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「PROXES」のアンバサダーになった木下選手がニュル24時間に参戦

 国内外で数多くのレース出走経験を持ち、「ニュルブルクリンク24時間耐久レース(以下、ニュル24h)」で日本人最高位である総合5位の記録も持つ木下隆之選手。

 そんな木下選手が2023年1月、トーヨータイヤとアンバサダー契約を締結し、グローバルフラッグシップブランド「PROXES(プロクセス)」のブランドアンバサダーとなりました。そして、トーヨータイヤのサポートドライバーとして、2023年5月に開催されるニュル24hに、PROXES(プロクセス)を装着したマシンで参戦します。

  • トーヨータイヤは2023年も「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」および年間を通じたシリーズ戦「NLS耐久シリーズ」に「PROXES」の専用レースタイヤを装着した車両で参戦する

 木下選手がトーヨータイヤとのコンビで本格的にサーキットに挑むのは、2009年から2010年にかけて、同社(当時は東洋ゴム工業)技術部が主体となって行われた開発プロジェクト以来となります。

「そのプロジェクトではポルシェに乗り、セパン(マレーシア)やニュルブルクリンクなど、あえて海外の厳しいレースを選んで参戦しました。正直、なんでこんな激戦区に乗り込むのかって思いましたね(苦笑)」(木下選手)

 トーヨータイヤはその後、サーキットレースから一時撤退、木下選手とのコンビもいったんは解消します。しかし2020年、トーヨータイヤは、再びサーキットに帰ってきました。その舞台はニュル24hでした。

「やっぱりタイヤの開発にはサーキットでの経験が不可欠だと考えたんでしょうね。ニュル24hには、市販タイヤの技術にもつながるさまざまな要素が詰まっています。ボクは、コロナ禍での中断はあったものの、1990年からほぼずっとニュル24hに挑戦を続けてきた“変わり者”でした(笑)。だから今回、お声がけいただいたんだと思います。

今回の件について、トーヨータイヤからの最初のコンタクトは2022年の夏ごろです。その年の『ニュルブルクリンク耐久シリーズ(以下、NLS)』に“お試し”という形で、(トーヨータイヤのタイヤを装着したマシンで)スポット参戦し、その後、正式契約という運びになりました」(木下選手)

  • 2023年にトーヨータイヤのグローバルフラッグシップブランド「PROXES」のアンバサダーに就任した木下隆之選手

 今回、木下選手はニュル24hにぶっつけ本番で臨むのではなく、前哨戦となる2023NLSの序盤戦に、ステップとして参戦することを希望しました。

「よく言われるんです。『毎年毎年ニュルを走ってるから、もう目をつぶっても走れるでしょ?』って。でもニュルって、そんな甘いものじゃないんです。日本のサーキットのようにコース全周が均一、フラットに舗装されているわけじゃない。荒れているところはあちこちにあって、補修されていても“継ぎはぎ”に近い状態です。しかも補修のクオリティーそのものも、一般路のアスファルトみたいな状態から、ミュー(摩擦係数)の高いサーキット専用舗装まであって、バラバラです。だからニュルでは、毎年“手探り”から始まるんです」(木下選手)

 ニュル24hは「北コース」と「GPコース」を連結してコースが設定され、1周は約25km。そのなかに200近いコーナーがあります。

「これだけのコーナーがある高速コースなのに、エスケープゾーンが少なく、またクルマがジャンプするような路面のうねりもあるんです。一般のサーキットなら、限界ギリギリを狙って攻めて、万一限界を超えてもコースアウトするだけで済みます。しかしニュルでのオーバースピードは、クルマがそのまますっ飛んで取り返しのつかない大クラッシュにつながりかねません。

  • ニュルブルクリンクはドイツ・ラインラント=プファルツ州にある全長約25kmのサーキット。約5kmのGPコースと約20kmの北コースで構成される
  • ニュルブルクリンク北コースには、170か所を超えるコーナーと標高差300mがある。そのため多くのタイヤメーカーがここで開発テストを行う

 そのため毎年、コーナーごとに『いままでどおりか、それとも変わっているか』を探りながら、徐々にスピードを上げ、限界に近づけていきます。今回、ニュル24hへの参戦にあたってNLSへの出走をお願いしたのは、本番できちんと仕事をするためには、NLSをある意味“トライアル”として走り、どこがどう変わったのか、記憶を上書きするためなんです」(木下選手)

 さらにNLSを走るもうひとつの目的は、クルマとタイヤへの習熟です。

「たとえば250km/hで走っているところでハンドルを切る、ブレーキを踏むといった操作にクルマがどう反応するかは、クルマによっても、またそのクルマが装着するタイヤによっても大きく異なります。コースを覚え、クルマを手足のように操れるようになって、はじめて限界に近づく走りができるんです」(木下選手)

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Gallery 【画像】ニュル24時間耐久に参戦するTOYOTA GR Supra GT4

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