「ドル高はインフレを緩和する効果がある」と述べたFRBのパウエル議長(写真:ロイター/アフロ)

(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

世界は通貨高競争の様相

 6月23日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長による金融政策に関する議会証言があった。ここで、パウエル議長が米国経済の景気後退リスクを認めたことが、話題となった。

 もっとも、景気後退リスクに言及した点は重要ながらも、今の米国経済は大量の失業者を出すことでしかサービス物価の抑制が望めない状況にある。そのため、GDP成長率の仕上がりが低成長なのか、それとも景気後退なのかという点は本質的な問題ではないだろう。

 むしろ、為替市場の観点から見れば、米国の利上げを背景とした為替市場におけるドル高に関して「インフレを緩和する効果がある」と明言したことの意味を重く捉えたい。

 もちろん、質問に対して事実を言ったまでという印象もあるが、「インフレと戦う姿勢は無条件」とまで述べるパウエル議長の発言は「インフレ抑制のためにはどのような手も使う」という意気込みが感じられる。ドル高も当然その手段の一つに入ってくると考えられる。

 世界を見渡せば、程度の差こそあれ、欧州中央銀行(ECB)高官(ビルロワドガロー仏中銀総裁)からも、実効ベースでのユーロ高がインフレ抑制に寄与する旨が語られている。かつて通貨安の必要性を主張し、無制限通貨売り介入までしていたスイス国立銀行(SNB)も利上げを敢行し、「必要ならば為替市場へ積極的に介入する」と通貨買い介入の構えも隠していない。

 今回、パウエル議長が通貨高によるインフレ抑制を明言したことで、世界が通貨高競争の様相を呈してくる可能性もある。

 こうした動きには、10年前と比べると隔世の感を覚える。