再生可能エネルギー企業エンビバ、元従業員に「環境に優しいエネルギーではない」と内部告発される

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再生可能エネルギー企業エンビバ、元従業員に「環境に優しいエネルギーではない」と内部告発される
Image: Shutterstock

世界最大級の木材バイオマスエネルギーを専門とする再生可能エネルギー企業、エンビバ(Enviva Inc)

米環境メディアMongabayは、匿名の元従業員からの告発に基づき、同社が広報資料に記載されている内容よりも環境に優しくない手法で木材チップを生産しているという記事を公開しました。

木質バイオマスは環境に良いはずなのに?

木質バイオマスを燃やして発電するバイオマスエネルギーは、理論上は再生可能な資源であるため、一見素晴らしいアイデアに見えます。しかしながら木材は重要な炭素吸収源であり、燃やすために森林を破壊すると、炭素を吸収する能力を回復するのに何年もかかるため、実際は害のほうが大きいという指摘があります。燃料のために木を切り倒すことで生まれる「炭素負債」を返上するには90年以上かかるという研究もあります。

そこでエンビバは、建材など他の製造工程で出た廃材を使うことで、森林破壊を防ぎ、製造工程を効率的にしていると主張しています。エンビバのウェブサイトのトップページには、「石炭をなくそう。もっと木を育てよう。気候変動に立ち向かおう」というメッセージがでかでかと書かれています。サイトには製品の持続可能性を記載するカテゴリーがあり、「製材所や伝統的な木材の副産物である価値の低い木材から作られたバイオマスを含む良いバイオマスの定義について」の記事もありますが、しかし。

エンビバは真実を公開していない?

Mongabayの記者Justin Catanosoによると、匿名の内部告発者は2022年初め、まだエンビバで働いているときにCatanoso記者に連絡し、木質ペレットに廃棄物を利用しているという同社の主張を 「ジョーク」と語ったそうです。

この告発者は春に2つのペレット工場の上級部長を辞職しましたが、「ペレットは木を100%使っている。廃材はほとんど利用しない。ペレットの密度が重要で、ガラクタではなく、木から丸ごと得ている」と語りました。

ここ数年でバイオマスエネルギーは爆発的に普及していて、再生可能エネルギーと称する米国南東部で生産されたペレットを使用するEUの薪炭工場が主な推進力となっています。Mongabayによると、2011年以降、エンビバだけでもこの地域に5つのペレット工場を建設、または拡張しており、10億ドル(約1306億円)以上稼いでいます

エンビバは、地球環境保護に取り組んでいる企業というイメージを作ろうとしていますが、それは製品の原料に関する誤解を正すことを意味しています。2022年のCBCニュースで、エンビバの広報担当者ドン・キャロウェイは、同社は木材に木の「幹」を使っていると述べた記者に対して、実際は「枝」「頂部」を使っていると訂正しました。

しかし、告発者は「巨大な木を丸ごといただいている。(その木が)どこから来たかは気にされていない。持続可能な森林管理などという概念はナンセンスだ。工場への木材の調達が追いつかなくなる」と述べています。

エンビバはこの告発を否定

エンビバ社は、このMongabayの記事に対して出した声明の中で以下のように述べています。

「我々は、元従業員による告発に悲しく思い問題視しています。この元従業員によって表明された内容は、エンビバの価値観を代表するものでも正確なものでもありません。この告発者の名前は明らかにされていませんが、我々はこの内容の説明に当てはまる従業員で、その告発について信頼できる、またが専門的な知識を持つものはいないと考えています」

本当に「環境に優しい」企業とは

仮にペレットを製造し輸出した場合、大量のCO2が発生しているという問題もありますし、南東部の木質ペレット工場は、黒人や褐色人種の居住区に工場を構え、そこでより多くの公害を発生させているという批判もあります。

Mongabayでも述べているように、然るべき規制と業界全体の基準がなければ、「環境に優しい」企業は、汚いやり方で逃げ続けるでしょう。

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