若者のプライベートな時間の重要度が上がったがゆえに、仕事に対する意識が低下した、というわけではなく――(写真提供:photoAC)
2016年、当時の安倍晋三内閣のもとで始まった働き方改革以後、あらためて注目を集めるようになった「ワークライフバランス」。特に1990年代後半から2000年代前半に生まれた若者たち、いわゆる「Z世代」は会社選びの際に重視しているイメージがありますが、金沢大学の金間教授は「大人が作った虚像にすぎない」と言います。積極的にワークライフバランスを取ろうとする時点で、『意識高い系』ではとのことで――。

若者が気にする「ワークライフバランス」

ワークライフバランスについて考えてみたい。いかにも今風の用語だが、解釈は世代や立場によってまったく異なる。

もちろんその趣旨は仕事とプライベートの適度な均衡を見つけようということだが、いい子症候群の若者たちにとってのワークライフバランスとは「がむしゃらに働いたり人並み以上に努力したりしないこと。あるいはその努力を軽視すること」というニュアンスを含む。

少し前に「最近の若者は課長にすらなりたくない」という統計データが広まったが、それはすでに時代遅れだ。

日本生産性本部の「新入社員『働くことの意識』調査」で、「どのポストまで昇進したいか」という質問に対し、10年前と比べ最も増加した答えが「どうでもよい」となる世の中だ。出世したくないのではなく、もはやどうでもいいのだ。