コロナ禍の熱中症対策はどうしている?

厳しい暑さが続く、今年の夏。
新型コロナウイルスの影響で多くの人がマスクを着用しているだろうが、怖いのが熱中症のリスク。

厚労省は、屋外で人と十分な距離を取れる場合はマスクを外したり、こまめな水分補給をするなどの熱中症対策を呼びかけている。

新型コロナ対策と、熱中症対策。
このバランスが難しいところだが、大手浄水器メーカーであるBRITA Japan株式会社が「熱中症対策に対するアンケート調査」の結果を公表した。

(BRITA Japan調べ)
(BRITA Japan調べ)
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アンケートは、2020年7月19~21日にかけて全国の10〜60代の男女計770人を対象にインターネットで行われた。

アンケートによると、まず「外出時にマスクを着けている人」は91.7%。うち88.4%の人が「マスクの着用によって、例年の夏より暑く感じている」という。

さらに「マスクの着用によって例年より熱中症のリスクを感じる」という人も84.9%と多くなっているが…

一方で、「例年以上に熱中症対策を行っている」という人は27.9%。「例年と同じくらい、あるいは例年よりも対策を行っていない」が54.5%と最も多く、「熱中症対策をしない」という回答は17.5%にのぼった。

(BRITA Japan調べ)
(BRITA Japan調べ)

約9割が水分補給が足りていない

そして、対策をしている82.4%の人たちの中で最も多かったのが、「こまめに水分補給をする(87.7%)」こと。

水分補給は熱中症対策に有効とされる。熱中症対策を全くしていない人が2割近くいるというのは驚きだったが、これだけ見ると多くの人が正しい対策を出来ているように感じる。

(BRITA Japan調べ)
(BRITA Japan調べ)

しかし、「1日の平均水分補給量」を見てみると、最も多い31.7%の人たちが「500ml~1L未満」。続いて「1L~1.5L未満(25.8%)」「1.5L~2L未満(18.3%)」とどんどん減っている。

実は、問題なのがこの水分摂取量。

BRITA Japanが展開している「水トレ(水トレーニング)」を監修する工藤孝文医師によると、1日に必要な水分量は体重1kgあたり30ml~40ml。たとえば女性(体重50kgを想定)で1.5L~2L、男性(体重70kgを想定)で2.1L~2.8Lとなり、夏場は目安として3Lの水を飲むのが好ましいという。

しかし、調査結果を見てみると、この「3L」を摂取できている人はわずか3.0%。ほとんどの人が「1日に3L未満の水しか飲んでいない」ということがわかった。

多くの人がマスクの着用によって厳しい暑さに悩まされ、熱中症のリスクを感じつつも圧倒的に“水分不足”になってしまっているという、とても危険に思える調査結果。

正しい水の飲み方・熱中症への対策をBRITA Japanと工藤医師に聞いてみた。

「熱中症への危機意識を持ってほしい」

まずは、この調査を行ったBRITA Japanに聞いてみた。


――今回、熱中症対策に対する調査を行ったきっかけは?

新型コロナウイルスの蔓延により、今年はただでさえ猛暑の中、マスクを着用しながら日常を過ごさなければならない状況となっています。日々の報道でも熱中症が警告されていますが、熱中症対策を正しくできている方は意外と少ないのではと感じたことがきっかけです。

浄水器メーカーであるBRITAとして、世の中の意識調査を交えつつ、熱中症にならないようにするためにはどの程度の水分を摂取する必要があるのかを正しく訴求したいという思いから、本調査や水トレの取り組み・内科医の工藤先生からのご意見の発信に至りました。

本調査で分かったように多くの方が必要水分量を下回っています。熱中症はいつ自分に起きてもおかしくないという危機意識を持っていただくこと。そして、ご自身があとどの程度飲む必要があるのかを認識いただけたらと思っています。


――「熱中症リスクを感じる」人が多いにも関わらず、「熱中症対策をしている人」が少ない理由はどう考える?

今年の夏は、コロナウイルス対策によりマスクの着用や外出先では手指の消毒など、例年以上に取るべき行動が増えています。そのため、熱中症対策が後回しになっている可能性もあるのではと考えています。

また、そもそもコロナ禍で外出を控えている方が多いことも一つの要因かと思っています。室内であれば例年と同様の対策になってしまうかと思いますので。

一方、外出の機会が減ったことで、今年は身体が暑さに慣れにくいという危険な一面もあります。そのような状況下でマスクを着用して外出してしまうと、熱中症のリスクも高まるかと思いますので、ぜひ例年以上に意識的に水分補給をしていただけたらと考えています。

マスクを着用して生活しなければならない今年の夏に、「正しい熱中症対策と水分摂取の必要性について広めたい」という気持ちから、この調査や、健康な体作りのために適切なタイミング・量の水を飲むトレーニングプログラム「水トレ」の取り組みを始めたというBRITA。

この「水トレ」によると、「正しい水の飲み方」は

・一日必要摂取量の目安は体重1kgあたり30ml~40ml
・夏場は1日3Lまでを目安にする


という量の目安にくわえ、

・30分おきに75mlの水を「ちびちび飲み」する
・起床・お風呂・就寝前に水を飲む
・毎食前や空腹時に、コップ1杯の水を飲む
・内臓に負担をかけないため、常温の水を飲む


というもの。
「水トレ」を監修した工藤孝文医師に、改めて「正しい水の飲み方」について詳しく聞いた。

冷たい水を一気飲み!はNG

――改めて「正しい水の飲み方」を教えて

厚労省としても、コロナ状況下の熱中症の対策として1.2~1.5Lの飲水が推奨されています。これを下限値として摂取していただきたいところですが、飲みすぎることで体力を消耗してしまいますので、上限はやはり3Lがよいでしょう。

また、水を一気に摂取することで利尿作用を生じることから、「ちびちび飲み」は熱中症対策においてもちろん有効です。

夏の暑い環境では冷たい水を飲みたくなってしまいますが、冷たい水ばかり飲むと体温が下がり、だるくなる、免疫が下がるといったことになりますので、できる限り常温の水を飲むようにしていただきたいです。

また、外出されて汗をかく状況にいる場合には、しっかりと食事などから塩分や栄養を摂取することをいつも以上に意識していただきたいと思います。食事があまりとれないという方にはいつもの水に少しの塩・砂糖を加えて持ち歩くなどがおすすめです。

マスクを着用することで喉が渇きにくくなっていますので、「喉が渇いてから」飲むのではなく、「時間を決めて」飲むことをより一層意識してほしいと思います。

マスクで「喉の渇き」に鈍感に…

――水分不足による体のトラブルは実際に起きている?

脱水症状とCOVID-19の初期症状は類似していることが知られ、昨今PCR検査を受ける人数が増えていることの一因として脱水症状をコロナと勘違いする人が増加していることが考えられます。

また皮膚疾患としても、マスクによる皮膚疾患(皮膚乾燥感など)の患者増加が報告されています。

その他の疾患としては逆にコロナによる受診抑制もあり、増加している傾向はありませんが、便秘や倦怠感、食欲不振などの水分不足により生じる症状が潜在的に増加している可能性は高いと考えられます。


――「熱中症対策をしている人」が少ない理由はどう考える?

1つには、感染拡大防止のため、外出が制限されることがあると思います。基本的に熱中症対策は外出時に気にされる方が多くなります。マスク着用などにより熱中症のリスクが高まるのはわかっているけれども、外出しない自分には熱中症対策は不要だ、と考える方が多いためだと考えられます。

また、熱中症の初期症状として喉の渇きなどが有名ですが、マスクをしていると喉の渇きを感じにくいことから、自覚的に熱中症の危険性を感じる機会が少なくなっていることも一因です。

実際に熱中症で搬入された患者数はコロナがなかった昨年度のものと比べて減少しており、外出自粛による熱中症患者の減少が確認できます。

しかし、高齢者などにおいては家庭での熱中症の報告が多く、例年と同じかそれ以上の対策が必要です。

マスクで喉の渇きに鈍感に…(イメージ)
マスクで喉の渇きに鈍感に…(イメージ)

BRITA Japanが分析する「熱中症対策が後回しになっている可能性」や「室内で過ごす事が多いため対策が不十分」ということにくわえ、工藤医師が指摘しているのが「マスクを常に着用していることで喉の渇きを感じにくい」ということ。

マスクの着用で喉を保湿するともされ、その分水を飲むタイミングを失いがち。さらにマスクを取って水を飲み、またマスクを着ける…という動作を面倒に思ってしまうこともある。

そのため、「少し喉が渇いてきたかも?」と自覚したときにはすでに全身がカラカラ…ということが、今年の夏は起きているのだ。
 

こまめな「ちびちび飲み」が大切
こまめな「ちびちび飲み」が大切

多くの人がマスクを着けたまま迎えた、異例の夏。いまだ収束の兆しの見えない新型コロナへの対策とともに、「ちびちび飲み」や「常温の水を飲む」など熱中症への対策も忘れずに乗り切りたい。
 

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。