2021年衆院選・選挙戦で車の中から手を振る日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)(2021年10月24日、写真:アフロ)

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

何もしていないので批判を浴びなかった岸田内閣

 今回の選挙ほど新聞各紙の世論調査結果が分かれたことはないのではないか。それにあまり当たりもしなかった。

 自民党の場合も、「単独過半数ぎりぎり」と「単独過半数は確保する」という分析に見方が分かれた。世論調査で岸田文雄内閣への支持率が低迷していたこともあって、自民党にとって決して有利な情勢での選挙ではなかった。

 また野党の立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組、社民党の4党が217の選挙区で候補者を一本化して選挙戦に臨んだこともあって、自民党の危機感は強まっていた。事実、東京8区では、石原伸晃元自民党幹事長、神奈川13区で甘利明幹事長、東京5区では、若宮健嗣万博相、千葉8区で桜田義孝元五輪相などが野党統一候補に敗れている。現職の自民党幹事長や現職の大臣も落選させたのだから、野党共闘が力を発揮したことは間違いない。ただこの流れは限定的なもので、大きな流れとはならなかった。

 石破茂元幹事長が、テレビのインタビューで「有権者はよく見ている」と語っていたが、その通りだと思う。野党統一候補に敗れた候補者は、傲慢であったり、何をしているのかまったく存在感がなかったり、これでよく大臣が務まるなと思うような人ばかりだ。落選は、自ら撒いた種の結果なのだ。