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新型コロナウイルス感染症

2019年末頃より「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」が中国の武漢市を中心に出現し、世界中で患者数が増加しています。

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感染症ニュース

【感染症ニュース】2024年の劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者報告数が800人超え 溶連菌感染症(A群溶血性レンサ球菌咽頭炎)もまだまだ警戒が必要! 医師「再増加の可能性も」

国立感染症研究所の2024年第18週(4/29-5/5)速報データによると、この週の「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の報告数は18人。今年に入っての累積は801人となりました。去年の同時期(23年第18週)と比較すると、3倍近くの患者が報告されています。別名「人食いバクテリア」とも呼ばれ、患者の増加が話題になっています。国立感染症研究所によると、「国内での劇症型の典型的な症例は、1992年に初の報告がされており、毎年100-200人の患者を確認。このうち約30%が死亡しており、きわめて致死率の高い感染症である」としています。また、主な病原体はA群溶血性レンサ球菌であるとした上で、通常の溶連菌感染症の一般的な疾患は咽頭炎であり、その多くは小児が罹患する一方で、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は子供から大人まで広範囲の年齢層に発症するが、特に30歳以上の大人に多いのがひとつの特徴であるとも指摘しています。

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劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは?

「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」はA群溶血性レンサ球菌に引き起こされ、免疫不全などの重篤な基礎疾患をほとんど持っていないにもかかわらず突然発病する例があります。初期症状としては四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下などで、発病から病状の進行が非常に急激で、発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸逼迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)を引き起こし、ショック状態から死に至ることも多いとされています。近年では妊産婦の症例も報告されています。

溶連菌感染症(A群溶血性レンサ球菌咽頭炎)第18週は減少

また、同じA群溶血性レンサ球菌が原因の感染症が、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)です。国立感染症研究所の2024年第18週(4/29-5/5)速報データによると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の全国の定点当たり報告数は2.69。前週と比較すると約40%減少しました。しかし、大型連休中に医療機関が休診していることも、考慮する必要があります。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは?

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。主な症状としては、扁桃炎(へんとうえん)、伝染性膿痂疹(のうかしん)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎など、さまざまな症状を呈します。いずれの年齢でもかかりますが、学童期の子どもが最も多く、学校などでの集団感染、また家庭内できょうだいの間で感染することも多いとされています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、「第18週はゴールデンウイーク中のデータなので、例年多くの感染症で報告数が少なくなっています。溶連菌感染症は子どもの間で流行する感染症です。見極めは、必要ですが、ゴールデンウイーク明けに、再び患者数が増加するのではないかと見ています。去年の10月ごろから今までにない大きな流行が続いています。学校や幼稚園・保育園ではこの先も、夏休みに入るまで流行は続いていくのではないかと思います」と語っています。

溶連菌感染症と劇症型溶血性レンサ球菌感染症の関連は?

また安井医師は「溶連菌感染症と劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、同じ原因菌による感染症です。溶連菌感染症の大きな流行が、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者増加につながっていると考えられますので、両方の感染症についての注意が必要です」としています。

予防と治療

溶連菌感染症は、通常患者との接触を介してうつるため、ヒトとヒトとの接触の機会が増加するときに起こりやすく、家庭、学校、保育施設などでの集団感染が多いとされています。予防としては患者との濃厚接触を避けることが重要であるため、職員を含め体調が悪い場合には出勤・登園を控える必要があります。また、手洗いや手指消毒の励行や、マスクを用いた咳エチケット(咳やくしゃみを発する者が周囲への感染予防のためにマスクなどを着用すること)も効果が期待できます。治療についてはペニシリン系薬剤などの抗菌剤が有効です。症状が消えても菌を排出し続けるために、少なくとも10日間は確実に服用することが重要です。一方、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は傷口などからの感染もありますが、感染経路がわからないことも多く、突然発症し急激に症状が悪化します。体の具合が悪い時は無理をせず、早めに医療機関受診することが重要です。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年第18週(4/29-5/5)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは
子ども家庭庁:保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏
感染症ニュース一覧
予防接種における間違いを防ぐために

注意してほしい感染症

2024年5月期

RSウイルス感染症
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)
咽頭結膜熱
手足口病・ヘルパンギーナ

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ
咽頭結膜熱
溶連菌感染症
感染性胃腸炎
水痘
手足口病
伝染性紅斑
突発性発しん
百日咳
ヘルパンギーナ
流行性耳下腺炎
急性出血性結膜炎
流行性角結膜炎
マイコプラズマ肺炎
情報元:IDWR2024年第18週(2024年4月29日~2024年5月5日)

流行の様子

RSウイルス感染症 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 咽頭結膜熱 手足口病
 

RSウイルス感染症

報告数
北海道
159
青森
3
岩手
12
宮城
46
秋田
6
山形
12
福島
55
茨城
58
栃木
44
群馬
65
埼玉
222
千葉
128
東京
325
神奈川
197
新潟
80
富山
19
石川
21
福井
75
山梨
10
長野
22
岐阜
53
静岡
120
愛知
226
三重
121
滋賀
54
京都
96
大阪
365
兵庫
233
奈良
106
和歌山
95
鳥取
9
島根
3
岡山
17
広島
86
山口
142
徳島
27
香川
23
愛媛
61
高知
19
福岡
169
佐賀
50
長崎
19
熊本
45
大分
37
宮崎
38
鹿児島
90
沖縄
42
情報元:IDWR2024年第18週(2024年4月29日~2024年5月5日)
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

情報元:IDWR2024年第18週(2024年4月29日~2024年5月5日)
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

咽頭結膜熱

情報元:IDWR2024年第18週(2024年4月29日~2024年5月5日)
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

手足口病

情報元:IDWR2024年第18週(2024年4月29日~2024年5月5日)
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
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「水ぼうそう・帯状疱疹」ホントのところ

予防接種トピックス

感染症発生動向調査による小児科定点(約3,000か所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000か所)からの報告数に基づいたデータ解析によります。
感染症発生動向調査とは(厚生労働省ホームページより)
すこやか201 知ってアクション!感染症の予防

予防接種スケジュール

※国立感染症研究所サイト

インフルエンザ情報

情報元:日本医師会、日本薬剤師会、日本大学薬学部、(株)EMシステムズ
厚生労働省が4月12日に発表した「インフルエンザの発 生状況について」令和6年第14週(4/1-7)による と、全国のインフルエンザ定点当たり報告数は5.10。 去年の10月以来、久しぶりに10を下回りました。すべ ての都道・・・
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厚生労働省が4月12日に発表した「インフルエンザの発 生状況について」令和6年第14週(4/1-7)による と、全国のインフルエンザ定点当たり報告数は5.10。 去年の10月以来、久しぶりに10を下回りました。すべ ての都道府県で前週(第13週)より少なく、10を超え る県は山形11.47と新潟10.25だけです。感染症 に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の 安井良則医師は「インフルエンザの全国の定点当たり報告 数は、前週と比較しても半分以下となりました。しかし、 この第14週は学校や幼稚園・保育園などが春休みの時期 と重なっています。インフルエンザ定点は小児科が多いた め、長い休みの影響を受けます。流行の傾向は次の15週 16週の数字を見ないとわからないでしょう。通常、イン フルエンザは短期間に大きな流行の山を作ります。今シー ズンは爆発的な流行はなかったものの、患者は長期に渡り 出続けていたため、患者数はこの10年で最多となってい ます。本来であれば夏頃はインフルエンザの患者はほとん ど出ないのですが、今後も要警戒だと思っています」
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