高月彩良「よりダイナミックな泳ぎ目指し」3か月猛特訓、映画「ラストターン」で水泳選手役

スポーツ報知
「映画が公開されたら祖父母を劇場に招待したい」と語った高月彩良(カメラ・泉 貫太)

 女優・高月彩良(26)が、俳優・岩城滉一(73)主演の映画「ラストターン 福山健二71歳、二度目の青春」(10日公開・久万真路監督)でヒロインを務める。水泳選手役を演じるために約3か月間、泳ぎ込みを行うなど猛特訓。岩城との年の差の師弟関係を好演している。デビュー16年の現在地を“自分を育てる時”と捉え、「自然な魅力のある女優になりたい」と力強いまなざしで語った。(奥津 友希乃)

 デビュー以来、ショートヘアが高月のトレードマークだが、取材時は肩につく髪を触りながら「ショートの自分に飽きて伸ばしてみようかなって。ちょっとした試みです! でも、きっとまた短い髪の役が来るだろうから、すぐサヨナラしなきゃかな」と笑顔を浮かべる。クールなイメージとは裏腹に、親しみやすい人柄が魅力だ。

 演じるのは、水泳選手で水泳教室のインストラクターも務める岸本香里役。自身が小学5年で芸能界入りしたきっかけにも水泳が深く関わっていただけに、強い運命を感じた。

 「実は事務所にスカウトされたのが、地元のスイミングスクールに通う途中の道だったんです。(本作メガホンの)久万監督と昔ご一緒した時に『私、泳げるんです。水泳選手の役お願いします』って言ったらしくて、監督は『それが忘れられなかったからオファーしたんだ』と言ってくださって。うれしい限りです」

 岸本は国際大会を目指す競泳選手だったが、夢破れて将来の希望を失う。「夢だけを追って生きてきたかっこいい人間。私もオーディションに落ちたり、思うようなお芝居ができなかったり、夢を追う中で挫折は味わってきたので共感します」と日々の葛藤を重ねた。

 水泳は幼稚園年長から7年間習っていた。得意分野では?と聞けば、間髪入れずに「ただ泳げる、じゃ意味がない。ちゃんとプロに見えるような説得力を持たせたかった」と瞳の奥の力が増した。“女優魂”に突き動かされ、体づくりやフォーム矯正に取り組んだ。

 「出演が決まった日から約3か月間、週に3~4回、水泳指導の方についていただき特訓しました。記録会のシーンはドローンを使った本格的な撮影もあったので。先生からは『フォームに流行がある』と教えていただいた。私は腕を曲げて水をかく泳ぎ方だったけど、今は曲げずに水をかくスタイルがはやりらしくて。そのフォームを習得し、よりダイナミックな泳ぎを目指しました」

 主演の岩城とは本作が初共演。岩城演じるカナヅチの71歳・健二に、24歳の若手講師の岸本はそっけない態度をとる。小さなすれ違いや進歩を繰り返しながら変化していく“47歳差の師弟関係”を好演している。

 「岩城さんはとにかくワイルド全開でシビれました。それにおちゃめです。撮影中は冗談を言って和ませてくれたり、プールで関節技をきめてきておぼれかけたり…(笑い)。何が起きても動じない器の広さと、生きざまがにじみ出たお芝居を間近で受けて、岩城さんのようなかっこいい人生を歩みたいなと。憧れの人です」

 老いにより人生の最期を意識する高齢者と、夢をなくし人生を諦める若者。ピークを過ぎた自分を生きなければいけない、という共通点により2人は心を通わせていく。健二や岸本が新たな挑戦に向かって進む姿に、自身も感化された。

 「今までの自分は型にはまりすぎていた。小さなことからでもいいから変化を恐れずに進化したい。この見た目のイメージもあり、運動神経がいいと思われがちなんです。実際は水泳以外は全然だめ。まずはそのギャップを埋めたいと思い、キックボクシングに通い始めました。本格的なアクションも挑戦したいし、役の幅を広げていきたいです」

 今年でデビュー16年。当初はボーイッシュな印象から男子生徒役を演じることも。最近は妊婦役など、任される役も変化している。

 「頂く役も変わってきて、面白みも増しています。昔はキラキラした世界観に憧れていたけど、そうではない部分が人間って多いなって。ダークな役をやってみたいと心境も変化しています。今は悪女役をめちゃめちゃやってみたいんです」

 映像作品だけでなく、舞台では「呪術廻戦」「進撃の巨人」など大作への出演が続いている。

 「舞台はすごく好き。緊張しいなので、1、2か月稽古期間を持てるのがすごくいいんですよね。ご褒美のような感覚で舞台に立っています。本格的なミュージカルに挑戦したいので、今は歌を絶賛練習中です」

 劇中で岩城と認知症の妻役の宮崎美子の夫婦愛を描いたシーン。自然な息遣いと芝居に胸を打たれ、涙が止まらなかった。

 「とってもすてきでした。役というより、人間としての魅力や生きざまがにじんでいて。目指すべき場所だなと思いました。私は今まで演技のスキルとか表面的なことばかり考えていたけど、それよりも今は自分を育てる時期なのかなと。内面も美しい、自然な魅力のある女優になりたいです」。挑戦と吸収を繰り返し、輝きを放ってみせる。

 ◆高月 彩良(たかつき・さら)1997年8月10日、神奈川県生まれ。26歳。2008年、配信ドラマ「TSC 東京ガール」でデビュー。10年、ガールズユニット「bump.y」として歌手デビュー(14年卒業)。14年、アニメ映画「思い出のマーニー」で主人公の声を務め話題に。15年、「人狼ゲーム クレイジーフォックス」で映画初主演。主な作品は主演舞台「BASARA」、ドラマ「教場2」など。身長168センチ。

 ◆「ラストターン 福山健二71歳、二度目の青春」 認知症の妻(宮崎美子)と死別した健二(岩城)は、健康維持のため市のコミュニティークラブに参加する。そこで出会った社交的な橋本(田山涼成)の誘いで、水泳教室に通うことを決意。講師の岸本(高月)の指導を受け、新たな目標を見いだしていく。98分。

 DeNA牧推し ハマスタでの始球式が夢 〇…私生活ではプロ野球観戦が趣味で、DeNAのファン。休日は横浜スタジアムにも足を運んでおり「数年前までは(17~20年に中継ぎとして活躍した)スペンサー・パットン投手を応援してました」。現在は、牧秀悟内野手(26)が“推し”であることを告白。長い腕を大きく振りかぶるしぐさを見せ「いつかハマスタで始球式をやるのが夢です!」と瞳を輝かせた。

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