共に学ぶ「カフェ」開設 不登校経験した島本さん 理想の居場所へ一歩 茨城・つくば

自由に学べるカフェを開設した高校2年の島本美帆さん=つくば市上広岡

不登校を経験し、現在は通信制高校に通う茨城県つくば市の女子生徒が2日、化学を中心に好きな分野を持ち寄って共に学べるカフェ型の共有スペースを同市上広岡に開設した。江戸後期の蘭学(らんがく)者、緒方洪庵(1810~63年)が開設し、福沢諭吉ら日本の近代化を支えた人材が研さんを積んだ「適塾」をモデルに、子どもから大人まで学びたい人の居場所となることを目指す。

カフェを開いたのは同市の高校2年、島本美帆さん(17)。小学生の頃から大の化学好きで「日常に化学があることに気付くと世界の解像度が上がる」と魅力を語る。

不登校になったのは中学2年。頭痛などの体調不良が続いた。当時は理由が分からなかったが、今では「集団行動や同じことの繰り返しが苦手だった」と考えるようになった。

カフェ開設のきっかけになったのは、不登校中に母の真帆子さんが開いた子ども向け科学教室のサポート。「好きなものを教え合える場所をつくりたい」と開設を決意し、昨年には理検化学準2級を取得したり、子ども向けの化学教室の講師を務めたりして準備を進めてきた。

店名にした「fermi cafe(フェルミ カフェ)」の由来は、イタリアの科学者、エンリコ・フェルミ(1901~54年)。素粒子「ニュートリノ」命名や量子力学の「フェルミ粒子」などフェルミの功績が多いことから、カフェ利用者が「失敗を恐れず試行錯誤を重ねてほしい」との願いを込めた。

現代の「適塾」を目標に掲げる。科学や学ぶ意欲のある人々が集い、自由に学べる居場所となるのを目指す。

カフェはボードゲームショップ1階に開設され、教材の持ち込みは自由。ビーカーやフラスコなどの実験器具もあり、利用者同士で実験もできる。休日は化学実験教室や、他分野の講師による講話会なども予定。木-日の週4日開設し、3日はオープンパーティーを開く。

島本さんは「先生がゴールを決めて一方的に教えるのではなく、学び方を知る場にしたい」。理想の学びや実現に向けた歩みは始まったばかりだ。

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