五輪ソフトボールで優勝を決めた翌7月28日、チームメンバーとともに記者会見に臨んだ後藤希友選手。胸には金メダルが輝いている(写真:アフロスポーツ)

 これはもう「暴挙」としか評しようがない。東京五輪で金メダルを獲得した女子ソフトボール日本代表・後藤希友選手の栄光に傷がつけられた。前代未聞の愚行を犯したのは、名古屋市の河村たかし市長である。

 日本のピンチを何度も好救援で救い、金メダル奪取に大きく貢献したヒロイン。その後藤選手が4日に出身地である名古屋市役所を表敬訪問し、13年越しの連覇達成を報告したところで“事件”は起こった。後藤選手に金メダルを首に掛けてもらって大はしゃぎした河村市長が手に取ってから「重たいな」とつぶやくと何を血迷ったのか、突然マスクを外して「がぶり」と噛みついてしまった。

「ごめんなさい」では済まされないレベル

 当たり前の話だが、後藤選手は事前に何も知らされていない。想定外の出来事にも何とか大人の対応を貫いていたものの、内心で計り知れないショックに見舞われていたことは言うまでもあるまい。周囲の市役所関係者も誰一人として、このようなハプニングが起こり得る可能性など予期していなかったことから大混乱に陥っている。今も名古屋市役所には抗議の電話やメールが殺到しており、その対応に追われているという。

 さらに呆れ果てたのは河村市長の釈明である。当人から「(メダルをかむ行為は)最大の愛情表現だった。迷惑をかけているのであれば、ごめんなさい」とのコメントが多くのメディアを通じて世に出されたが、かえって火に油を注ぐ格好となってしまったようだ。「最大の愛情表現」「迷惑をかけているのであれば」などと弁明にすらならない子供染みた詭弁と反省の色がまるで見えない態度を並べ、最後に「ごめんなさい」と相手を小ばかにするかのような軽い言葉で締めくくっている。他人の栄光を踏みにじる“重罪”に及んでいながらも一応の謝意を示しただけで幕引きを図ろうと画策しているのだから、開いた口が塞がらない。ネットやSNS上でも河村市長への批判が大炎上し、収束の見通しが立たない状況となっている。

こちらは「メダル噛みつき」のちょうど4年前の2017年8月4日、フィギュアスケートの浅田真央選手に名古屋市スポーツ特別功労賞を贈呈した河村たかし市長(写真:坂本 清/アフロ)