相続税の節税対策として最も有名な「生前贈与」。その中でも2013年からスタートした、一度に1500万円までの資金を贈与できる「教育資金一括贈与」は節税対策として積極的に活用されています。

ただし、正しい知識を持っていないと思わぬトラブルになってしまうことも。今回は「教育資金一括贈与」に関する失敗事例を紹介します。

初孫の顔が見たい

鈴木敏郎さん(仮名、65歳)には同い年の妻と37歳になる一人息子がいます。息子は地元の大学を卒業後、大手メーカーに勤務。職場結婚し、鈴木さん夫婦の近くにマンションを借りて幸せな家庭を築いています。

鈴木さん夫婦は、子どもが1人しかいなかったこともあり、孫の顔が早く見たいと孫の誕生を切望していました。しかし、息子は「夫婦2人の生活を楽しみたいから、当面は子どもをつくる気はない」として、なかなか期待通りにはいかないものだと鈴木さんはどこか寂しく思っていました。

結婚してから10年経過しても、夫婦2人で旅行を楽しむ息子夫婦からは、孫誕生の予兆も見えないままでいました。そんな矢先に、突然鈴木さんの自宅を息子夫婦が訪ねてきます。そして、開口一番「お父さん、お母さん、ようやく孫の顔が見られるかもしれないよ」と言ったのです。

あまりに突然のことで鈴木さん夫婦は驚きましたが、同時に大きな喜びに包まれました。あまりのうれしさからか、その瞬間のことをはっきりと思い出せないほどです。息子の報告から数カ月後、待望の初孫が誕生しました。