リテール大革命

高級ホテルブッフェの残り、弁当で提供 2カ月で100キロの食品ロスを削減できたアプリ「TABETE」とは?「値下げ前提」に警鐘(1/4 ページ)

» 2023年01月16日 07時00分 公開
[大村果歩ITmedia]

 ホテル滞在において「朝食ブッフェ」を楽しみにしているという利用者は多い。“朝食でホテルを選ぶ”人が増えている今、ホテル各社は朝食ブッフェを差別化ポイントとし、品ぞろえやメニューを強化している。

 朝食ブッフェにおいて、昨今深刻な課題とされているのが「食品ロス」だ。大皿やトレーに料理をたっぷり盛り、利用者が好きなものを選ぶという形式ゆえに、「終了時間が近づいたら料理は新たに作らない」ということはなかなかできず、食品ロス削減へのアプローチは難しいとされていた。そんな中、あるホテルではフードシェアリングサービス「TABETE(タベテ)」を導入し、50%以上の食品ロス削減に成功したという。TABETEとはいったいどんなアプリなのか。

フードロス ホテルブッフェで50%食品ロス削減(三井不動産ホテルマネジメントで提供している弁当)

消費者が店を「レスキュー」 

 コークッキング(埼玉県東松山市)が運営する食品ロス削減アプリ「TABETE」は、安全に食べられるのに、廃棄の危機にある食べ物とユーザーをマッチングするアプリ。2018年にリリースし、現在はユーザー数約65万人、登録店舗数は都心部を中心に2500店舗を誇る。これまでに50万食以上の食品ロス削減を実現している。

フードロス 「TABETE」は、安全に食べられるのに、廃棄の危機にある食べ物とユーザーをマッチングする

 導入企業は「中食」と呼ばれるケーキやパンなど、陳列して並べる業態が多く、パン店が5〜6割、洋菓子店(ケーキを含む)が2割、ホテルが1割程度だという。

 商品は福袋形式、詰め合わせ形式が多い。価格は店舗側で利益が残り、納得感がある金額を設定しているという。通常と比較して2〜3割引きが多い。

フードロス TABETEの操作画面 

 利用方法は、(1)店舗が余った商品をTABETEで出品(2)ユーザーがアプリ上で購入したい商品を選択し、購入手続きと受け取り時間の設定・決済を行う(3)ユーザーが来店(4)本人確認を行い、商品の受け渡しを行う――という流れで、全てのやりとりがアプリ上で完結する。

フードロス TABETEの利用方法

 同社は初期費用で1店舗あたり1万円、その後は成果報酬型で、1食売れるごとに手数料を受け取ることで収益を得ている。

廃棄前提の中食にニーズあり

 事業責任者の篠田沙織COOは「リリース当初は外食店舗に重きを置いていました。しかし、外食は食品ロスはあるものの、食材や食べ残しであり、食べられる状態のものがほぼありませんでした」と話す。対して陳列しているパン、ケーキ、ホテルビュッフェは必ず廃棄が出る。

 「店によって差はありますが、中食では3〜5%を“捨てる見込み”として大目に生産しています。中食で1番怖いのは、お客さまがいらっしゃったのに品切れであること。機会損失になり、売り上げを損ねる要因になってしまいます。お客さまがいらっしゃる直前まで、人気商品や売れ筋商品は置いておかなくてはいけないのです」

 「余った商品は廃棄する店がほとんどですが、最近は飼料化に活用する店も。しかし、加工すればするほど二酸化炭素排出量が増えてしまうため、コスト的にも環境的にも、人間が食べられるものは人間が食べるのが1番いいと思います」(篠田さん)

フードロス TABETE
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