DX人材の求人に既存社員が「高すぎる!」 反発を防ぐには、どうすればいいのかQ&A 総務・人事の相談所(1/3 ページ)

» 2022年08月29日 07時00分 公開
[神田靖美ITmedia]

連載:Q&A 総務・人事の相談所

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Q: 当社では、不足しているDX人材の採用に取り組むことになり、求人広告を掲載する予定です。想定給与は、既存社員を大幅に上回る額を用意しています。

 ただ、すでに長い間頑張ってくれているIT系の社員たちから、「中途の人にあれだけ高い給料を払うのは納得しかねる」と反発されないかどうか心配です。人事として、どう対応すれば良いでしょうか。

どうすれば良い?

A: 求人広告を出す前にまず社内で公募すれば良いでしょう。そうすれば不公平ではなくなります。またそのポストには特別な雇用形態を用意して、正社員としなければ、処遇の違いに納得してもらえるでしょう。

一種のバズワード? DX人材とは誰のことか

 DXは現在のビジネス界で最大の流行語といえましょう。もともとはスウェーデンのエリック・ストルタールマン教授が2004年に初めて使った言葉ですから、誕生してもう18年も経ちます。デジタル技術を利用して社会やビジネスを改革するという意味であり、特定の技術体系を表すわけではありません。

 TRONを開発したことで知られる坂村健・東京大学名誉教授は、DXについて「いわゆる『バズワード』であり、(中略)技術的には正確な定義はない、ビジネス的な流行り言葉である」と述べています(坂村健『DXとは何か』角川新書、21年)。

 バズワードであることを承知のうえであえて定義するとしたら、DX人材とは、最先端のコンピュータ科学を修得した人材というべきでしょう。日本ではそのような人材が希少です。アメリカ発のインターネットメディアである『USニュース&ワールド・レポート』は毎年「グローバル・ベスト・ユニバーシティー・ランキング」を発表しています。その中の「コンピュータ・サイエンス」分野で、日本の大学は87位に東京大学、188位に京都大学が入っています。200位以内はこの2校だけです。

 東京大学でもコンピュータ・サイエンスを学んでいる大学院生・学部生は少数です。大学院情報理工学系研究科にコンピュータ科学専攻があり、定員は143人です。学部では理学部に情報科学科があり、定員は70人です。これに対してアメリカのスタンフォード大学はコンピュータ・サイエンス分野で世界2位、全米1位であり、コンピュータ・サイエンス学科では1404人の学部生・大学院生が学んでいます(野口悠紀雄『円安が日本を滅ぼす』中央公論社、22年)。

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