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「英語ではストレートに言わなきゃ」……それ、思い込みです プロが教える「英語とのつきあい方」

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ロッシェル・カップさん(左)と松井博さん

実はソフトさも求められる米国人とのコミュニケーション

カップさんが示した図には、一本の線上に国や地域を示す記号が並んでいた。左にいくほど、コミュニケーションが「対立をいとわない、直接的」で、右にいくほど「対立回避、間接的」というもの。

ロッシェル・カップさんが作った「コミュニケーション・スタイルと対立への姿勢」の図。一番左に位置するデンマークが最も「オープンで対立をいとわない、直接的」で、一番右に位置する東南アジア、国ではタイが「対立回避、間接的」という

左からデンマーク、ドイツ、オランダ。右からは東南アジア、アフリカ、中国。日本は真ん中よりやや右、イギリスはほぼ中央、米国は左寄りだが、極端に左というわけではない。つまり、東南アジアやアフリカは日本以上に間接的な物言いが好まれるし、米国人には何でもはっきり言えば良いということでもないようだ。「アメリカでもストレートさとナイスさを両立するのは難しい」とカップさんは話した。

「職場の部下は対等の存在」と心得る

カップさんによると、米国に来た日本人管理職にありがちなのが、部下にきつい言い方をすることだ。「日本だと上司が部下に厳しい言い方をするのは許されていますが、アメリカは平等が基本。部下にも丁寧に話すことが求められます。気をつけないと訴訟にもなりかねません」。米国のアップル本社などに勤めていた松井さんも「人前で叱ることもあり得ないですね」とつけ加えた。

コンサルタントとしての経験をもとに、日本と外国との文化の差について語るロッシェル・カップさん

「腹芸」「行間を読む」といった言葉にも示されるように、日本は「非言語的コミュニケーション」が重視される傾向が世界でも強い国だが、これもトラブルのもとだ。「日本人はあまりフィードバックをしない」。人事管理のコンサルタントとして活躍するカップさんは「日本人はあまり言葉にしないので、アメリカ人はどう評価されているのか分からず、不安になってしまうのです」。

ある日系企業から「部下を解雇したい」という相談を受け、会社側にその部下の評価を提出させると、オフィシャルな人事評価では常に最高評価をつけていた――そんな例もあったという。「アメリカでは『何が問題か』を指摘して、本人が改善する機会をつくるべきだとされています。フィードバックの欠如が多くの問題の原因になっているのです」

良いことも悪いことも相手に伝える

良い仕事をすれば褒める「ポジティブ・フィードバック」も必要だ。松井さんは「日本でポジティブ・フィードバックは本当にないので、意識的に言うようにしないとだめ。後で伝えようと思うと忘れるから、その場で言うこと」とアドバイスする。

自らの体験も交え、日本人が英語を学ぶうえで気をつけるべきことなどを語る松井博さん

英語の言い回しも、日本人が気をつけるべきことがある。カップさんは「日本人は『~しなければならない』を“must”でよく言いますが、命令的で、相手は驚きます。“You need to”や“It is required”のような客観的な言い方の方が良いですね」。松井さんも「アメリカでも基本的には部下に対して、そんなにストレートに言うことはない。言葉の選択ですね。日本人がよく使う“You had better~”は、すっごく強い言葉でなので使わない方がいい」

トランプ氏のツイートは「手本にしないで」

会場からは「米国の知人から『会社の格調を高く見せるために、フランス語なまりの英語を話す秘書を雇っているところもある』と聞いたが、そういうことはあるのか」との質問があった。これに対して、カップさんは「あります、あります」と即答。「アメリカ人は一般的にイギリス英語に憧れている。高校の時、友人のいとこがイギリスから来て人気者になっていた。実はそんなに性格は良くなかったけど……。フランスなまりの秘書がかっこいいから雇う、というのも想像できます。そういうの、ありますね」

カップさんと松井さんは、会場からの質問にも答えながら、それぞれの立場から英語への向き合い方を語った

フランスなまりはともかく、格調の高い英語を身につけるにはどうすれば良いのか。フィリピン・セブ島でビジネス英語の学校も経営する松井さんは「とにかく、たくさん読んで、たくさん聞くこと」。なかでも、「オバマ米前大統領のスピーチは本当に格調が高く、それでいてアメリカの中学生なら十分にわかる単語しか使っていない」と薦めた。するとカップさんは、「格調高い英語を学ぶのなら、トランプ大統領のツイートは読まないで」と、すかさず釘を刺した。