渡辺雄太、八村塁の進化語る「対戦相手にしたらすごく嫌な選手」NBAプレーオフは「塁がレイカーズのキープレイヤー」

スポーツ報知
渡辺雄太(WOWOW提供)

 世界最高峰のバスケットボールリーグNBAを放送・配信するWOWOWで、アンバサダーを務める渡辺雄太が、同社のインタビューに応じた。グリズリーズで日本人最長のNBA6シーズンを終え、来季から日本でプレーを表明した渡辺が、レイカーズ・八村塁への期待を含めたプレーオフの見どころ、6年間のNBAキャリア、日本代表メンバーとの交流など語った。

 ―NBAはプレーオフに突入。注目のチームは。

 「自分が所属していたサンズはやっぱり気になります。それからレイカーズやナゲッツも注目しています。特に、(レイカーズの八村)塁とは仲がいいので、彼がナゲッツ相手にどうプレーするのか気になります。東では、実際に戦い、プレーしているのを見ていると、ペイサーズは良いチームで面白いと感じました。そのペイサーズがバックス相手にどういうプレーするかすごい楽しみです。西も東も、どこが勝っても不思議じゃないというか、それぐらい今シーズンは混戦だったと思っているので、下位シードが上位シードを倒す可能性は十分あり得ると思っています。どのチームが勝ち上がってもおかしくないです」

 ―注目する選手は?

 「ペイサーズのタイリース・ハリバートンは当然注目です。彼中心のオフェンスがペイサーズの強みです。ハリバートンの縦パスや、彼の展開からペイサーズのリズムが生まれていると思うので、そういうのもすごい楽しみです。あとは、やはり塁ですね。彼は日本代表でも一緒にプレーしていますし、彼がどのようにプレーするのか楽しみにしています」

 ―八村選手が所属するレイカーズと実際に対戦してみて。

 「去年のプレーオフから3ポイントが格段に上手くなったと思います。元々シュートが上手な選手ではありましたが、どちらかというとドライブからのレイアップやミドルレンジを得意としていた中で、今シーズンから3ポイントもかなりの高確率で決めていて、ディフェンスする側としてすごくやりにくい感じでした。距離を詰めたら抜かれてしまいますし、元々フィジカルがすごいので体を当てながらドライブでフィニッシュまで持っていきますし、スペースを空けたら3ポイントを決められるし、対戦相手にしたらすごく嫌な選手でしたね」

 ―プレーオフでは八村選手にどんなプレーを期待?

 「彼らしいプレーをしてほしいと思っています。去年のレイカーズのプレーオフでの快進撃は塁がいたからというのは間違いないと思います。今シーズンはいきなり優勝候補のナゲッツと対戦ですが、レイカーズはナゲッツ相手に勝てるチームだと思うので、塁が二コラ・ヨキッチなどをしっかりおさえて、レイカーズが勝っていく姿を見たいです。塁がレイカーズのキープレイヤーと言っても過言ではないと思います」

 ―プレーオフを勝ち抜くために必要なことは?

 「フィジカル的にもメンタル的にもタフさが間違いなく必要になってくると思います。レギュラーシーズンと強度の違う中で、スケジュール的にはほとんど同じような感じで試合をこなしていくわけです。2か月くらいの間、心身ともにタフになっていかなければいけないと思います」

 ―ファイナルの予想

 「東はセルティックスが強いです。西は希望を込めてサンズを推したいと思います。サンズは第6シードではありますが、実力的にはもっと上でも良かったと思っています」

 ―自身のNBA6シーズンを振り返って

 「6シーズン本当に毎日バスケのことだけ考えて、自分がこの世界に残るために考えてやってこられたので、本当に充実した6年間だったと思っています。今改めて終わってみるとあっという間の6年間でした。もちろん辛い思いもしましたが、その分楽しい思いもさせてもらいました。色々いい経験をさせてもらえたので、自分にとっては一生忘れることのできない6年間です」

 ―2月にサンズから古巣のグリズリーズに移籍。どのように受け止めたか?

 「今回は自分がトレードをされる立場でしたが、今まで僕も過去5年間でチームメートがトレードされるのを見てきました。そういう意味で、ビジネスの世界は割り切ってやるしかないと思っていました。ただ、やっぱりいざ自分が当事者になってみると、すごくショックな部分はありました。優勝を目指してやっていた分、本当かという気持ちがありましたが、(トレード先が)グリズリーズだったので本当に良かったです。最後は僕がNBAを始めた地でNBAのキャリアを終えるというところも、なるべくしてなったのかなと思います」

 ―グリズリーズ移籍が決まった時、サンズのチームメートから言葉は?

 「選手のグループチャットがあるのですが、僕も含めたトレードされる選手に対して、これから別のチームでも頑張ってと皆に言ってもらいました」

 ―NBA6シーズンの中で、試合以外で印象に残っている出来事は?

 「プライベートはほとんど犠牲にした6年間だったので、プライベートで記憶に残っていることは全くありません。僕より能力や技術ある選手が1、2年でNBAを去っていくのをずっと見てきたので、その犠牲があったからこそ自分の能力で6年間やってこられたと思っています。もっとアメリカのことを知ることができたらと思いますが、それは自分が現役を引退した後でもできることなので、現役の間は仕事であるバスケットボールに全力投球することが自分らしいと思っています。本当にバスケのことだけを考えた6年間でした」

 ―NBA6シーズンにおける収穫と課題は?。

 「高校時代を振り返ってみても、元々シューターではありませんでした。アメリカに行って、シュート力を身につけないとこの世界で生き残っていけないというところから、3ポイント練習を一生懸命始めました。大学でもプロでも毎年ちょっとずつ結果が見えてきて、それが昨シーズンに本当に開花した感じでした。時間的にはかかりましたが、地道に努力すれば、世界最高峰のレベルでもちゃんと力を発揮できるということを知れたのは良かったです。ただ、技術的にもっと色々なことができないとNBAの世界でこれからさらに6年以上となってくると生き残っていけません。そういう意味では自分はまだまだ実力不足な部分があったのかなというふうに思っているので、これから日本に帰るにあたってさらに技術を身に着けて、日本では3&D以外のプレーも見せていけたらと思っています」

 ―今夏にはパリ五輪は、フランス、ドイツなど強豪と同組。個人的な目標は?

 「チームの目標はこの間、トム(・ホーバス・ヘッドコーチ)がベスト8を目指すと発表したので、今の僕たちにとっては良い目標だと思っています。ドイツもフランスも強豪ではあるのですが、正直言って、五輪でどの国と対戦してもどの組に入っても変わらないです。ただ、開催国のフランスと対戦できるのはうれしいです。お客さんも満員になると思うので、完全アウェー状態の中で五輪を戦えるのはすごい楽しみにしています」

 ―日本代表が五輪で勝ち進むために大切なことは?

 「対戦相手を考えるより、まず自分たちが練習でやっていることをいかに試合で出せるかが大事です。相手の方が強いのは分かっているので、玉砕覚悟で自分たちが得意とする速い展開から3ポイントを打っていって、それを高確率でしっかり決めることができれば、どの国相手でもしっかり戦えるのではないかと思っているので、めちゃくちゃ楽しみです」

 ―日本代表の富永啓生選手は、どのような選手か?

 「シュート力に関しては、すでにNBAの中でも上位クラスにいると思います。それぐらい彼のシュートはよく入ります。今シーズン、ネブラスカ大で彼の持っているものがより開花したと思っています。バスケットって結局いろいろ言われますけど、シュートが入る人はかなりチームから欲しがられます。そういった意味では、NBAでやっていけるものは持っていると思います。僕の時もそうでしたが、周囲から色々な意見が出てきます。僕は自分自身を信じてやってきた結果の6年なので、彼もあまり周りの声を気にせず頑張ってほしいです。日本に帰国するのを発表した後に彼とは連絡をとって、『お疲れ様でした』と言われましたけど、僕からは、『まずNBAのベンチに入って僕の6年間なんて軽く超えてくれ』と伝えました。チームメートとしても、友人としても、そしてNBAで多少なりともやってきた先輩としても彼のことをすごく応援しているので、僕はあまり色々言わずに彼がやっていることを信じて黙って応援していこうと思います」

 ―20日にSNSで来季は日本でプレーすることを発表。その後に日本代表のメンバーから連絡は?

 「何人かから連絡をもらいました。(富樫)勇樹とはそのずっと前に言っていたので、改めて連絡をもらいました。あと、河村(勇輝)からも連絡をもらいました。彼はすごく真面目と言うか、すごく良い性格をしていて、本当に良い子です。『自分なんかが雄太さんのことをすべて知っているかのように連絡するのはおこがましいかと思ったのですが』みたいな感じで始まったので、そんなこと気にせず『去年あれだけ一緒に頑張った仲なんだから』という感じで返しました。それで、『NBAでの6年間すごかったです、お疲れ様でした』と言ってもらえてうれしかったですね。昨年に日本代表でプレーして、本当にすごく楽しかったので、またこの夏にあのメンバーたちと一緒にプレーできると考えたら、それだけで今からワクワクします」

 ―来季はBリーグでプレー。日本のファンにどういったプレーを見せたい?

 「僕らしいプレーを見せていくのが一番だと思っています。あまり色々考えずに、僕が今まで経験してきたことを僕が今まで得てきたものをコートに出していきたいです。本当に楽しんでバスケットがやれたらと思っているので、お客さんが楽しんで、渡辺選手はいつも楽しそうにプレーしているね、みたいなことを言ってもらえるのが自分にとってはうれしくなると思っています」

 ―Bリーグに対する印象

 「すごい魅力のあるリーグで、人気も実力も上がってきています。僕もその中に今後入っていって、携わっていきたいです。日本のバスケを盛り上げたいのは、僕を含めて多分みんなが思っていることなので、これからは日本でしっかりやっていきたいと思っています」

 ―日本での生活は11年ぶり。やりたいことや行ってみたいところは?

 「日本に帰ってきても、僕の生活リズムは変わんないだろうと思っているので、基本的には引退するまで、バスケ漬けの生活になると思っています。日本食は本当に大好きなので、日本食がいつでも食べられる環境があるのは、自分の中で一番大きいですね」

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