「周りにどう思われたいかではなくて、自分はどう生きていきたいのか。この指針がないと、人はいくつになっても、ずっと迷い続けてしまうのでしょう」(撮影:岡本隆史)
自身のファッションなど、華麗な日常を披露するインスタグラムのフォロワーは37万人以上。NHKの人気番組『趣味の園芸』やポッドキャストの料理番組『kiiのお帰りごはん』のレギュラーとして、豊富な知識や見事な腕前を披露し、新しい顔を次々と見せている氷川きよしさん。歌手としても、これまでの演歌からロックやポップスへと音楽のジャンルを広げています。挑戦を続ける原動力となっているものは――(撮影=岡本隆史 構成=平林理恵)

デビュー20年で「ボヘミアン・ラプソディ」を歌った

この世界に入って22年目になりました。いまになって、視界がぐんぐん広がっている感じがしています。これまでずっと演歌を歌ってきましたが、「男の生きざま」みたいなものをテーマにした楽曲も多く、私は歌の主人公になりきることでその世界を表現してきたのです。以前は、「歌の主人公のように自分も生きなければ!」と思い、男らしくあろうとさまざま努力もしました。髪を短く切ってみたりしてね。

でも、いまは違います。歌の主人公になりきって歌うけれど、現実の私は、お料理と園芸、ファッションが好きな「私」であり、歌の主人公とは別人格なのだとはっきり分けて考えられるようになりました。それからは、構えずに歌うことができている気がします。

2年前、デビュー20年を迎え、演歌歌手という枠を超えて自由に表現する機会に恵まれました。クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」の日本語版を歌ったのもこのころです。そのとき、「これからは自分の感性、あるがままの自分を大切にしていく」と心に決めて。自分を肯定したら、臆さず自己表現することができるようになり、同時に、世界が大きく柔らかく広がり始めたのを感じました。

周りにどう思われたいかではなくて、自分はどう生きていきたいのか。この指針がないと、人はいくつになっても、ずっと迷い続けてしまうのでしょう。40代でそれが見えてよかったと思います。