無料会員募集中
.国際  投稿日:2021/5/10

仏で麻薬売買拠点の解体進む


Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

・フランスで麻薬の売買、消費が増加し、関連する犯罪も増加している

・住民が、麻薬使用者に対して攻撃するという事件も発生

・マクロン大統領は、麻薬売買取締り強化の姿勢を示した

 

5月8日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、5日にアヴィニョンにて、麻薬密売に関連した捜査中に警官エリック・マッソンさんが殺害されたことについて、「亡くなった警官の家族に連帯を示すと共に、治安部隊のバックアップを行っていく。」と述べた。

■ 麻薬売買の取り締まりを強化

現在フランスでは、麻薬売買の取り締まりを強化している。

「フランスは麻薬の消費国になっている。私たちはこのタブーを打ち破り、麻薬の消費とその悪影響について、全国的な議論を開始しなければならない」とし、現状把握のために、大統領自身が麻薬売買の拠点を訪れ、住民の話を直接聞きに行くなど、積極的に防止策を探そうと動いているところだ。

フランスには3952カ所の麻薬売買拠点があるとされており、警察は、現在、各拠点の捜査と解体にも取り組んでいる。今回アヴィニョンで亡くなった警官は、その捜査の最中に麻薬のディーラーに撃たれたのである。

今年に入って、1888人の麻薬の密売人が逮捕されているが、逮捕時に押収した武器が138件に上っており、この武器の数は去年より38%の増加している。ジェラルド・ダルマニン内務大臣は「麻薬密売者の武装化」が進んでいると述べており、麻薬売買の捜査は、より一層危険な仕事となってきていることを物語っているだろう。

麻薬の流通が増加しているのは、やはり儲かるからだ。麻薬密売での売り上げ額は、大麻で12億ユーロで、コカインで8億ユーロと、毎年30億ユーロをもたらしていると推定されている。2010年と比較しても、約10億ユーロは増加しているそうだ。

フランスは、ヨーロッパ一の大麻消費国でもあり、薬物使用は、1年の懲役と3750ユーロの罰金で罰せられるにもかかわらず、140万人の大麻の消費者がいる。またコカインに関しても65万人の消費者がおり、年間、360トンの大麻と、20〜25トンのコカインがフランスに入ってきているのだ。

こういった麻薬の流通が犯罪につながり、間接的に多くの人の身を危険にさらすことなる。

▲写真 麻薬捜査犬と憲兵隊のパトロール(フランス、ニーム)2020年4月6日 出典:Patrick Aventurier/Getty Images

■ 住民を悩ます麻薬ディーラーと薬物依存者

フランスの警察が、麻薬の各拠点を解体しようと努力していることから、各地で麻薬ディーラーから激しい抵抗にもあっている。リヨンやリールでは、対抗する麻薬ディーラーたちによる騒動が数日間続いた。

しかも、警察が各麻薬取引拠点を一掃したと思っても、実際は壊滅しきれていない場合も多い。「取り締まっても拠点が無くなるわけではない。単に場所を移動するだけだよ。キノコのようにそこら中から生えてくるんだ。」と住民は語る。

パリ、19区のスターリングラード広場では、毎晩広場を占拠する薬物使用者の群衆にひどく腹をたて、ついには住民が2日連続で麻薬使用者に向けて、花火で攻撃するに至った。19区のフランソワ・ダニョウ市長は、この行動に対して非難をするものの、そのような行動に至ることは理解できるとした。市長自身、助けを求める住民の姿を見てきているのだ。

この辺り一帯は、昔から麻薬ディーラーや薬物使用者が居たが、近年あたかも薬物関係者の聖地のようになった。ヨーロッパ中から人があつまり、毎晩この界隈には100人ほどの薬物関係者がいるのだと市長は語る。一年ほど前から、警察のパトロールを24時間体制でおこない、建物を改装したり、ベンチを取り除くなど環境対策にも取り組んできたが今だ解決には至っていない。

5月8日の夜中には、麻薬売買が行われていることで知られる南仏のフレジュスにあるガベル地区で街の破壊行為が行われた。50人ほどの若者により車が3台燃やされ、ショーウィンドウが17件破壊されたが、さらにかけつけた治安部隊に火炎瓶などを投げつけ、警官2人と地方警官1人が負傷した。

このように麻薬関連が疑われる破壊行動もフランス各地で起こっており、各地の市長から国レベルでの解決が要求されてきているのである。

そこで、フランス国内の犯罪に対抗するときには治安部隊に大きな危険があることは間違いないが、公共の秩序を守るためには突き進んでいかなくてはならないとし、マクロン大統領は、任期が終わるまでの2022年までに10000人の治安部隊の増員を予定している。現在すでに、4508人の警察官と1706人の憲兵、すなわち6214人の警察官が採用されており、今年さらに2000人を採用予定としている。

治安部隊の増強で、今後、どこまで状況が変わるかはわからないが、安全な暮らしを送れる日々がくることを願って、現在フランスが前進しようとしていることは間違いない。

-参考リンク-

A Paris, la tension monte entre riverains et « crackeux » de Stalingrad

Policier tué à Avignon : «La violence enfle dans notre société», reconnaît Emmanuel Macron

Quelle est l’ampleur du trafic de drogue en France ?.

トップ写真:EUサミットにてメディアに向かって語るマクロン大統領 出典:Thierry Monasse/Getty Images




この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."