NHK大河「光る君へ」まひろが新たに得た「書くこと」の意味とは…清少納言も本格始動!第16回みどころ

スポーツ報知
後宮で存在感を増す藤原伊周(三浦翔平)

 女優の吉高由里子が主演するNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜・後8時)の第16回「華の影」が21日に放送される。

 大石静氏が脚本を手がけるオリジナル作品。大河ドラマではきわめて珍しい平安時代の貴族社会を舞台に、1000年の時を超えるベストセラー「源氏物語」の作者・紫式部/まひろの生涯に迫る。

 14日に放送された第15回「おごれる者たち」では、関白になった道隆(井浦新)の独裁に拍車がかかっていくさまが描かれた。兼家(段田安則)の教育方針で美しく奇麗なものだけを見て育ってきた純粋培養の道隆。奇麗なものの裏側に、誰かの悲しみや憂いがあることには気づかないし、たとえ気づいたとしても道隆本人にとってはどうでもいい。その無邪気さが苦しく、そしておそろしい。

 一方で、自暴自棄になり公任(町田啓太)の家に居座るボロボロの道兼(玉置玲央)。迎えに来た道長(柄本佑)は「兄上にこの世で幸せになっていただきとうございます。兄上は変われます」と力強く諭す。奇麗なものだけを見させられてきた道隆も、劣等感を抱えながら汚れ仕事にまい進してきた道兼も、兼家からの一種の呪いをかけられながら生きざるを得なかった。筆者はかねて「光る君へ」の裏テーマは“呪いを解く物語”であると主張しているので、ここまでスーパーヒールであった道兼が今後どのような運命を選ぶのか、呪いが解ける日が来るのか、今後の描かれ方に注目している。

 道長と伊周(三浦翔平)は「大鏡」にも出てくる弓競(くら)べで一騎打ち。これまで野心を見せてこなかった道長が、生意気な伊周に挑発され、初めて核心を突いた言葉を矢とともに放つ。のちに道長の最大のライバルとなっていく伏線がしっかりと記されていく。

 まひろは、友人・さわ(野村麻純)と近江の石山寺を参詣。「蜻蛉(かげろう)日記」の作者である藤原道綱母こと寧子(財前直見)と遭遇する。平安文学界の大物2人のコラボレーションに胸がときめく。嫡妻になれず、やるせない感情をぶつけた「蜻蛉日記」は多くの人に読まれた。「私は日記を書くことで己の悲しみを救いました。あの方(兼家)との日々を日記に書き記し、公にすることで妾(しょう)の痛みを癒やしたのでございます」と語る寧子から、まひろは文人としての本質を感じ取る。この出会いがのちの「紫式部日記」「源氏物語」につながっていくような余韻があって、腹にストンと落ちてくる描写だ。

 また道綱が、まひろと間違い、さわに夜這い(よばい)をかけるシーンは「源氏物語」の「空蝉」をほうふつとさせる。相手が道綱というのも面白く、「蜻蛉日記」と「源氏物語」の世界観がドラマ上でも融合していく作劇のあざやかさも魅力的だ。

 第16回では、さわを思いがけず傷つけてしまったまひろが、落胆しながら石山寺から帰京。そのころ都では疫病がまん延しており、まひろから字を教わっていた少女・たね(竹澤咲子)が「悲田院に行った父母が戻ってこない」とSOSを求める。悲田院に向かったまひろが見たものは…という内容が繰り広げられる。コロナ禍を経験した現代の我々にとって、疫病の描写は人ごとではない。この時代だからこそ感じられる思いもあるだろう。

 一方で宮中では、伊周や弟の隆家(竜星涼)らが後宮を華やかに賑わせ続けている。一条天皇(塩野瑛久)のもとに姿を見せた詮子(吉田羊)とのやりとりは緊迫した内容に。なお、第15回で内裏へ出仕したききょう(ファーストサマーウイカ)は、定子(高畑充希)から「清少納言」の名を賜った。着々と「枕草子」モードの準備は整い始めている。今回の予告では、定子さまと清少納言の超有名エピソード「香炉峰の雪はいかがであろうか」も織り込まれていただけに、そのシーンの描かれ方にも注目だ。(NHK担当・宮路美穂)

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