セブン‐イレブン・ジャパンが6月3日、100円コーヒーと親しまれていたレギュラーサイズのホットコーヒー、アイスコーヒーを110円に値上げした。同じく100円コーヒーを提供しているファミリーマート、ローソンも追随するかと思いきや、「当面価格は据え置き」としている。
「コンビニにはいれたてコーヒーをやめられない理由がある」──そう話すのは、流通小売り・サービス業のコンサルティングを約30年続けているムガマエの岩崎剛幸代表。そもそも、各社が100円コーヒーに力を入れるのはなぜか。セブンが値上げに踏み切った理由は何か。コンビニ業界に詳しい岩崎氏に聞いた。
岩崎氏は、コンビニがいれたてコーヒーに注力する理由の一つに「高い粗利率」を挙げる。
「セブンのコーヒーの原価率は46〜47%、粗利率は約53%といわれています。コンビニの平均粗利率は30%程度なので、コーヒーは高粗利のいい商品なのです。セブンの場合、年間10億杯のコーヒーを販売しており、売り上げ1000億円として粗利は530億円になります。100円でも十分もうかる、やめられない商品なのです」(岩崎氏)
さらに、いれたてコーヒーは新規客、リピート客の獲得両方に貢献するという。
「いれたてコーヒーは『コンビニは使わないがコーヒーだけは買う』といった新規客、女性客の獲得に貢献しています。時間帯を問わず売れるので、幅広い顧客を獲得できます。また、購入後2週間以内のリピート率が、弁当・総菜が5%、ロールケーキが10%に対して、いれたてコーヒーは約40%と、固定客の獲得にも効果的です。コロナ禍以降は、『近場の特定店舗をたびたび利用する』という人が増えています。コーヒーのような日々購入したくなる高頻度商品があると、固定客の利用頻度が上がり、売り上げが安定しやすくなります」(岩崎氏)
小売店の売り上げ=客数×客単価である。コンビニの場合は、客数を増やすことと、複数買いによる客単価の向上を強化してきた。
岩崎氏は「過去には店舗に誘導する仕組みとして、雑誌コーナーを窓際に設置したり、客単価アップを目的にレジ前商品(たばこ、肉まんやチロルチョコ、大福など)を拡充するなど、さまざまな取り組みをしてきました。その中でもいれたてコーヒーは、新規獲得、固定客の維持、高い粗利率など、複数の利点がある非常に貢献度の高い商品なのです」と話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング