(撮影:本社写真部)
「歳を重ねると、以前は簡単にできたことが億劫になります。高い場所に手が届きにくくなり、握力も弱くなる。そういう変化を見据え、できるだけ早く、自分が暮らしやすい仕組みをつくっていくことをおすすめします」そう話すのは、家事全般に豊富な知識を持つ阿部絢子さん。自宅を改造した際の工夫とものの整理について聞きました(構成=村瀬素子 撮影=本社写真部)

自分が老いることを想像していなかった

40代、50代は自分が老いることを具体的に想像できず、モノが多くても「まだ大丈夫」と、片づけを後回しにしがち。私自身がまさにそうでした。

消費生活アドバイザーとしてデパートに勤務していたため、新しい家電や便利グッズ、それに洋服やバッグも次々と買い求めてきましたから、1DKのわが家にはモノがあふれていたのです。「衣食住」の優先順位は「衣」が一番、次に「食」、「住」は最後でした。

そんな私の《始末》の歴史は、40代後半の海外ホームステイをきっかけに、住まいを整えることから始まりました。

 

和室の居間はくつろぎの場。コーヒーを飲んだり、新聞を読んだり。自分の体に合う高さにするため座卓は手作り。下を新聞の収納にして、ここに入る分だけを保管
和室の居間はくつろぎの場。コーヒーを飲んだり、新聞を読んだり。自分の体に合う高さにするため座卓は手作り。下を新聞の収納にして、ここに入る分だけを保管

 

スウェーデンの60代夫婦のご家庭に滞在したのですが、リビングにはテーブルと椅子だけが置かれていて、カーペットの模様が見えるスッキリとした空間がとても心地いい。料理に合わせた食器やテーブルクロスも素敵で、美意識やこだわりが感じられました。

ご家庭には介助が必要な80代のお母さんがいたのですが、彼女は日曜のブランチの時はきちんとおしゃれをして食卓につきます。《ハレ》と《ケ》 で、暮らしにメリハリをつけることをここで学んだのです。

2週間の滞在を終えてわが家に戻ると、自分の暮らしを変えたくなりました。本当の豊かさとはたくさんモノを持っていることではなく、自分が選んだモノだけに囲まれて心地よく暮らすこと。

そう気がついて、まず取り組んだのが、モノに塞がれて動きづらい台所の片づけ。自分にとって必要なモノ、好きなモノを厳選することに着手しました。「温め機能しか使っていない電子レンジは、蒸籠(せいろ)で代用できる。いらない!」と取捨選択。炊飯器もジューサーも手放し、台所はずいぶんスッキリしましたよ。