新型コロナの後遺症が…どこでどんな治療が受けられるのか

新型コロナウィルス感染症そのものが軽症で回復しても、後遺症に悩まされるケースが….(C)日刊ゲンダイ

 第4波突入で感染者が再び急増する中、あらためて後遺症が懸念されている。新型コロナウイルス感染症そのものは軽症で回復した人でも、後遺症に悩まされるケースが多く報告され、コロナ後遺症の専門外来を設置する医療機関が増えている。万が一のときに備えておきたい。

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 国立国際医療研究センターの調査では、退院したコロナ患者の約76%が後遺症を訴えているという。

 症状は、咳や呼吸困難などの呼吸機能障害をはじめ、倦怠感、頭痛、関節痛、動悸、嗅覚・味覚障害、下痢、脱毛、不眠、食欲不振、不安や抑うつといった精神症状など多岐にわたる。

■後遺症は主に3つに大別される

 中等症から軽症のコロナ患者を受け入れている「江戸川病院」の加藤正二郎院長が言う。

「コロナ後遺症は主に3つに大別されます。炎症によって肺や嗅覚・味覚が障害されるケース、感染で生じた血管炎が要因でさまざまな症状が表れるケース、そして、メンタル不調を来すケースです。こうした後遺症がなぜ起こるのかは、まだはっきりわかっていませんが、一因として考えられているのが血栓です。新型コロナウイルスに感染した患者さんは血管内で血液の塊が生じる『血栓症』が起こっている割合が多く、できた血栓が体内のあちこちの微細な血管に詰まって血流が悪化することで、さまざまな後遺症につながると考えられます」

 江戸川病院にはコロナ後遺症の専門外来も設置されている。どんな治療が行われるのか。

「新型コロナウイルス感染症と診断され、発症から1カ月以上経過しているのに何らかの症状がある患者さんを診ています。ほかの医療機関で新型コロナの治療を行ったり、自宅療養で回復した患者さんも対象です。ただ、現段階では新型コロナの後遺症に対する明確な診断基準はなく、治療法も確立されていません。そのため、どこの医療機関も手探り状態なのが現状で、対症療法が中心になります。まず、再感染ではないかどうかを確認する抗原定量検査をお願いしています。体内にはもうウイルスがいないのに何らかの症状が出ている場合、血栓症の診断時などに使われる『Dダイマー』の測定を行います」(加藤院長)

【新型コロナ後遺症専門外来が設置されている主な医療機関】(C)日刊ゲンダイ
漢方薬やビタミン剤を使うケースも

 Dダイマーは、凝固反応によって生じた血栓が分解された際にできる最終的な分解産物で、体の中のどこかに血栓があると数値が高くなる。

 一般的に正常値は1.0(μg/ミリリットル)とされていて、10.0以上であればエコー検査を行うなどして、血管内に大きな血栓があるかどうかを調べる。

 新型コロナ感染症から回復して退院した後、倦怠感を訴えて来院した患者のDダイマーを計測すると、30だったケースもあったという。

「息切れや咳の症状が続いている患者さんの肺のレントゲン検査を行うと、新型コロナ感染症による炎症の影が残っているケースがあります。肺の組織が線維化して機能が落ちてしまうのです。肺には予備能がありますが、回復には限界があります。この段階でも悪化させない工夫がやはり必要です」(加藤院長)

 冒頭でも触れたが、新型コロナウイルスへの感染によって生じた血栓は、呼吸機能障害だけでなく、倦怠感、頭痛、食欲不振、めまい、動悸、息切れ、脱毛、嗅覚・味覚障害、精神症状といったさまざまな後遺症に関係しているといわれる。そのため新型コロナに罹患中から炎症をコントロールしたり、血栓の生成を防ぐ抗凝固療法などが各病院で試されている。

「また、倦怠感や疲労感などの不定愁訴に対して、漢方薬やビタミン剤を使うケースもあります。基本的には漢方なら気力と体力を補う十全大補湯、血行不良には桂枝茯苓丸、ビタミン剤は神経と血液細胞を回復させるビタミンB12をはじめとしたビタミンB群が使われます。不安や抑うつの後遺症がある患者さんに対し、少量の抗うつ薬を用いる医療機関もありますが、当院では漢方薬を使ったり、血流に問題があると考えられるケースでは抗凝固療法や運動療法を試みます」(加藤院長)

 全国に先駆けて新型コロナ後遺症外来を開設した「ヒラハタクリニック」の平畑光一院長も、「漢方薬を駆使して、治療に当たっている」という。

「漢方薬の処方は患者さんの状態や症状によって異なりますが、代表的なものでは、元気がない時は十全大補湯、頭痛には五苓散や七物降下湯、釣藤散、呉茱萸湯、咳には茯苓飲合半夏厚朴湯が使われます。コロナ後遺症の頭痛には、胃に負担をかける鎮痛薬より漢方の方が合うように思います」(平畑院長)

新型コロナウイルスに感染し退院後も体調不良が続く人を対象にしたリハビリ施設で検査を受ける元患者(=手前、伊ジェノバ)/(C)ゲッティ=共同 
後遺症専門外来を設置する医療機関はまだまだ少ない

 また、倦怠感には必須アミノ酸BCAAがいいといわれているため、患者に勧めているという。

「倦怠感は、首元が冷えると強く症状が出る患者さんが少なくないので、湯たんぽやネックウオーマーなどで体を温めることも推奨しています。脳を刺激してしまうので、就寝前のスマホ操作を控えてもらったり、頭痛を起こしやすいカフェイン、チーズ、ナッツを制限するなど、症状に応じた生活の注意点も細かく指導しています。漢方薬と生活習慣の改善で、1週間ほどで症状が楽になり、数カ月間で症状が完全になくなる人も少なくありません」(平畑院長)

 ヒラハタクリニックのデータによると、後遺症外来を訪れた患者のうち最も多いのが40代で、以下30代、20代と続く。重症化しやすい高齢者は少数で、「コロナの重症度と後遺症の重症度はまったく関係していない」というから、若年層も注意が必要だ。

 自分や家族が新型コロナに感染して後遺症が表れたときは早めの対策が重要になる。とはいえ、コロナ後遺症の専門外来を設置する医療機関はまだまだ少ないのが現状だ。

 別表を参考に、コロナ後遺症を専門に診てくれる医療機関へ相談したい。

 また、東京都では大塚病院、駒込病院、多摩総合医療センターの各都立病院に「コロナ後遺症相談窓口」が設置されている。

 新型コロナウイルス感染症と診断されてから1~2カ月以上が経過し何らかの症状がある人が対象で、患者支援センターの看護師らが後遺症について電話で相談に乗ってくれる。

 料金は無料で、原則本人が直接電話をかけて相談する。具体的な症状や体調に応じたアドバイス、医療機関への受診を支援してもらえるという。

 まずは感染予防を続けて新型コロナに感染しないことが何より重要だが、不幸にも感染してしまった場合に備え、後遺症対策もしっかり確認しておきたい。

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