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できたての豚まん。おいしそうな匂いがぱっと広がる=神戸市中央区元町通2、老祥記
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できたての豚まん。おいしそうな匂いがぱっと広がる=神戸市中央区元町通2、老祥記
熱々の豚まんが、飛ぶように売れていく=神戸市中央区元町通2、老祥記
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熱々の豚まんが、飛ぶように売れていく=神戸市中央区元町通2、老祥記
お昼時には、客がずらりと列をなす=神戸市中央区元町通2、老祥記
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お昼時には、客がずらりと列をなす=神戸市中央区元町通2、老祥記
具材を手早く生地に包み込む。みるみる仕上がっていく様子は、まさに職人技=神戸市中央区元町通2、老祥記
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具材を手早く生地に包み込む。みるみる仕上がっていく様子は、まさに職人技=神戸市中央区元町通2、老祥記
持ち帰り用のオリジナルキャラクターがプリントされた袋=神戸市中央区元町通2、老祥記
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持ち帰り用のオリジナルキャラクターがプリントされた袋=神戸市中央区元町通2、老祥記

 関東から引っ越し、神戸で暮らし始めて約4カ月。ふと、南京町のことが頭に浮かんだ。学生時代に観光で訪れたことがあるが、転居してからは一度も足を運んでいない。あの時は、中国風の街並みに圧倒されたというのに…。早速、緊急事態宣言下の南京町へ。豚まんの名店「老祥記」(神戸市中央区元町通2)に密着した。(斎藤 誉)

 ◆午前10時

 まずは、老祥記3代目店主の曹英生さん(64)にごあいさつ。曹さんによると同店は、南京町で1915年から豚まんを売る老舗。「日本初の豚まんじゅう専門店」で、「豚饅頭(まんじゅう)」という言葉は創始者らがつけたそうだ。

 午前10時、開店。調理場では、既に従業員約10人が忙しそうに動き回っていた。店の朝は早い。8時には仕込みが始まるという。

 嗅いだことのない、どこか優しい香りが漂う。「何の匂いだろう」。曹さんに聞くと「生地に使う麹(こうじ)の香りです」と教えてくれた。

 「5秒前、4、3、2、1」と、カウントダウンの声が響く。蒸し器には7分にセットされたタイマーがあり、最後の「1」と同時に、従業員がせいろのふたを上げる。その度にぼわっと湯気が広がり、熱々の豚まんが顔をのぞかせた。

 ◆午前11時

 来店客は開店から絶えることがない。1人で100個以上の注文もあり、調理場に活気のある声が飛ぶ。

 その傍らで、蒸し上がった豚まんが箱に入れられ、次々と積み上げられていく。百貨店に納品するという。その数1500個。その後、別の百貨店向けにも千個。合わせて2500個。朝から一体、何回蒸したのだろうか…。

 店の繁忙がピークを迎える前にと、豚まん10個を買い求め、南京町広場のベンチでいただいた。

 実は、老祥記の豚まんを食べるのは初めて。口に入れる。うまい。肉の濃厚なうま味に、塩味が程よい。あっという間に平らげてしまった。多くの人が行列を作るのもうなずける。

 ◆正午

 お昼時が近づくにつれ、客の列が長くなる。正午を過ぎると、南京町広場にまで伸びていた。

 行列を眺めながら「今日はお客さん多いんですか?」と尋ねた。すると、「いや、今日は暇な方なんです」と店長の有常幸司さん(47)。遠方からの観光客が減り、売り上げはコロナ禍前の7割未満にとどまるという。神戸の一大観光地である南京町で、有数の集客力を持つ老祥記にも、新型コロナウイルスの影響は及んでいた。

 ◆午後3時

 客足は午後2時半ごろに一段落し、南京町商店街振興組合の理事長を務める曹さんは総会に向かった。コロナ禍で観光客が減った南京町を歩き、曹さんの言葉を思い起こした。

 曹さんによると、観光客頼みの経営からの脱却は、南京町全体にとって課題という。「昨年のGo To キャンペーンでお客さんが戻りかけたが、結局は厳しい状態が続いている。若いお客さんは増えたけど、前みたいに幅広い層に食べてほしい」

 老祥記ほか南京町の各店舗は今、会員制交流サイト(SNS)からの発信に力を入れている。「前向きに、新しい南京町を模索している」と曹さんは語る。

 夕刻、店頭で12個を買い求める男性に声を掛けた。神戸市東灘区の男性(69)。「月3回ほど、孫のおやつに買ってます」。老祥記は40年以上、学生時代から慣れ親しんだ青春の味だと、笑顔で話した。

 コロナを経て「地元からも愛される店を強く意識し始めた」という曹さん。その下地は既にできあがっているのではないか。コロナ禍が収束し、以前の活気が早く戻りますように-と願いつつ、店を後にした。

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