藤井聡太叡王「負けました」新戦法「3三金型早繰り銀」選択も「失敗」…タイトル戦歴代最多17連勝ならず

スポーツ報知
タイトル戦の連勝が16で止まった藤井聡太叡王(日本将棋連盟提供)

 将棋の第9期叡王戦五番勝負第2局が20日、石川県加賀市の「アパリゾート佳水郷」で指された。後手の藤井聡太叡王(21)=竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖との八冠=が87手で挑戦者の伊藤匠七段(21)に敗れ、昨年10月の八冠制覇後、初のタイトル戦黒星を喫した。タイトル戦の連勝記録も16でストップ。大山康晴十五世名人が持つ歴代最多記録17にはあと1勝届かなかった。

 藤井が負けた。自玉に詰みがある局面まで指し続けた後、傍らの飲み物をゆっくりと飲み干した。天井を見上げ、「負けました」。タイトル戦では7か月ぶりに投了を告げると、「仕方がないかなと思っています」とうつむいた。

 今年度のテーマを「これまであまり指していない形も指すこと」としていた言葉通り、新戦法を繰り出した。10手目で伊藤の角を取らず、一度自陣で角を上がってワンクッション。「やってみたらどうなのか」と、公式戦で初めて「3三金型早繰り銀」を選択した。後手の藤井が先攻できる一方、自陣でも3段目に金が上がった形が、悪形ともされる戦法。「かなり早くそこ(研究)から外れてしまったので、認識不足だった」と振り返った。

 昼食休憩明けには「すでに自信がなかった」という藤井は、終盤について「3三金型の(玉形の)薄さが出る展開になってしまい失敗してるかなと思いました」と反省。一局を通しても我慢の時間が長く、「伊藤七段に手厚く受け止められ、最後はきっちりカウンターを合わせられてしまった」と肩を落とした。

 八冠制覇をかけて戦っていた23年8月の王座戦五番勝負第1局(対永瀬拓矢九段)の黒星の後、タイトル戦では前局まで16連勝。八冠制覇後は竜王、王将、棋王と無傷での防衛を果たし、1961~62年の大山十五世名人の記録に62年ぶりに並ぶことが期待されたが、一歩及ばなかった。同学年の伊藤にはプロ入り後、13戦目にして初めて敗れた。

 23、24日には千葉・成田市で名人戦第2局(対豊島将之九段)、5月2日には名古屋市で叡王戦第3局が控えている。「気を取り直して、しっかり準備していきたい」。八冠に休まる暇はない。

 ◆3三金型早繰り銀 後手が先に角を取らず、一度自分の角を3段目に上がり、先手に角を取らせてから3三同金としつつ、右銀を上がる後手番の作戦。後手に手得があり、後手番ながら先攻しやすい。新手や新構想に贈られる升田幸三賞を21年度に受賞している。

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