母乳中の抗体「子の脳に影響」 群馬大の研究グループが初確認、マウス実験で

記者会見する定方さん親子

 群馬大大学院医学系研究科の定方哲史准教授と息子で、医学部3年の瑞樹さんらの研究グループは、母乳に含まれる母親の抗体が、子の脳の発達と行動に影響を与えることを世界で初めて明らかにしたと発表した。今後、母乳の抗体濃度と子の社会性やIQなどの関係性を調べることで、授乳に関する啓発的な研究成果につながるという。

 瑞樹さんらによると、母親の抗体は妊娠中は胎盤経由で、出産後は母乳によって子どもに渡される。この抗体は、子の免疫力を高めることが従来から分かっていたが、子の脳に与える影響については分かっていなかった。

 今回マウスを使った研究により、母親の抗体が「ミクログリア細胞」という子の脳の細胞に結合し、結果として脳内の各種細胞の密度に影響を与えていることが判明。マウスの社会性行動についての実験でも、母親の抗体が子に渡されないマウスと正常のマウスを比較した結果、他の個体と接触する時間や行動量に有意な違いが見られた。

 ただ、結果を人に置き換えた場合、抗体が子に良い影響を与えるのか、悪い影響を与えるのかは分かっていないため、その評価が今後の課題という。例えば母乳に含まれる抗体が良い影響と判断ができれば、適切な濃度の抗体サプリメントが入った人工ミルクの製造につながる。悪い影響であれば、母親が病原性のウイルスに感染して抗体濃度が上昇している状態では、母乳を与えない方が子どもの脳の成長に良いという啓発的な研究成果を得られる。

 従来も、母乳による子育てと人工ミルクを比較し、子の発達に違いがあるという報告はあったが、どのような成分や因子が関係しているかは不明だった。定方准教授らは「抗体が脳に重要な影響を与えるファクターであると分かった。抗体という視点を加えてより詳しい解析ができる」と意義を説明した。

© 株式会社上毛新聞社