【シリーズ新型コロナ後遺症】罹患後症状40-50代は特に注意 患者によりそう臨床医がかける言葉とは?【第一回】
2023年1月10日更新
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広島市立広島市民病院松村俊二総合診療科部長
広島市立広島市民病院松村俊二総合診療科部長
 2019年12月に中国・武漢で初めて感染が確認されて以来、世界中で猛威を振るってきた新型コロナウイルス。約3年の間にマスク着用や手指消毒、ワクチン、飲み薬など感染の予防や罹患時の対策が少しずつ確立されてきました。

 一方、新たな問題として浮上してきたのが罹患後症状、いわゆる後遺症です。WHO(世界保健機構)は後遺症について「新型コロナウイルスに罹患した人にみられ、少なくとも2カ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないものである」と定めています。

 広島県医師会が9月に発行した「救急小冊子 知っておきたい新型コロナウイルス感染症の後遺症」 を執筆された広島市立広島市民病院の松村俊二・総合診療科部長に新型コロナウイルスの後遺症についてうかがいました。

ウイルスによる体の炎症や臓器障害が原因

Q後遺症が起きる原因はなんですか

Aテレビのニュースなどに登場する新型コロナウイルスの写真を見ると、表面に無数の突起が並んでいるのが分かります。この突起が人間の細胞の表面にある特定のタンパク質と結合すると、ウイルスが細胞に侵入して感染します。ウイルスが侵入すると、1)細胞そのものが破壊されたり、2)血栓を作って循環が悪くなったり、3)炎症を起こした部位からサイトカインという炎症性物質が血液中に放出され、さまざまな臓器に損傷を与えます。

 この特定のタンパク質は鼻や口の粘膜のほか、肺や脳、心臓、小腸などあらゆる臓器に存在するため、症状も全身に現れます。この症状が重症だったり長引いたりした時に、後遺症が現れると考えられます。

適切な治療で後遺症のほとんどは治ります


Q代表的な症状にはどんなものがありますか。

A代表的な症状は、以下に挙げる主に4種類に分類されます。
・呼吸器症状:咳、喀痰、息切れ、胸痛
・全身症状:倦怠感、関節痛、筋肉痛
・精神・神経症状:記憶障害、集中力低下、不眠、頭痛、抑うつ
・その他:嗅覚・味覚障害、動悸、下痢、腹痛など

 さらに、感染時と同じ症状が長く続く場合と、いったん症状が改善した後に症状が現れる場合の両方があります。

Q後遺症はどれぐらいの期間持続しますか

A国立国際医療研究センターが2020年2月から2021年3月にアルファ株、デルタ株に感染し、回復した457人を対象に行った調査があります。その結果によると、発症時もしくは診断時から6ヵ月経過時点で26.3%、12ヵ月経過時点で8.8%の人で何らかの後遺症が残っていました。ほとんどの場合、1年以内に症状は改善すると思われます。

 後遺症というのは、本来事故などによるケガで回復の見込みがないものを言います。コロナ後遺症は完治しないものではありませんが、分かりにくいので一般向けの冊子などでは「後遺症」と呼んでいます。厚生労働省は後遺症とは言わずに「罹患後症状」という言葉を使っています。

 先の見えない状態は患者さんにとってつらく心配なことです。一生治らないのかと心配している人が多いので、診察の際にはまず「時間はかかるかも知れませんが、必ず良くなりますよ」と声をかけて安心してもらうように心がけています。

Q年齢や性別で後遺症の現れ方に差はありますか

A広島県が2020年3月から2021年10月に行ったアンケート調査(回答954人)では、後遺症の割合が最も高いのは40~50歳代で52~54%、次いで60歳代以上で30~39%、10歳代では7~16%、20~30歳代では25~30%でした。性別による差はありませんでした。

 ほかに、感染したときに重症であるほど後遺症が起こる割合が高いことや、感染時の症状が五つ以上あったり、肥満や基礎疾患がある人、喫煙者、ワクチン未接種者においても後遺症の割合が高いことが分かりました。

 詳しくは、広島県医師会が2022年9月に発行した「救急小冊子 知っておきたい新型コロナウイルス感染症の後遺症」をご覧下さい。

まとめ

 コロナ後遺症(罹患後症状)に苦しむ方もいらっしゃると思います。

 松村医師が患者さんに掛ける「時間はかかるかも知れませんが、必ず良くなりますよ」との言葉に、安心された方も、多いことでしょう。

 「コロナ後遺症相談窓口」を設置している地方自治体もあります。

 罹患後症状に不安のある方は、かかりつけ医や行政の設置している窓口に、一度、相談してみてはいかがでしょうか。

 『感染症・予防接種ナビ』では、今後も、シリーズ形式で、コロナ後遺症について、お伝えします。

取材:広島市立広島市民病院の松村俊二・総合診療科部長
参照:救急小冊子 知っておきたい新型コロナウイルス感染症の後遺症(広島県医師会)

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