新庄剛志氏。サンフランシスコ・ジャイアンツ時代(写真:アフロ)

 超ド級、驚きの選考と評していいだろう。北海道日本ハムファイターズの来季新監督に新庄剛志氏が就任することになりそうな雲行きとなってきた。すでに複数のメディアによって新庄氏は「最有力候補」と報じられ、水面下において両者の話し合いは順調に進んでいる模様で、契約条件や脇を固めるコーチ人事等の調整がクリアされればクライマックスシリーズ(CS)前の来月上旬にも正式発表されるとみられる。

 新庄氏はタレント色が強いことから何かと「色物」として見られがちだが、その実像は知られていないだけで、誤解されているところも多分にある。根は実直な性格の持ち主で、かつ相当な努力家で、特に野球に対する考えや取り組み方は人一倍真剣かつ真面目だ。こうした本人の真摯な姿勢や言動等を含め「新庄剛志氏」の素顔と人間像を入念にリサーチし、日本ハム側は2004年から3シーズンに渡って球団の主力として歴史を築き上げたレジェンドOBの新庄氏を次期監督の最有力候補として白羽の矢を立てた。

「稲葉GM、新庄監督」体制の誕生か

 近年の日本ハムは危機的状況だ。2016年以降リーグVから遠ざかり、今季は3年連続Bクラスが確定しただけでなく2013年以来8年ぶりの最下位に沈む可能性も現実味を帯びている。さらに今年8月には同僚へ暴力行為を起こしたことがきっかけとなって巨人へ無償トレードされた元主砲・中田翔内野手のトラブルが勃発。また、今年4月の試合前の声出し時に選手間から若手選手への人種差別ともとられかねない問題発言がSNS上であらためて確認されるなどここ最近、日本ハムの球団のイメージダウンは深刻化の一途を辿っている。

 日本ハムは2012年から10年間に渡って指揮を執り続けた栗山英樹監督の今季限りでの退任を発表済み。栗山体制では2度のリーグ優勝と日本シリーズ制覇も1度成し遂げ、日本が世界に誇る二刀流・大谷翔平投手(ロサンゼルス・エンゼルス)を育成してMLBへ輩出するなど間違いなく数多くの功績を球史に残したが、一方で長期政権による前出のような「歪」も今季一気に生じてしまっていた。

 また、2023年3月には新球場エスコンフィールドHOKKAIDOが日本ハムの新たなホームグラウンドとして開業する。これらの観点から総合すれば、新指揮官は急落したマイナスイメージを完全払拭することが可能なインパクトのあるキャラクターで多くのファンを惹き付ける力があり、加えて瀕死の状態になってしまった日本ハムに新風を吹かせて蘇生させるカリスマ的存在の人物しかいない――。日本ハムが球団だけでなく本社サイドの意見も吸い上げた上で、あらゆる条件をクリアできる新監督の最有力候補が“最終兵器”とも言える新庄氏だったというわけだ。