グリーは1月末、Supercellのスマートフォン向けゲーム「クラッシュ・ロワイヤル」「クラッシュ・オブ・クラン」が特許権を侵害したとして、十数件の特許使用差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てていることを明らかにした。損害賠償を求める訴訟も別途提起しており、現在係争中という。
グリーの主張を受け、Supercellは「クラクラ」から主要機能「レイアウトエディタ」を削除すると発表した。だが「特許権侵害の事実はないと確信している」とのコメントも同時に出し、係争が解決した場合は同機能が復活することを示唆した。
これを受け、Twitterでは「クラクラ」ファンによるグリー批判が殺到。ハッシュタグ「#グリーを許すな」と共に「グリーは特許料が欲しいのか」「不買運動でグリーをつぶそう」などと投稿するユーザーが続出した。「クラクラを元に戻してほしい」との署名活動は現在も続いている。
グリーとSupercellの訴訟は現在どのような状況なのか。グリーはこうしたTwitterユーザーの動きをどう捉えているのか。2月2日行われた決算会見でグリー側に見解を聞いた。
取材に対し、グリー上級執行役員の秋山仁氏は「現在の係争の状況や決着時期のめどについての詳細は明かせない」と回答。侵害があったとされる特許の詳細についても「コメントを控える」と答えるにとどまった。
係争の着地点については、「ゲーム業界は、特許権の保持者同士が相互に特許を利用しあうクロスライセンスの世界。本来は、各社がそれぞれの特許権にしっかり対応し、お互いのアイデアを生かしてビジネスを行うのがベスト」(秋山氏)との見解を示した。
「ゲーム業界を盛り上げたいグリーとしては、クラクラの一部機能が使えないのは非常に残念。ゆくゆくはお互いに楽しいゲームを作り、ユーザーを楽しませたい」(秋山氏)という。
グリーは2009年、釣りゲームの著作権を侵害されたとしてディー・エヌ・エー(DeNA)にゲームの配信差し止めと損害賠償を求めた訴訟を提起したが、最高裁が侵害を認めず13年に敗訴している。
秋山氏に今回の訴訟の勝算を聞いたが、「コメントできない」とした。
「クラクラ」ファンによるTwitter上での批判について、秋山氏は「一連の投稿は沈静化している。業績やアクティブユーザー数に対する“不買運動”の影響はない」(同)とコメントした。
グリー広報にも話を聞いたところ、「グリーはゲーム開発・運営が本業。SNSなどで騒がれ、嫌がらせのような連絡も多く来たが、当社は特許料を得るためにSupercellを訴えたわけでは断じてない」と答えた。
またグリー広報は、Supercellの経営陣が17年12月末にフィンランドから来日し、話し合いの場を設けていたことも明らかにした。ただ「Supercellから対案が示されたが、合意に至ることはできなかった」という。
「グリーは、話し合った旨と内容は伏せておく方針だったが、先方が『レイアウトエディタ』削除を発表した際に一部を明らかにしたため、当社も対応せざるを得なくなった。1月末に係争の骨子を発表したのはそのためだ」(同)とし、溝の深さをうかがわせた。
グリーは「2社間で話し合った上で解決することが望ましいと考えており、引き続き対話による解決を目指す」としているが、泥沼化の様相を見せているこの特許紛争はどのような解決を迎えるのだろうか。
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