エルサルバドル議会で、ビットコインを法定通貨とする法案が通った瞬間(写真:Agencia EFE/アフロ)

※第2回「実は地域おこしが始まりだったビットコインの法定通貨化計画」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65711)

 エルサルバドルのブケレ大統領は、6月5日にマイアミで開催されたカンファレンス「ビットコイン2021」向けの動画メッセージで、同国がビットコインを法定通貨にすると発表した(参考記事)。その後、6月9日には10条からなるビットコイン法がエルサルバドル議会の圧倒的支持(84人中62人が賛成)で可決された。同国の法律ルールに基づき、3カ月後に施行される。

 この動きに呼応するかのように、米ツイッターのドーシーCEOもツイッターにビットコインを使った資金決済機能を搭載すると発表した。

 世界中を驚かせた仮想通貨を法定通貨にするという同国の判断は、日本においては、仮想通貨ユーザーの賛成と、既存の世界で生きている人々の批判という紋切り型の反応に割れている。批判の中には、「問題外の外」などと発展途上国をバカにしたような辛辣なものもある。

 世界に目を向ければ、国際通貨基金(IMF)などがビットコインの法定通貨化によるマクロ経済への影響について懸念を表明している。米上院の銀行委員会も同様の懸念を指摘しているが、今のところ明確には批判してない。むしろ、世界の中央銀行の集まりである国際決済銀行(BIS)やテキサス州の銀行当局は、ビットコインを銀行が資産として持つことにOKを出している。

 海外では年金を含めたファンドや大手企業は既に資産を保有している。日本の交換業者であるビットフライヤーが日本円とビットコインのペア取引を始めると発表するなど、ビットコインは一般に受け入れられる方向に進んでいるように思われる。

 現状、エルサルバドルの判断については賛否両論があるが、どちらも(1)エルサルバドルがビットコインを法定通貨に決めようとした背景、(2)ビットコインには資金決済機能があるのかどうか、(3)ビットコインの持つ弱点をどう克服するか──を真剣に検討することを怠っているような印象を受ける。

 そこで、本稿では、前編として、(1)と(2)の半分について敷衍したい。(2)の半分というのは、法的側面の前に機能面に焦点を当てるという意味だ。