東京のPCR検査センターで女性の体温をチェックするスタッフ(2022年1月17日、写真:Abaca/アフロ)

(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

 新型コロナウイルスの「オミクロン変異株」の感染が広がっている。1月18日の検査陽性者数は約3万2000人と、コロナの流行が始まって最大になった。しかし重症者は20人、死者は10人。致死率は0.03%である。

 こういう状況をみて、感染症法上で最上位の分類になっているコロナの分類を季節性インフルエンザと同じ5類に変更すべきだという提案が、初めて自治体から出てきた。大阪市の松井市長や東京都の小池知事が政府に感染症法の見直しを求めたのだ。

突然消えた新型インフルエンザ

 新型コロナは、感染症法で「新型インフルエンザ等感染症」に分類されている。これは1類感染症(エボラ出血熱やペストなど)とほぼ同じ分類だ。全数検査で陽性者は無症状でも隔離され、原則入院だが治療費は無料である。

 エボラ出血熱の致死率は50~90%、ペストは30~60%という「死の病」である。致死率1%以下のコロナを1類扱いのままにしていることが、健康被害のほとんどない日本で混乱が続く原因である。

 それも2020年春にコロナの感染が始まったときはしょうがなかったが、日本のコロナ死亡率は、2年間の累計で約1万8000人。インフルは平年には1万人ぐらい死亡するので、それとほぼ同じである。オミクロン株はインフルより軽症で「ただの風邪」に近い。

 これは2009年に流行した新型インフル(H1N1)に似ている。このときもWHOがパンデミックと認定し、日本でも一斉休校などの措置がとられたが、新型インフルは、次の図のように冬(50週以降)になると消えてしまった。

インフルエンザの発生状況(国立感染症研究所)