審査員全員が頭を抱えた。12月4日放送の『M-1グランプリ2016』(テレビ朝日系列)。
エントリー総数3503組から勝ち抜き、最終決戦に残ったのはスーパーマラドーナ、和牛、銀シャリの3組。激戦の結果、チャンピオンに輝いたのは芸歴11年目の銀シャリだった。
「M-1グランプリ2016」採点データ徹底分析。上沼恵美子の採点が明暗を分けたのか
銀シャリおめでとう
イラスト/小西りえこ

5人&関東不在の審査員


今年のM-1審査員が発表されたのは、なんと当日の朝5時。その顔ぶれは松本人志、上沼恵美子、オール巨人、中川家礼二、博多大吉。M-1グランプリ始まって以来の5名体制で、関東芸人は不在。全員が吉本興業……ではなく、上沼恵美子のみ吉本興業ではない(上沼事務所所属。「海原千里・万里」時代はケーエープロダクション所属)。


2010年までのM-1は審査員席にベテランたちが座り、昨年は過去のM−1チャンピオン9名が並んでいた。今回はM-1とTHE MANZAIの優勝者が各1名、ベテランが3名というミックス体制。審査後のコメントでも世代を感じさせるコメントが目立つ。オール巨人がハライチに「RPGわからん方が見てると、なんだとは思われるよな」とベテランらしい年配客への気遣いを見せれば、中川家礼二は和牛に「ツッコミがね、いつも劇場で見てるけど成長してるんちゃうかな」と距離が近い先輩ならではの激励を送る。関東・関西という「地方」の軸から、ベテラン・若手といった「世代」の軸に振った審査員だった、という見方もできるだろう。

ただ、5名という人数の少なさは気になった。
1人の点数のウェイトが高くなり、同点も2度起きている(カミナリとスリムクラブ、アキナとハライチ)。また、当日の朝5時というギリギリでの発表だったが、これが1週間前だったら審査員の傾向に合わせてネタを調整したコンビもいたかもしれない。

上沼相談員は鍵を握っていたのか?


M-1初の審査員5人体制、どんな採点結果になったのかを表にまとめた。赤字がその審査員がつけた最高点、青字が最低点。平均点と標準偏差(点数のばらつき)も併せて算出している。
「M-1グランプリ2016」採点データ徹底分析。上沼恵美子の採点が明暗を分けたのか
全組の採点一覧。表中の赤字がその審査員がつけた最高点。青字が最低点。

上沼恵美子がカミナリにつけた「81点」が強く印象に残っている人も多いだろう。
2組目とまだ序盤の段階で、他の審査員に比べてかなり低い水準の点数である。これは上沼恵美子の採点が今回のキーに……と思ってしまうが、データを見ると実はそうでもない。

上沼恵美子の採点は、カミナリの81点を除けば全て89〜95点に収まっており、他の審査員の振れ幅とほぼ同じ。標準偏差は5人の中で最も高い値だが、これも81点が大きく響いたもの。平均点も他の審査員と大きく差があるわけでもない。カミナリの81点さえなければ、上沼相談員の採点は丸く収まっていると言えるのだ。
しかしあの81点、強めのツッコミがいけなかったのだろうか? スーパーマラドーナが「プロの技術で叩いてますんで」で客席の悲鳴を歓声に変えたように、カミナリの絆の強さをネタ中にアピールしてもいいのかも。

また、初めての審査員で緊張のあまり顔面蒼白の状態で登場し、隣の松本人志から「合成樹脂みたい」とイジられていた大吉先生は、標準偏差の低さから慎重に点差をつけていたことがわかる。平均点が89.89点なのも、1番手のアキナにつけた89点をきっちり基準に置いた結果ではないだろうか。

全体的に見て、誰かが特別に採点を引っ張っていたわけでなく、それぞれが最高点をつけたコンビが最終決戦に進むという順当な結果だった。最終決戦3組が終わったあと、審査員達は天を仰ぎ、Twitterのタイムラインでは優勝予想が割れた。松本人志も「今までで一番僅差じゃないかな」と振り返る。
この順当さ、悩ましさの源はもちろん、出場者のレベルが全て高かったからこそだ。

銀シャリ、おめでとう!キングオブコント優勝のライスと一緒に、お米のCMが来ますように!

(井上マサキ)