たった1球の甘い球を見逃さないスラッガーへ 井上朋也(花咲徳栄)【後編】
一昨年の夏に全国制覇を成し遂げた花咲徳栄(埼玉)で2年生ながら4番を任され、今春の埼玉大会で55得点(4試合)を挙げた超強力打線の中軸を担っている井上朋也選手。インタビュー後編ではオフシーズンの取り組み、そして夏への意気込みを語ってもらった。
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スラッガー・野村の教えを胸に。花咲徳栄の4番を邁進する井上朋也【前編】
打席での集中力も高めていく
ダッシュをする井上朋也選手(花咲徳栄)
このオフシーズンは1200gの重たいバットを使用。同時にスクワットやウエイトトレーニングに励むことでパワーと基礎体力を付けていった。ちなみに現在は180cm、81kgの体格だが「入学当時の78kgから夏の甲子園へ出場した時までに7kgほど増やしたのですが、体が思い通りに動かなくなってしまったので、今は81kgに落としています」と、体重管理はしっかりとやっているようだ。
そして、今春の埼玉大会では初戦の伊奈学園戦と3回戦の聖望学園戦でホームラン。「聖望学園との試合ではセンター方向へ打つことができて、感触は悪くなかったです」。だが、準々決勝の東農大三戦は5対7で敗れ、「東農大三の飯島(一徹)さんはスライダーが良くて、打線が上手くつながりませんでした。埼玉でもトップレベルの投手が相手だったので投打が噛み合わないと勝てないですし、自分も機能することができなかったと感じています。ただ、好投手と対戦できて良い経験になりました。夏はピッチャーのレベルがもっと上がっているはずなので自分も調子を上げていきたいです」と語っている。
その状態を向上させていくための練習だが、現在、バッティングではフォーム固めをする一方で微調整も行っている。「バットが下から出るクセがあるので、上から振るように直しています。ここに来て、やっと感覚が良い時に戻ってきたので、あとは夏の大会まで振って、振って、振るだけです。」
さらに、打席での集中力も高めていくつもりだ。「良いピッチャーになるほど甘い球は一球しか来ませんから、その一球を逃さないための練習を積み重ねています。花咲徳栄ではバッティングをする時、一球ごとに気づいたことを選手間で言い合うのですが、普段からそうやってみんなで声を掛け合うことで意識を高く持っていきたいですし、そうやって意識が高くなれば、技術が上達するスピードも早くなると思っています。」
長打力に打率や勝負強さを加えたバッターに
スイングをする井上朋也選手(花咲徳栄)
また、高校通算25本(6/21時点)を放っているホームランについては「元々は全然、長距離打者じゃなかったのが、中2の夏に突然、打球が飛ぶようになったので、その頃はホームランを打ちたくて仕方がありませんでした。でも、岩井監督から『ヒットの延長がホームラン』と言われていますし、ピッチャーもやっていた野村(佑希)さんから『ブンブン振り回してくる選手よりも、確実に芯に当ててくるバッターの方がイヤだ』とも聞いているので、今はチャンスの場面で1本ヒットを打つことが大事だと考えています。ただ、やっぱりホームランが出るとチーム全体が盛り上がるので、甘い球はしっかりと捉えていきたいです」と話しており、自慢の長打力に打率や勝負強さを加えたバッターを目指している。
なお、今春は三塁手を任せられていた守備位置については「昨年の9月からサードにコンバートされたのですが、今年の5月にライトへ戻ったので夏は外野手で出場することになると思います。内野手と外野手では送球の投げ方が変わってくるので、夏までにしっかりと練習しておきたいです」と右翼手へ再コンバートされる見込みだ。
この夏は埼玉大会5連覇が懸かる花咲徳栄。「プレッシャーはありますが、まずは勝利を最優先にして、たとえ自分の調子が悪くてもチームに貢献できるようにプレーするだけです」と、井上選手。本人からすると、昨夏から好調とは言えないシーズンが続いているが、それでも数字は残しているだけに、本調子となったら手が付けられないことになるだろう。世代を代表する右打者のバットに注目だ。
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文=大平明