【大学野球】甲子園優勝の慶大ルーキーが鮮烈デビュー!「高校ではあまりヒーローになったことがないので」会見は苦手

スポーツ報知
延長12回1死、左越えに代打サヨナラ本塁打を放つ慶大・渡辺憩(カメラ・岡野 将大)

◆東京六大学野球 春季リーグ戦 第3週第3日 ▽慶大2×―1法大=延長12回=(29日・神宮)

 昨夏の甲子園で優勝した慶応(神奈川)の捕手で、慶大に進学したルーキー・渡辺憩が、法大戦で東京六大学リーグでは史上初の初打席代打サヨナラ本塁打を放った。1―1で引き分け寸前だった延長12回1死無走者から、真ん中高めの直球をレフトスタンドに運んだ。扇の要として慶応の107年ぶりの夏の日本一に貢献した実力を神宮でも見せつけ、慶大に2つ目の勝ち点をもたらした。

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 甘い直球を狙っていた。3ボール1ストライクのバッティングカウントで、持ち味のフルスイング。両手には確かな手応えがあった。それでも、神宮初打席の渡辺憩は必死に一塁方向へ駆けていた。「打った瞬間『おっ』という気持ちになりましたが、全力で走っていました」。入学して間もない1年生が初々しい笑顔を見せた。

 法大の左翼手がほとんど打球を追わない完璧なサヨナラアーチ。ベンチ入り25人の中で最も数字の大きな背番号「49」が、三塁ベースを回って先輩たちの歓喜の輪の中にのみ込まれていった。「まだ実感が湧かない。夢の中にいるような感じです」。高校通算14発。昨夏の甲子園では捕手としてチームを支え全5試合で安打を記録したが、「高校野球では、あまりヒーローになったことがないので(会見場は)経験してこなかった光景です」と、試合後の会見では意外な言葉を口にした。

 前日の法大との2回戦で初めてベンチ入り。試合の初めはブルペンで投球を受けていた。「体はそれほど大きくなくても(173センチ、70キロ)、パンチ力には自信があります。打席に立てるチャンスで打てるか打てないかは自分次第ですから、しっかり準備してきました」。覚悟を持って臨んだ初打席で東京六大学リーグに新たな歴史を刻み、堀井哲也監督(62)は「バッティングの状態が良かったので、突破口にと起用しましたが、まさかホームランとは…」とうなった。

 昨夏の慶応の優勝メンバーからは12人が慶大野球部の門をたたいた。その中で、これまでにベンチ入りを果たしたのは渡辺憩に丸田湊斗、福井直睦の3人。“美白王子”と称され人気者になった丸田は1番・中堅手で先発出場し、バントヒットに盗塁を決めるなど持ち味を発揮したが、渡辺憩も負けじと結果を残した。

 「上級生には4年間の積み重ねがあるが、フラットな目で見て追い抜く力を感じている。すごい1年生だと思っています」と指揮官。リーグ戦連覇を目指す慶大にとって、慶応のV戦士ルーキーは欠かせない戦力になっている。(浜木 俊介)

 ◆渡辺 憩(わたなべ・けい)2005年7月23日、千葉市生まれの18歳。小中台中では千葉市リトルシニアでプレーし全国大会出場。慶応では23年春夏の甲子園に出場した。高校通算14発。慶大野球部HPによれば、将来の夢は「お金持ち」。173センチ、70キロ。右投右打。

 【記録メモ】 ▼初打席代打サヨナラ本塁打 リーグ戦初出場の慶大1年生・渡辺憩が延長12回、代打で初打席サヨナラ本塁打(初打席アーチは31人目)。

 初打席代打本塁打は、15年春・法大2回戦の竹中良太(東大・1年)以来、15人目(1年生5人目)。サヨナラ、延長回ともに初だ。

 代打以外では、79年春に城石淳(明大)が、法大1回戦の12回に初打席でサヨナラ本塁打したが、出場2試合目。渡辺憩は初のデビュー戦の延長回、初打席代打サヨナラの劇弾になった。

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