「老後の暮らしにかかるお金は、子どもの世話にはならない」。多くの人がそう考えているでしょう。しかし実際は、生活費や介護に必要なお金を子ども世代に支えてもらう例が増えています。老後が長くなり、介護の期間も延びるにつれ、親の老後の費用負担が子世代の家計を圧迫する事態になることも。実際にあったケースを例にとり、親子が共倒れにならないための方法をお伝えします。前編では2つのケースを紹介します(イラスト=曽根愛)
田中家の場合

《雑費の計上忘れ》施設利用料以外にかかるお金

要介護認定を受けている母の希望は、「個室にお風呂が備え付けられている施設」に入居すること。希望に合った介護付き有料老人ホームの利用料は月30万円でしたが、母の貯金でまかなえると思い入居。

しかし実際には、利用料以外にも何かと細かいお金がかかり、計算してみると雑費は年間90万円に!! このままいくと3年で貯金が不足することに気づきました

 

見落とし金額⇒雑費90万円×3年
270万円

 

雑費の負担は想像以上に大きい

介護に関するトラブルで一番多いのが、介護総費用の間違った認識です。施設に入所する際、毎月の施設利用料だけ払えば大丈夫と思っている方が圧倒的ですが、これが問題。とりわけ注意したいのが、利用料とは別に毎月かかる雑費です。

なぜ田中さんはこのようなことになったのでしょうか。介護施設に入居しても、利用料以外に日用品代のほか、医療費、社会保険料、介護保険料、さらには空き家になった自宅の固定資産税など、年間約90万円の雑費が必要になります。

介護期間を数年と短く予想したこと、そして利用料以外の費用を計算していなかったことで、実際にかかる金額と大きな違いが出てきました。

親のお金でやりくりしていくためには、入居を検討する前に

(1)総介護費用(施設利用料+雑費)×介護年数をシミュレーションします。自宅を空き家にしておくなら、固定資産税や火災保険料、庭木の剪定代金なども計上すること。

(2)親の資産を一覧表にまとめます。預貯金、株、保険、不動産といった資産をすべて書き出して。

(3)親の資産から総介護費用を引いてマイナスに転じるならば、不動産の売却も検討しましょう。

そのうえで入居したい施設に、長期にわたって住むことが可能かどうかチェックすることをおすすめします。