旧優生保護法(1948~96年)下で、障害者らに不妊手術が強制された問題を巡り、福井県内では少なくとも75人に手術が行われた。このうち加山さんのように「本人の同意なし」とみられるケースは36人で、全体の48%を占める。
旧法は3条で本人や配偶者、親族に遺伝性とされた身体疾患などがある場合、本人や配偶者の同意を得て不妊手術を行うと規定。12条では本人の同意がなくても、保護者の同意があれば強制手術を認めていた。県衛生統計年報によると、74年に12条による女性への手術が1件実施されていた。
2018年1月30日、知的障害を理由に不妊手術を強制された宮城県の60代女性が「重大な人権侵害なのに、立法による救済措置を怠った」として、国に1100万円の損害賠償を求める訴訟を仙台地裁に起こした。旧法を巡る国家賠償請求訴訟は初めてだった。
このニュースに触れ、加山さんは初めて裁判を考え、19年12月に大阪地裁に提訴した。提訴の理由について「お金がほしいわけじゃない。国に謝ってほしいだけなんです」と繰り返した。
連載「法の下の強制不妊~福井・声を上げる障害者」
強制不妊問題に関する国会の調査報告書では、全国で2万4993人に対し手術が行われた。福井県出身の被害者の証言を通し、法の下で何が行われてきたのか、実態に迫る。