「TORQUEを出したらカシオさんが喜んでくれた」 京セラに聞く、タフネス携帯の歴史(1/3 ページ)

» 2019年08月12日 06時00分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 本誌でも既報の通り、京セラの高耐久ケータイとスマートフォンの世界累計出荷台数が1000万を突破した。同社は2008年から高耐久ケータイの投入を始め、北米、日本、中南米、欧州、韓国など世界各国で製品化してきた。

 今回は節目のタイミングということもあり、京セラがタフネス携帯の開発を始めた経緯、各ブランドの違い、耐久性能にまつわる京セラならではの技術、ユーザー属性などについて聞いた。

京セラ 京セラの本多弘明氏(右)と三輪智章氏(左)

 インタビューに応じていただいたのは、京セラ通信機器事業本部 通信技術部 通信戦略課 責任者の本多弘明氏と、通信技術部 商品企画部 商品企画課責任者の三輪智章氏。

 本多氏は2005年に三洋電機に入社し、海外製品の商品企画を担当。2008年からは京セラでタフネス携帯を中心に担当し、その後2011年からは国内外を含めた全体の事業戦略を担当している。

 三輪氏は2008年から海外向け携帯電話の商品設計を担当し、2014年に新規事業開発へ異動するものの、「アウトドア派の人材」で白羽の矢が立ち、2016年からはTORQUEやDURA Forceシリーズの商品企画を担当している。

三洋電機時代からタフネス携帯を開発していた

―― タフネス携帯を開発するに至った経緯を教えてください。

本多氏 もともと、三洋電機の時代から海外ではミリタリースタンダードといううたい方はしないまでも、北米を中心に乾燥地帯や寒い地域で、ある程度の耐久性を持つ無線機器の需要がありました。

 タフネスシリーズはCDMA 1Xのネットワークに対応した「SCP-7050」(2007年発売)から始まっています。MIL-STD 801Fという規格に準拠していました。

 2008年に入ると、三洋電機から携帯電話事業等を承継します。2008年4月1日以降に発売されたSANYOブランドの携帯端末は、京セラ製となりました。

 「PRO-700」ではCDMA EV-DOに対応したことから、プッシュトゥトークが業務用無線と同等の品質を担保できました。その後は「Taho」という端末も登場しました。米国カリフォルニア州とネバダ州の州境にある「タホ湖」からとった名前です。この製品からブランドごとの展開が始まりました。

京セラ 米国で発売された、初期の高耐久ケータイ。左から「SCP-7050」(2007年発売)、「PRO-700」(2008年発売)、「Taho」(2011年発売)
京セラ 左からカメラ付きの「DuraMax」(2011年発売)。カメラなしで両面スピーカー付きの「DuraCore/Shock」(2011年発売)、業務用バー端末の「DuraPlus」(2012年発売)、大音量スピーカーを拡張させた「DuraXT/Pro」(2012年発売)

―― 当時の耐久性はどの程度あったのでしょうか。

本多氏 項目数は今と比べると少ないですが、Dust(塵)/Vibration(振動)/Shock(衝撃や落下)の3項目に準拠していました。ちなみに初めて防水に対応したTahoの防水保護等級はIP57でした。

―― 米国ではどれくらいの割合でタフネスシリーズは使われていたのでしょうか。

三輪氏 フィーチャーフォン時代からスマートフォンが登場するぐらいまでは、割合で申し上げますと8:2(法人:個人)ぐらいの比率でしたね。そもそも、当時は「スマホが必要なの?」という認知でした。

本多氏 今ではスマートフォンが主流ですが、海外の法人様からは、いまだに折りたたみのケータイ端末が求められています。

三輪氏 極端に操作体系を嫌う方がいます。新に操作体系が異なる端末を導入して、教育し直すよりも従来ベースで導入した方が効率がいいのだと思います。

―― 当時のフィーチャーフォンと現在のスマートフォンとでは何か違いはありますか?

三輪氏 まず、三洋電機の時代は携帯電話の作り方が現在とは異なり、通信会社のネットワークと端末を共同で開発して通信会社に納めるというスタイルが主流でした。最近は当時と異なり、ベンダーさんが端末のみを通信会社に納めるスタイルが多いですね。

 フィーチャーフォンではヒンジがありましたが、スマートフォンではフラットな板形状になりました。スマートフォンでは重量が増えるので、どんな機能を盛り込むべきなのか、あるいはどんな機能をそぎ落とすのかなど、ある程度はバランスを取りながら設計しなければなりません。

 形状や設計などの他には、スマートフォン時代になると、アプリケーションが増えてきたので、フィーチャーフォンとは異なるアップグレードが行われてきました。例えば、オリジナルの機能をアプリで補うなどがあります。

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