはあっても、左手だけにするという習慣はありませんでした。10~30年代に活躍したボビー・ジョーンズやウォルター・ヘーゲン、ジーン・サラゼンといった往年の名プレーヤーの写真を見てもグローブを着けずにプレーしています。

 しかし、42年にサム・スニードが左手にグローブをして全米プロに勝利。これが初めてのグローブを着けたメジャーチャンピオンと言われています。さらに50年代以降、アーノルド・パーマーを皮切りに、ジャック・ニクラス、ゲーリー・プレーヤーという当時の“ビッグ3”が左手にグローブをして世界を席巻。グローブをしてプレーする習慣が、プロゴルファーはもちろんアマチュアにも浸透していったのです。

 こうして定着した左手グローブですが、大半のアマチュアゴルファーは「みんなしているから何となく」で着けているのではないでしょうか。では、そもそも左手グローブのメリットとは何なのか、ティーチングプロ兼クラフトマンとして活動する関浩太郎さんに聞いてみました。

「左手だけグローブをするのは、左手をしっかり握って、右手の力を抜くためです。手を握る強さは腕の硬さにつながります。左手を強く握ると左腕に力が入り、右手を強く握ると右腕が硬くなる。ゴルフでは右腕が硬くなってしまうのは絶対にNG。右打ちの場合、左腕はアドレスからトップ、インパクトまで伸びたままになっているのが理想です。だから左腕は安定していたほうがいい。一方、右腕はバックスイングでは右ヒジをたたんで、トップでは右腕を深い位置にもってきて、ダウンスイングでは右腕をリリースしていくことでスイングスピードを上げる必要があります。このとき、右腕に力が入っていると、右腕を曲げて伸ばす動きがスムーズにできません。ただ『右手の力を抜こう』としてもなかなか難しいのですが、左手を強く握ることで自然と右手の力を抜ける。そのために左手だけグローブをするようになったと考えられます」

特に初心者は絶対に左手グローブをしたほうがいい

 ただ、少数派ではありますが、グローブをしない名プレーヤーもいました。

「グローブをするデメリットとしては、素手で直接グリップを触れないので微妙なタッチや距離感を出しにくい。だから、パターはもちろん、アプローチなど“スピードが必要ないショット”ではグローブを外す選手も多いです。また、ドライバーやアイアンでもグローブをしなかったことで有名なのは92年マスターズで優勝したフレッド・カプルス選手。ただし、カプルス選手が全盛期だった90年代も『グローブをすればあと20ヤードは飛ぶ』と言われていました。飛距離のメリットを考えれば絶対にグローブをしたほうが有利です」

 では、やはりアマチュアもグローブをしたほうがメリットが大きいということでしょうか?

「絶対にするべきです。特に初心者ゴルファーやアベレージゴルファーは圧倒的に右手に力が入りすぎている人が多いので、左手にグローブをして、左手をしっかり握ることを意識したほうがいいと思います。最近は『ゆるゆるで握る』というレッスンをする人もいますが、ゆるゆるで握っていいのは右手だけ。左手はしっかり握っていないとフェース面が安定しません」

 ちなみに、女性だと日焼けを気にして両手にグローブをする人が多いですが、スイングだけを考えれば左手グローブがおすすめだということです。

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1966年マスターズでの1コマ。左が40年代、50年代にメジャー9勝したベン・ホーガン、右が60年代を中心にメジャー7勝のアーノルド・パーマー。60年代でもホーガンは“素手”を貫いていたことが分かる(2人ともタバコ吸ってますが、時代が時代なのでご容赦を) 写真:Getty Images
初心者のうちは、あまり深く考えず「マメの予防」くらいに考えている人がほとんどでしょう

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