え、創造しちゃった…? NASA、原始地球の環境で生命の素の生成に成功

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岡本玄介
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え、創造しちゃった…? NASA、原始地球の環境で生命の素の生成に成功
Image: NASA/JPL/Space Science Institute

さすがに生命は誕生しませんが、化学反応を確認しました。

生命はどのようにして始まったのでしょうか?その答えを探している科学者たちは、研究室にて初期の地球の海の状態を再現しています。

NASAの研究者たちは、特定の種類の鉄が水に溶けている環境が、地球の初期の海底では一般的であったかもしれず、また生命に変わる分子の生成を助けることが出来たことを示しました。これらの反応を理解することは、地球での生命の出現(潜在的にはエイリアンの命)が、土星と木星の月、その氷の下にある可能性を理解するのに重要かもしれない、というのです。

原始の地球環境を再構築

NASA、ジェット推進研究所(JPL)の宇宙生物学者、ローリー・バージ女史は声明文でこう書いています。

私たちは初期の地球や、もしかしたらそのたの惑星に似た地質学的な条件にて、海底にあるような穏和な環境下で起こった単純な反応から、アミノ酸やアルファヒドロキシ酸、乳酸のような分子を形成できることが示されました

海底に沿って岩石の煙突から海へ熱い流体を噴出させる熱水噴出口は、生命を生み出す化学反応のためのエネルギー源を提供するかもしれません。それらは温度、化学物質を生成し、化学反応で生命の根源を供給するかもしれないのです。

Video: Earth-Oceans Interaction Program/YouTube

JPLの科学者は、鉄、アンモニア、および単純な有機分子のピルビン酸塩を、地球初期の状態である無酸素を再現するため、溶存酸素(水に溶けている酸素)をすべて除去した水に溶かしてその環境を構築しました。

彼らは混合物の酸性度を調整するため、水酸化ナトリウムをゆっくりと加え、そのサンプルを室温または熱湯風呂にしばらく寝かせることにしました。また彼らは、鉄と水酸化ナトリウムを水に混ぜるのではなく、水酸化鉄を成長させた小型煙突を使った実験をしました。

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Image: NASA/JPL-Caltech/Flore

3日後

研究者らはすべての化学物質が水に溶解した状態で、ピルビン塩の一部はアミノ酸のひとつアラニンに変わり、また別のものは乳酸塩に変化していることを発見。それらの分量は温度、鉄原子に含まれる電子量、および水の酸性度に依存していました。しかし小型煙突を使った実験では、アラニンは形成されず。

しかし乳酸塩が形成された場合がありました。これについて研究者らは、おそらくもっともっと長い時間を与えれば、最後にはアラニンが形成されるだろう、とコメントしています。

結論

技術的には、研究者たちはビーカーの中で生命を生み出すことは出来ませんでした。それに我々は、研究室で再現された環境が本当に初期の地球、またはエウロパのような氷の下のソレと同じなのか、それにそのような方法で生命が誕生したのかどうか、知る術がありません。

ですが研究者たちはアミノ酸、つまり生命の中心的構成要素であるプロテインが、研究室でも作られることを見せてくれました。米国科学アカデミーが発行した、この研究の報告書では酸性度、化学的性質、および温度条件が正しいと提示されています。


おそらく、木星の月エウロパや土星の月エンケラドスの氷の下の環境は、ここに提示された条件のようだと考えられます。ですがもしそれが本当なら、エネルギー源を供給するための日光がなくても、生命が誕生している可能性はあります。この説を確かにするためには、いつか現地へ飛んで穴を掘って調べてみないといけません。

Source: YouTube via JPL, Redox and pH gradients drive amino acid synthesis in iron oxyhydroxide mineral systems