ラグビー・田中史朗、泣きそうになりながら会場入り「一緒に戦えることが誇り」引退表明後、約1000件の連絡に感謝

スポーツ報知
涙をこらえ、ファンへの感謝を述べた田中史朗(写真左から2人目)は東葛メンバーらとの記念撮影では満面の笑み(カメラ・宮下 京香)

◆ラグビー ▽リーグワン順位決定戦 愛知17 ― 14東葛(28日・柏の葉)

 リーグワン2部の順位決定戦が行われ、レギュラーシーズン2位の東葛は、ホームで同3位の愛知に敗れた。4点リードの終盤に敵陣でラインアウトモールから押し込まれ、途中出場のFW藤浪輝人に逆転トライを許した。

 今季限りの現役引退を表明している元日本代表SHの田中史朗はベンチには入らなかったが、スタンドから見守った。「試合に負けたのは悔しい」と唇をかんだが、すぐにチームメートにかけより「すぐに切り替えて」と声をかけた。「僕自身はチームが勝つためにモチベーションを上げていくことをしたい」と話した。

 24日に17年間の現役生活に分かれを告げることを表明した。11年、15年、19年W杯で躍動した166センチの小さなレジェンドには、LINEやインスタグラムなどを通じて1000件以上の連絡が届いたという。「泣き虫フミさん」は、柏の葉への向かう途中に「なんの涙でしょうね」と泣きそうになりながら会場入り。ファンの姿を見たら「泣いたらあかん。笑顔を見て喜んでもらいたい」と言い聞かせて、アップから全力な姿勢を届けた。

 客席は「ふみさん」と愛称が書かれたプラカードを手に応援するファンの姿もあった。会場内でのグッズ売り場では、田中のアクリルキーホルダーやタオルが完売。最後のエールを届けようと3385人の観客が集った。

 試合後のグラウンドではFBレメキ・ロマノラヴァ主将がチームを代表して思いを述べた後、「田中史朗さん来て下さい。泣かないでくださいね」と急に振られ、田中もスタンドから下りてきてファンの前であいさつ。「たくさんの応援ありがとうございました。あまりしゃべりすぎると泣いてしまうので。皆さんと一緒に戦えていることが誇りですし、ここにいる後ろのメンバーも誇りに思います」と涙をこらえながらファンに直接感謝を伝えた。涙があふれそうになったが、チームメートに肩を抱かれ、「これからも日本のラグビーをよろしくお願いします」と言い切り、頭を下げた。

 39歳になってもハードワークを続けたレジェンドの姿は、チームメートの目にも焼き付いている。レメキは「フミさんはスーパーラグビーで優勝したし、15年W杯でも日本ラグビーを引っ張った。子供へのファンサービスもしっかりする。日本のラグビーの本当のレジェンド」と話した。東葛は次戦の5月6日に順位決定戦で浦安と対戦し、その後、1部との入れ替え戦2試合に臨む。引退までのカウントダウンは「3」。田中は「自分よりもチームが勝つこと。もちろん僕も試合に出る準備をする。最後は泣かずに終えたい」と笑顔で走りきる。

 ◆田中 史朗(たなか・ふみあき)1985年1月3日、京都市生まれ。39歳。伏見工、京産大を経て2007年に三洋電機(現・パナソニック、埼玉)入り。横浜(旧キヤノン)を経て21年から東葛(旧NEC)。13年~16年はハイランダーズでスーパーラグビーに参戦。日本代表は08年に初選出され、11、15、19年W杯出場。通算75キャップ。ポジションはSH。166センチ、72キロ。家族は妻と1男1女。

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