Entertainment

宇垣美里「そんな人生、絶対に息苦しいだけなのに…」暴走する“痛々しい人”に思うこと

 元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。 宇垣美里さん

超人的な能力を持つ人が集う小さなサーカス団の物語

 そんな宇垣さんが映画『フリークスアウト』についての思いを綴ります。
映画『フリークスアウト』

映画『フリークスアウト』

●作品あらすじ:第二次世界大戦下のイタリア。ユダヤ人の団長イスラエルが率いるたった5人の小さなサーカス団の仲間たちは、その超人的な特殊能力のせいで普通に暮らすことができず、まるで家族のように肩を寄せ合って暮らしてきました。 ですがイタリア国内でもナチス・ドイツの影響が強まる中、団長イスラエルが突然姿を消してしまい、仕事を求めてベルリン・サーカス団の門を叩きますが、そこの団長フランツは、裏でナチスのために特殊能力者を探して人体実験を繰り返す恐ろしい男でした…。 日本オマージュにあふれたデビュー作『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』が世界中で評価されたガブリエーレ・マイネッティ監督の新作を宇垣さんはどのように見たのでしょうか?(以下、宇垣美里さんの寄稿です)

特殊能力を持ったらヒーローになって戦わなきゃいけない?

映画『フリークスアウト』

『フリークスアウト』より

第二次世界大戦下のイタリア、超人サーカス団がナチス・ドイツと戦う!なんて聞くと、さも華々しく爽快なヒーロー作品を想像することだろう。血沸き肉躍る超能力戦……確かに血は噴き出ていたし肉はつぶれていたけれど、なんで特殊能力を持つからってヒーローになって戦わなきゃならないわけ? 小さなサーカス小屋で大道芸を見せていた5人のサーカス団は、空襲によって小屋も観客も失った。団長のイスラエルは皆でアメリカに脱出しようと試みるが、突然行方をくらませる。 家族のように身を寄せ合いここにしか居場所のなかった彼らは途方に暮れ、生き延びるための方法を探し始める。 電気を操る少女・マティルデ、アルビノの虫使い・チェンチオ、多毛症で怪力のフルヴィオ、磁石人間の道化師・マリオ。サーカスでの各々の特殊能力の見せ方がかっこいい。癖が強くポンコツながら、彼らが身内にだけ見せる仲間思いな様子にも一気に魅せられた。
物語に深みを持たせる悪役の描写も見事。ナチスに心酔するベルリン・サーカスの団長・フランツがマティルデたちに強い執着心を見せるのは“ふつう”に固執し、己の自分らしさを受け入れられていないから。暴走する姿が痛々しくて見てられない。そんな人生、絶対息苦しいだけなのに。
次のページ 
見どころはド派手なアクションだけでなく…
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ