蔡英文総統(提供:Taiwan Presidential Office/AP/アフロ)

「蟻の一穴」という言葉がある。もともとは古代中国の哲学者として名高い韓非子(紀元前280年~233年)の「千丈の堤、蟻の穴をもって潰れる」(千丈之堤、以螻蟻之穴潰)の故事によっている。

『韓非子』を愛読し、本人を宰相にしようとしたのが秦の始皇帝で、始皇帝を尊敬し、その手法を真似たのが、中華人民共和国の「建国の父」毛沢東元主席。そして毛主席を崇拝しているのが、習近平主席だ。

 その習主席がいま、「蟻の一穴」に警戒感を強めている。「蟻」とは、ヨーロッパに攻勢をかける台湾(中華民国)のことだ。

台湾が欧州に開けたリトアニアという一穴

 台湾は今月、EU(欧州連合)の一角であるリトアニアに、「一穴」を開けた。11月18日、リトアニア政府が台湾に対し、「駐リトアニア台湾代表処」を設立することを許可したのだ。

 これまでは「一地域」を表す「台北代表処」だったから、「国家級」に格上げされたことになる。台湾の呉釗燮(ご・しょうしょう)外交部長によれば、「2003年のスロバキア以来、18年ぶりのヨーロッパにおける代表機関設置」だという。

 逆に、怒り心頭の中国は、リトアニアとの関係を、最低ラインの「代理公使級」に格下げしてしまった。外交部の報道官もたびたび、「リトアニア案件」を非難している。

11月29日には、訪台したリトアニア、エストニア、ラトビアのバルト3国の国会議員団と蔡英文総統が会談。中国外務省はこれに強く反発している(提供:Taiwan Presidential Office/AP/アフロ)